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超幸運スキル持ちだけど、俺は本当に運が良いのだろうか?  作者: ぬぬぬぬぬ
第一章 俺、自身の運の良さを再確認する
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冒険者の日常3 護衛依頼を作成してみた

 アレは確か、俺がこの世界に来て、3ヶ月ほど経ったときの話だ。

 街の外から来た冒険者がケンカをしていたのを、ギルド職員が仲裁した。

 そんな、どこにもありそうな日常の一コマ。の、はずだった……。


 結論から言うと、よそ者の冒険者が死んだ。

 ギルド職員の『ケンカ両成敗パンチ』が強すぎたのである。

 普通、パンチ一発で人が死ぬとか思わんやん?

 俺はこの時、きっと当たり所が悪かったんだろうな。

 と思っていたわけだが、今なら分かる。

 この街の人間が色々とおかしいだけなのだ、と。


 あぁ、一応言っとくけど、この時の事は事件扱いにはならなかった。

 あの日に黒いオーラを漂わせていたおっぱいさんが、きっと答えだ。

 おそらく、コネを全力で使って『よそ者の冒険者の存在』そのものを無くしたんだろうさ。

 恐ろしい人だぜ、本当に。


 俺がおっぱいさんにだけは、絶対に迷惑をかけないと誓った瞬間である。


 ◆


 俺がおっぱいさんとの思いでから帰ってくると、おっさん達に見つめられていた。


「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

『おれは おっぱいさんのことを考えていたと思ったら いつのまにかおっさん達に見つめられていた』

 な… 何を言っているのか わからねーと思うが おれも 何でこうなったのか わからなかった…」

「いや、マジで何を言ってんだよお前は……さっきの話、詳しく聞かせろよ」


 ん?

 えーっと、コイツは確か【何故かどこからか現れる、親切な冒険者さん同盟】に参加してるおっさんだ。

 要するに、俺と一緒に狩りに行くおっさん達の一人だ。

 ちなみに、ドレアスって名前の槍使いだ。

 Bランク冒険者で、俺に槍の使い方を教えてくれたおっさんである。


「さっきの話ってのは賭けの事だよな? ……やるのか?」

「いや、俺はやらねぇけどよ。さっきの内容で良いなら俺の知り合いが受けると思ってな。詳しく聞かせてくれよ」


 なるほど。

【何故かどこからか現れる、親切な冒険者さん同盟】に参加していないおっさんなら受ける可能性はあるもんな。

 元々、そういう人狙いだったけど。


「って言ってもなー。……とりあえず、依頼の準備しておくからその知り合いっての連れて来てくれよ」

「おう。ちょっと待ってろ」


 んあ?

 こんなにいい天気なのに、クエストに行って無いのか?

 こんな時間にまだ街に居るって……いや、今日はたまたま休みなだけだな。


 うん。この、いつでも休日に出来る感じが『冒険者』だよなぁ。

 やっぱり、冒険者って自由だな~。

 俺だって、休もうと思えばいつでも休日に出来るもんな。


 ま、美味い酒を飲むために結局狩りに行くんだろうけどさ。



 さて、俺は依頼を出しますか。

 そう考えて、さっきまで絡まれていた受付嬢に声をかける。


「なぁー、依頼出したいんだけど」

「はぁ? レーナの所に行きなさいよ。話しかけてくんな変態」


 うん。

 相変わらず俺って受付嬢に嫌われ過ぎだろ。


「頼むよ。レーナはさっき奥に引っ込んじまったんだよ。あ、なんならレーナを読んでくるだけでも良いからさ」

「うるさい。変態ネズミ。あんたのせいでクエスト受けないで冒険する冒険者が増えたのよ? ほんっと、迷惑な奴よねあなた。受付に居た時も私たちから客を奪ってたくせに、受付を辞めたら、今度はそもそも冒険者たちがクエストを受けさせないようにするんだから」

「いや、それは俺のせいじゃなくない? もっと受付業務頑張れよ。笑顔笑顔」

「うっさい! とにかく、あんたの対応なんて死んでも御免よ。さっさとどっか行きなさい!」


【悲報】俺氏、嫌われ過ぎていて会話にならない【嫌われ過ぎワロタ】


 まぁ、受付嬢からしたら、俺ってかなり邪魔な存在だろうなぁ。

 実際、ここ数日で【何故かどこからか現れる、親切な冒険者さん同盟】のシステムを構築したせいで、クエストを受ける冒険者は減ったんだろうしな。


 うーん。

 レーナが戻ってくるまで待つか?

