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『ご覧のIMOの提供でお送りしました』 作者 RAIN

URL: http://ncode.syosetu.com/n0204dj/


アンソロジーに向けて一言: 全力で芋企画を楽しみました!またSNSで募集した単語が作中に8つ入っております。


『西暦2XXX年、地球全体に及ぶ未曽有の食糧危機に見舞われた……。

 過去にはサブプライムローン問題や同時多発テロ活動等でも人類は大いに混乱をしたが、今回の問題はそれをはるかに上回る事態であった。

 この事態を重く見た各国政府は、様々な対策を打ち出した。

 

 火星への移住を計画する国や遺伝子組み換えの作物の開発をする国、人類人口削減計画など数多の国が多くの計画を打ち出した。その結果、とある食材の品種改良に成功した。


 その食材の名前は”ジャガイモ”だった…。


 ナス科ナス属の多年草の植物であるジャガイモは、比較的保存もきき、過去の飢饉の際にも食されていた食材である。

 品種改良されたジャガイモは、一般的なジャガイモをはるかに凌ぐ収穫量と圧倒的な生命力を誇り、連作障害も克服する特性を持っており、誰もがその事実に歓喜した。

 ただし、そのジャガイモが意思(・・)()持って(・・・)いる(・・)という事実に気付くまでは……。


 異常事態に気付いたきっかけは、新種のジャガイモと共に育てていた植物が、突如枯れ始めたことからであった。

 新種のジャガイモは、自らの種を残すために周囲の栄養を根こそぎ奪うことで爆発的な収穫量を誇っていたのだ。


 そして人類が混乱に陥る中、新種のジャガイモたちは人知れず新たな進化を続けていたのだった……。


 その進化とは、自ら土地を離れて他の土地に移動する能力だった。新たな能力を得たジャガイモたちは、全世界に勢力を拡大した。

 米や芋以外の食材は駆逐され、食卓に並ぶ野菜は芋しかなく、地上は芋に支配された。

 幸いなことに、ジャガイモたちは自身の種を栄えさせる以外に自身の能力を発揮することは無かったため、人類が再度飢饉に陥る事態は免れた。


 しかし、食糧危機を脱した人類は新たな問題に直面した。


 それは、主食が芋しかない生活習慣についてだった。

 芋を除く地上に存在する小麦・米・大豆などを含めたあらゆる植物が駆逐された世界では、牛乳や各種肉類などを除き、食に対するバリエーションは激減した。


 人類はその事実に絶望した……。


 この事実に絶望した一部の人たちは、密かに新種のジャガイモたちを撲滅せんと動き出した。彼らは新種のジャガイモのことを、人類の食生活を侵略する芋種、通称”IMO”と命名し、各自で”IMO”の根絶に動き出した。


 しかし、彼らの行動が引き金となり”IMO”と人類は直接的に争う事態に突入していくことになるのだった。


 “IMO”は日々進化を重ねており、衝撃や炎熱、薬品等を受けても完全に生命活動を停止することはなく人間に立ち向かって来るのだった。

 現在の“IMO”たちにとって、人間は自分たちの繁殖を阻害する存在であり、自分たちの残骸を食べるか、土に埋まり自分たちの繁殖のための養分になるかの2択を迫るのだった。


 現在確認されている”IMO”を倒す有効な手段は、彼らを料理し食べつくすことしかなかった。”IMO”は、個体での危険度は低く、下ごしらえや熱を通したりすると極めて動きが鈍重になるため、その隙に料理にして食べることが出来た。


 だが、芋を食べることでしか”IMO”を駆逐する手段のない人類は、食に対する飽きが日に日に深刻さを増す事態となるのだった。


 “IMO”を粉々にしてもポテトサラダのようになり、潰したとしても芋餅のようになり、火炎放射器で燃やそうとしてもジャガバターのようになるのだった。一途の希望を掛けて、ジャガイモたちを瞬間凍結させる方法も使われたが、チューニョのようなジャガイモをフリーズドライさせた保存食のようなものになるだけであった。


 そして、多くの人類が”IMO”たちの数の暴力によって敗れ、人類は徐々に追い詰められて行くのだった。最早”IMO”たちを駆逐出来る者は誰もいないと誰もが諦めかけたときだった。

