前編
注意。
都合により時間が足りないので、編集等していません。
ネット小説所か、通常の文章基準すら満たしていません。
ハイファンジャンルですが、剣と魔法他派手なシーンや戦闘は全くありません。
ひたすら地味です。
カリカリカリ
今日も自分の足元で、そしてじっくり耳を澄ませれば森の何ヶ所からか同じ音が聞こえる。
その足元の音に彷徨わせていた視線を定めれば、いつもの光景が広がっていた。
銀とも淡い灰ともつかない肩までに切り揃えられた髪と、頑丈だが粗末な土色の衣服。
音の正体は、地面を少しずつ削っているスコップの音だ。
その音が止めば、カケラを差し出す土に汚れた手と、青白い肌と髪よりも濃い色合いの大きめな濃灰の瞳に彩られた顔が見える。
少し屈んでカケラを受け取り、器具で数値を確認してから袋に納める。
頷いてみせると少しよろけながら立ち上がり、辺りを見回してから右の方に歩き出した。
その後ろに付いて歩きながらふと思う。
最近この少女の笑顔も見ておらず、自分も話しかけていないなと。
自分がこの森に来たのは、配属された半年前だ。
この森の他に国内に複数ある場所は、通常の砦と違い特殊な配属先だ。
一般人は存在すら知らないが、国や軍の上層部でも全てを把握しているのは極一部、この森に配属された自分も、他の配属先の様子は知らないし、隠し馬車に乗せられていたから、一人でこの森に辿り着く事も出来ないだろう。
任務に就けられるのは、軍学校を卒業し、上層部の選定した試験と基準を越えた者だけだ。
査定に響くが志願制ではなく、試験も基準も単純な学力や体力をはかる物では無い。
そして任期は最長一年。
そうまでして別格にされても問題なく過ぎているのは、カケラと呼ばれているこの国にとって必要な資源を得る手段だからだ。
自分も実際に配属されるまでどう得ているかは確認出来なかったのに、どれだけ重要なのか、禁を犯せばどうなるのかは嫌でも噂として耳に入ってくるのだから、上層部の政治手腕は確かなのだろう。
カケラは土の民を使って探されていた、というよりも、彼らでなければ探せないのだろう。
奴隷法の改正と街で見掛ける種族の偏りが矛盾している理由には納得出来た。
自分のこの森での任務は、監視と確認、カケラの引き渡しだ。
監視が十全に出来なくなり、カケラを誤って損なう可能性があるので、カケラの採取に手を貸してはならない。
採取したカケラは万が一を考え、器具で数値を確認してから、専用の袋に収納する。
カケラは月に一度、上層部の直属が回収に来る。
毎日決まった連絡先に、映写機で複写したカケラの写しを送る。
それらの写しと回収したカケラに相違が無いかを一日分ずつ確認して全て遮断箱に納めると、仮家の内外も含め、器具を使ってカケラを隠し持っていないかの確認をして回りながら、会話や目視で自分達にも異常が無いかの確認も同時にされる。
まだ五度しか会っていないが、毎回手際の良さと目の鋭さにゾッとする。
直属だから当然かもしれないが、この森の前に配属されていた砦長達に感じていた恐さとは種類が違う。
任務初日、装備一式を持参した自分は、軍の本部で自分の担当になる上層部直属の男と引き合わされた後、男の案内で隠し馬車に乗せられ、この森に辿り着いた。
仮家には、これから自分が監視していく少女と、自分の前任者が居た。
男は、自分と少女を簡潔に紹介してすぐ、前任者と共に立ち去った。
こうして任務が始まった。
読了ありがとうございます。
脳内の少女が無表情の儘なのですが、テスト前に大掃除を始めた様な状況なので、ここで区切ります。