 ……いや、これはっ!


 これは、おっぱいさんに会えるチャンス!


 そうとわかれば、ギルマスの部屋に直行だー。

 ヒャッホウ!


「おい、お前の為にやってるんだからついて来いよ」

「はぁ!? なんで俺が――」


 めんどくさ。

 なんでコイツこんなに偉そうなんだ?

 あーあ。ホントにほっとけば良かったかなー。

 でも、コイツ絶対におっぱいさんに迷惑かけるよな……。


「あー、ギレルさん。お願いがあるんですけど」

「お? なんだぁ? 『自由な幸運者』」

「今からギルマスに会ってくるから、そいつ見張っててくれないか? 夜、奢るからさ。あと『自由な幸運者』呼びはヤメロ」


 『自由な幸運者』命名理由。

 ことあるごとに『自由』という言葉を使う男が、あまりに幸運過ぎるのでついたあだ名。

 命名者:レーナ。


 うん。

 ……うん。

 なんで俺にはこんな変な二つ名がつかなきゃならんの?


「おう。わかったぜ『自由な幸運者』おい、黒い髪したボウズ、こっち来い」

「なっ、なんで俺が昼間っから酒飲んでるおっさんに――」

「いいから来いっつってんだろ。俺が奢られる為にな」

「うっわ、酒くっさ、は、放せ。ぶっ殺すぞ!」

「はいはい、出来るもんならな」

「このっ――」


 やれやれ、マジモンの勘違いクズじゃねえか。

 殺すとか簡単に言うなよ。

 この街の住人は結構簡単にキレるんだぞ?

 あとおっさん。なんもわかってないじゃねーか。

『自由な幸運者』とか、親しみを込めて言うんじゃねーよ。

 怒りにくいじゃねーか。


 いや~、にっしてもこれは放置できないわー。

 絶対コイツおっぱいさんに迷惑かけるもんな~。

 さてと、じゃあこのうるさいのを追い出すためにもクエスト発注に行きますかね。

 おっぱいさんの為に、な。



 ヒャッハー!

 3日ぶりのおっぱいだぜっ。


 俺はギルマスの部屋に突撃した。


 ◆


「って事なんですけど。依頼、出せますよね?」

「んー? まぁ、私はそれでも良いけど……この依頼を出すことでキミに何の得があるんだい?」


 おぉう。

 その黒い微笑み……最高だな!

 やっぱり、腹黒なおっぱいさんは最高だぜ。


「ただの自己満足ですよ。損とか得とか、そういうのじゃないです」


 それに、今更金なんて、俺にはそんなに(・・・・)必要じゃないしなぁ。


 え?

 なんでおっぱいさんは俺の事を凝視してんの?

 遂に俺の一途な想いが届いたの?

 ……いや、疑われてるだけか。

 知ってた!


 確かに、俺は基本的に身勝手なクソ野郎だったからな。

 だがなっ! 俺にだって同情の心ぐらいはあるんだぜ?

 俺の同情心は主におっぱいさんの為にしか使われないけどねっ。


 あと、そのジト目最高に可愛いっすね。

 結婚してください。


「……まぁ、良っか。じゃあ依頼内容の確認をしよっか」

「うい」


 おっぱいさんがサラサラと、依頼内容を紙に書き始める。

 相変わらず、字を書くのが早い。

 つか、記憶力凄くない?

 一回話しただけなのによくそんなに覚えてられんね。


「これで、よしっ。依頼内容を確認してくれるかな?」


 護衛依頼

 ◆ランク:ランクC以上

 依頼内容:黒髪の世間知らずを三日間守りぬくこと。

 参加費:1人銀貨1枚

 報酬:銀貨7枚×参加者の数

 備考:一日経過するごとに、依頼主から大銅貨一枚が人数分支給される。

 又、護衛対象の意志を尊重し、護衛をしなくてはならない。

 街に三日間拘束する。等の手段を講じた場合、依頼失敗となる。


 依頼主:シュウ



 ふむふむ。

 …………大丈夫、だよな?

 報酬も少し上げたし、この内容なら特に問題はないよな?