 

 突如1人の少年が”IMO”たちを次々と駆逐し始めたのだ。人類は”IMO”を駆逐する少年のことを”(ポテェト)クラッシャー”と呼んで称えるのだった。

 その後少年の下には、多くの同志たちが集い始め、徐々に人類が”IMO”に対して優勢になり始めるのだった。


 ※途中経過は大人(いもせいぶん)()事情(ないため)省略(カット)されました。


 そして、ついに”IMO”たちと人類の最終対決の幕が開けた。

 人類に前に最後に立ちはだかった”IMO”は、全ての”IMO”たちを束ねる、根源(こんげん)にして最上位の”IMO”たちの皇帝、別名”IMOKO”であった。

 数々の争いや仲間(サツマイモ)の裏切り、(ヒロイン)の突然の死を受け、誰もが疲弊をしていた。しかし、誰もが戦いを止めることは無かった。

 最早、誰もが争いを止める理由を思いつかないほどに疲れ果てていた。血塗られた拳に残る想いは消えることなく、幾度となくその手を動かし続けた。


 そんな、両者の血に塗れた争いを止めるかのように戦場(ちょうりば)に雨が降り注いだのだった。

 その雨は、不思議なことに仄かに酸味を含んでおり、まるで様々な旨味成分を凝縮したドレッシングのようだった。謎の雨を浴びた両者には大きな変化が現れた。


 まず始めに、“IMO”たちはその雨を浴びた直後から動きを止め、その雨に含まれる様々な旨味成分を吸収しだした。すると、ある変化が表れ始めた。


 ある”IMO”は、芋全体を覆うように葉が生えキャベツのようになり、別の”IMO”は芋の皮が丸く赤く熟れたトマトのようになるのだった。こうして”IMO”たちは、次々と別の植物に変化して行くのだった。


 その一方で、人類もその雨を口にしたことで動きを止めた。


 人類は、自分たちが単一的な芋食に飽きたことがきっかけで始めた争いであったことを思い出し、少しでも多くその味を楽しもうと空に向けて口を差し出すのだった。その味を口にした人類たちは、誰しもが目元から雨以外の液体が頬を流れて行くのだった。


 こうして突然の恵みの雨によって、”IMO”たちは数多くの植物に変異し動きを止め、人類は争いを止めるのだった…。

 

 そして……

《本日ご紹介致しました、この新商品の万能ドレッシング!!

 (こんかい)品名(のきかくの)は”IMOフェスティバル”!!

CM(ざつだん)でご紹介した通り、様々な旨味(さっかせんせい)共演(しっぴつ)しており、

皆様(どくしゃ)に素敵な思い出(いもネタ)をお届けいたします!!

ぜひご賞味(おたのしみ)下さいませ!

今なら特別(芋ネタ)販売()価格(普段の)として硬貨(100)一枚(倍楽しめます)でお買い求め頂けます。》


―提供―

芋フェスティバル株式会社

クリオネスチームパンク株式会社


………。

……。


『……以上、読者に芋の美味しさをお届けする”芋フェスティバル株式会社”と、夜の町にネオンの明かりを灯す”クリオネスチームパンク株式会社”の提供でお送りしました』


 約1時間に及ぶ茶番劇(テレビ)CMは見せられた視聴者たちは、皆一様に無表情だった。

 間食にあんぱんを食べていた者は齧り付いたまま沈黙し、家族仲良くテレビを見ていた家庭では親や子供、ペットまでもが微動だにしなかった。


 何故ならば、自分たちが暇つぶしに見ていた番組が緊急特番のように突然中断され謎の内容を延々と見ざるを得なかったからだ。


 その後、今回の謎の電波ジャックを行った者たちは業務妨害罪で逮捕されることになったのだが、実行犯たちは『芋が来る……芋が来る……』と(うわ)(ごと)のように呟いていたという。


 この出来事は、後に『()電波(もで)()来る(がく)』事件と呼ばれ、『史上最も意味不明な事件』として語り継がれることになった。


 そして、謎の芋CMが流れてから数十年後、人類は世界的な食糧危機に襲われることになる。その際に、当時芋CMを見ていた大人たちは皆一様に『芋が来る……芋が来る……』と呟くことになるのだった……。

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