 ……いや、1つ追加するか。


「『夜になったらこの酒場に顔を出させる』という項目も追加してくれませんか? 少し、ほんっとうにすこーしだけ護衛対象とは、お話をしたいので」

「了解。……よし。これで良いのかい?」


 一文が新たに追加された、依頼用紙を見る。


 ……うん。

 問題は無いだろ。


 どうせ三日以内に死ぬような男だしな。


「えぇ。これで問題ないですよ」

「よし、じゃあこっちからも一つ条件を追加しても良いかい?」


 おや?

 何か問題があるのか。


「どんな条件ですか?」


 おっぱいさんは結構腹黒さんだからな。

 変な条件を追加されかねん。

 気をつけねば。


「あぁ、そんな身構えなくても大丈夫だよ。ただ、人数の上限は設けておくべきだと思ってね」

「人数の上限、ですか?」


 うん。

 その笑顔は何か黒いことを言う時の顔だよね。

 おっぱいさんの事は良く観察していたからな。

 俺、知ってる!


「うん、例えばだけどさ。この依頼をこの街の冒険者全員が受けちゃたりしたら、他のクエストがいつまでたっても消費されなくなっちゃうよね? この依頼って、なかなかに身入りが良いから。ねぇ、シュウ君」


 おっぉ。

 名前読びですか。そうですか。


「では、エルさんは何人ぐらいの上限にするべきだと思いますか?」

「そうだねー。少なくとも20人とか、30人の冒険者が一人を護衛するってのはやりすぎだよね? ……多くても一日10人とかじゃないと。だから……2~3パーティーってのを上限にすべきじゃないのかな。シュウ君は賢い子だから、言っている意味、わかるよねぇ?」


 うん。

 これって要するに「シュウ君の作った【何故かどこからか現れる、親切な冒険者さん同盟】って毎日20~30人も連れまわしてて迷惑なんだよ? 一日の上限は10人ぐらいにしようね? 賢いキミなら何の話をしているのか、わかってるよね?」って事ですよね。


 わかりますよ。えぇ。

 なんてったって、おっぱいさんに褒められる、賢いシュウ君だからな!


「じゃあ、2~3パーティーが上限ってことで。……ところで、ソロの人の扱いはこういう場合はどうなるんですか? まぁ、あんまりソロの人っていませんけど」

「あぁ、そうだねぇ。……じゃあ、一応5人以上12人以下って内容にしようか? いやー、シュウ君は本当に賢いなぁ」


 ……うん。

 後半がおもっくそ棒読みだったのは、俺の耳がおかしくなっただけだな。

 いやー、おっぱいさんに褒められてうれしーなー。


「ははっ、エルさんに褒められるとなんだが照れますね」

「そうかい? 相変わらずキミは良く分からないところで照れるんだねぇ」


 フフフ、と上品に笑うエルさん可愛いです。

 目が心なしかジトーッとして見えるのは、普段のエルさんが美人過ぎるせいだ。

 やっぱり、おっぱいさんは最高だぜ!


「さーって、依頼はこの条件で良いんですよね?」

「うん。構わないよ。あ、ここにサイン貰えるかい?」

「うい」サラサラっと言われるがままに俺の名前を書く。

「で、次は仲介料だけど――」

「護衛依頼の仲介料は一律で銀貨3枚、ですよね?」


 言いながら、銀貨3枚を机に置く。

 護衛の依頼を出すだけで銀貨3枚も引っ張るとか高過ぎぃ!

 って思った人、この街の周りは色々とヤバいから仕方ないんだ。

 なんてったて、昨日もドラゴンの襲撃クエストがあったような街だからな!


「うんっ、良く覚えてたね。いやー、シュウ君は本当に賢いねぇ。」

「えぇ、これでも元職員ですから」


 それに、仲介料についてはおっぱいさんが教えてくれた事だからな。

 そりゃ覚えているさ。

 なんせ、おっぱいさんの言葉だからな!


「うんうん。レーナちゃんもこれぐらいまともに仕事できると良いんだけどねー。もうちょっとだけ愛想も良くなると更に良いんだけどねぇ」

「いやいや、レーナはアレで良いですよ。実際、レーナが居なかったら俺はこの街で冒険者を出来ないですし」

「そうかい? ……まぁ、そういって貰えると私としては助かるけどね」


 そうだよ。

 レーナがまともな従業員になっちゃったら、俺の受付をしてくれるカウンターがなくなっちゃうからな。

 ……アレ? もしそうなったら、今度は毎日おっぱいさんが受付してくれるようになるんじゃね?

 今日みたいな感じで「依頼受けたいんですけど、誰も相手にしてくれないんで助けてください」って言って、毎日おっぱいさんに会う為の口実が出来る…だ……と……?


 まぁ、流石におっぱいさんに迷惑をかかるそんな真似はしないけどさ。

 毎日そんな事してたら、流石にウザすぎるだろ俺。


「じゃ、俺はもう行きますね」


 さっさとこの依頼を下に持って行かないといけないしな。

 俺は立ち上がり、部屋の外に向かうべく、スタスタと歩き出す。


「うん。あぁ、そうだシュウ君。1つ聞きたいことがあったんだ」


 ん?

 なんだかデジャブ感あるな。


 …………そうか。

 俺は、この人に言うべきことがあったんだ。


 俺は、きちんと体ごと、振り返る。


「キミの望んだ『自由』は手に入ったのかい?」


 そこには、胸の大きいロングヘーアーの女性が居た。

 相変わらず、青い髪が似合う綺麗な人だ。


「えぇ、俺の望んだ自由は、手に入りましたよ。全部、エルさんのおかげです」


 そう。俺がエルさんにある意味で異常とも言える好意を寄せているのは、この人がいなければ、俺は『自由』を手に入れる前に飢えて死んでいたはずだからだ。

 この人が俺に与えてくれた『素晴らしくも鬱陶しい職場』が無ければ、俺はきっと今日まで生き残ってはいない。

 この世界に来て、俺にとっての一番の幸運は間違いなく、この人に出会えたことだ。


「本当に、今までお世話になりました」


 俺は、いつだったか、はしゃいでいてまともにお礼を言わなかったことを恥じながら、深々と頭を下げた。

 きっちり、3秒数えて、頭を上げる。


「どういたしまして」


 あぁ、この空間が謎の安心感がある理由がやっとわかった。

 きっと、異世界に来た初日に、この人のこの笑顔を見たからだ。


 あの日、不安で不安でどうしようもなかった俺にとって、この笑顔は効きすぎていたんだ。



 はぁ~。本当、未婚だったら絶対求婚してるのになぁ。


 ◆


「おっ、戻ってたんだなレーナ」

「変態ネズミ。護衛の依頼を発注するそうだな?」

「なんだ。もう知ってんのか? じゃぁ、この依頼内容で今から貼りだしてくれないか?」


 そう言って俺は、大幅な依頼内容の修正をした紙をレーナに見せる。

 レーナが依頼内容の確認して、眉をひそめている。

 が、ギルマスの部屋から持って来た依頼だったからか、最終的にはハンコを押しているのを確認して、俺は一足先に掲示板に向かう。


 あれ?

 いつだったかのオークの依頼って、まだ残ってたんだな。

 ……あれから時間経過しまくってるんだけど、大丈夫なのかコレ。


「以前から変態のゴミ屑野郎だと思っていたが、何なのだこの依頼は……」


 若干呆れ気味に青い髪色のレーナがやって来た。

 実に良いジト目だな!

 よし、見せつけてやるぜ!

 うらぁっ!


「ほれ、きちんと仕事をしたらこの黒い布をくれてやるから、そんなジトッとした目で俺を見ないでくれ」


 今の俺に、そのジト目は効き過ぎる。




 その日、奇妙な依頼が冒険者ギルドの掲示板に貼られることになった。

 内容は以下である。


 護衛依頼

 ◆ランク:ランクC以上

 依頼内容:黒髪の世間知らずを最高で三日間、世話、及び護衛して欲しい

 参加費:1人銀貨1枚

 参加可能人数:1~5人

 参加報酬:銀貨7枚×参加者の数

 備考:一日経過するごとに、依頼主から大銅貨1枚が人数分支給される。

 護衛対象に冒険者生活を経験させた場合、追加料金で大銅貨5枚が報酬に上乗せされる。

 護衛対象に魔物の討伐を観戦させた場合、追加料金で大銅貨1枚が報酬に上乗せされる。

 夜に護衛対象を連れ、冒険者ギルドに戻った場合、追加料金で銀貨1枚が報酬に上乗せされる。


 なお、この依頼に関して冒険者ギルドは、一切の責任を負わない。


 依頼主:シュウ

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