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超幸運スキル持ちだけど、俺は本当に運が良いのだろうか?  作者: ぬぬぬぬぬ
第一章 俺、自身の運の良さを再確認する
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冒険者の日常1 ある冒険者の一日とジト目な受付

「今日も来たのだな。死にたがりのヘタレ男よ。いよいよ今日死ぬつもりなのか?」


 そう言ったのは、冒険者ギルドの鑑定職員兼俺の担当受付嬢のレーナ。

 要するに、俺の元同僚だ。

 当然のように俺を罵倒しながら、カウンターに採取クエストを7つ並べてくれる。

 うん。今日も良いジト目だな。

 残念ながら、俺にそういう趣味は無いけど。


「俺はまだ死にたくねぇし死なねぇよ。それと、いい加減ヘタレ扱いはやめてくれよ……自覚はあるんだ」

「ふむ。説得力が皆無だぞ変態ミドリよ。それよりさっさっと依頼を選べ」


 解説しよう。

 変体ミドリとは第二、第三、さらに第四、第五の変身を残した緑色のローブを着込んだ変態。

 つまり、俺の事だ。


 今日の俺は草原に行く予定なので、緑色のローブを着込んでいる。

 俺は行き先によって、ローブの色を必ず変えるようにしている。

 魔物に遭遇した際に逃げ隠れる為に、だ。

 ちなみに、ここ最近の俺のお気に入りの色は、草原用の緑色と暗闇に溶け込む黒色だ。


 戦わないのかよ。お前、冒険者だろ? って思った人。

 俺、メチャ弱いから。

 具体的には、レアモンスター二体に囲まれたら確実に死ねるぐらいに、な。

 三年間訓練を続けたおかげで、一対一ならギリギッリで勝てるようにはなった。

 が、毎回ガチで死にかける死闘になるので、基本的に魔物からは逃げ回っている。

 疲れ切り、動けなくなっている俺のもとに迫り来るモンスター。

 死の恐ろしさを乗り越えた先で、さらに死に怯えるのは、もううんざりだ。

 あの時も当然のように現れた親切な冒険者さんが助けてくれなかったら、俺はもうこの世にいないはずである。


「今日はこれとこれで頼む」


 俺は薬草と、ドリ花(毒直しの一種)の採取クエスト二つを選んだ。

 両方、草原に生えている素材で、難易度Fの採取クエストだ。

 どちらの素材もアイテムボックスに備えがあるので、今日採取することが出来なくてもクエストに失敗するという事は無い。


 難易度の低い採取クエストの失敗を考えている理由?

 俺、運が良すぎるから。

 具体的には、通常のモンスターと、通常個体よりも強いレアモンスターの遭遇率が大体3:7になるぐらい、な。

 三年も経てば、流石に通常個体の魔物とレア個体の魔物の違いがかろうじでわかるようになった。

 が、安全に勝てる通常個体の遭遇率が3割って……ホントウニ、ウンガイイナーオレ。

 ま、そんな訳なんで、悠長に採取を続けてたら俺はあっさりと死んでしまう恐れがあるわけだ。

 でも、既に依頼を達成出来ている状態だったら安心して逃走出来るだろ?

 つまりはそういうことだ。


「ところでゲロ吐き男よ、誰かに護衛は頼んだのか?」


 クエスト用紙に受注サインを書き込みながら問いかけるレーナ。

 相変わらずこの仕事『だけ』は、きちんとしてくれているようで少し安心。


「いんや。もう護衛は必要ないんだ。じゃぁな、俺はもう行く」

「そうか。パーティを組む相手がいないのだな? ……同情するぞ変態」


 そう。

 今日から俺はソロで活動するんだ。

 今までのように護衛はいらない。

 まぁ、採取クエストで一々護衛を頼んでいた今までがおかしいんだが。


 ともかく、護衛の目なんて気にせずに好き勝手したい。

 俺は、自由を望む冒険者なんだから。


 ちなみに、ゲロ吐き男とは、約一年にわたってことあるごとにゲロを吐いていた俺のカッコイイ二つ名である。

 本来、Bランクに上がってからでないと、ギルドから設定されることない二つ名を既に持っている俺。

 やっぱり、俺って幸運だぜ!


 この超カッコイイ二つ名を付けてくれた、元同僚達には感謝しないとな。

 更に、俺には『変態ミドリ』のように第二、第三の二つ名まであるんだ!

 多すぎる二つ名のせいで、俺のギルドカードはなんだかすごいことになってるんだぜ!

 それこそ、初対面の人がドン引きして、俺とパーティを組みたくなくなるような二つ名がなぁ!!

 やったぜ、俺は自由なんだ! ……ちくしょう!!


 ◆


 上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、薬草、上薬草、上薬草、雑草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、毒草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、上薬草、薬草、上薬草、上薬草、上薬草…………。


 ワー、ホントウニ、オレッテコウウンダナー。


 薬草がすくねぇ。何で上薬草ばっか見つかるんだよ。

 いつも通りおかしいだろこれ。


 ドリ花は採取出来たからまぁ良いけど。


 何なんだろうね?

 このやり場のない怒り? は。

 確かに、普通よりは良い素材が手に入ってる俺は幸運なのだろうが、これじゃあ薬草が集まらねぇじゃねーか。

 上薬草は俺が納品しまくったせいで、今は需要がねえしなぁ。


 ん? 遠くに見えるあれは――。


「うへぇ、レア個体の魔物だなありゃ。……逃げますか」


 この三年で無駄に高くなった逃亡技術を見せてやるぜっ!!


 シュウは街から遠ざかるように逃げ出した。 レア個体はまだこちらに気が付いていない。 …………!!

 どこからともなく冒険者たちが現れた! 冒険者たちがレア個体に近づく。 レア個体が――。 おっさんAの武器攻撃。 凄まじい衝撃が魔物とシュウに襲い掛かる! シュウに200ぐらいのダメージ。 「ふっ、余波じゃなければ即死だったぜ」 シュウは強がりを発動した。 ヒザはガクガク震えている。 魔物に9999のダメージ。 レア個体はあっさりと倒された。 冒険者たちは周囲を警戒している。 どうやら周囲に魔物はいないようだ。 シュウと何故かよく見かける親切な冒険者たちは魔物に勝利した! 金貨二枚分の素材をおっさんAは手に入れた。 シュウはおっさんAのパーティから銀貨二枚を報酬として手に入れた!


 やったぜ、今日一日で銀貨二枚をゲットだ! ……チックショウ!!



 これが、冒険者になった俺の日常である。

 絶対、モンスターに負けたりしない。俺、強くなるんだ。

 とか考えていた、この世界に来たばかりの俺に言ってやりたい。

 結局、三年経ってもモンスターには勝てなかったよ……。


 ま、日本に居た時よりも何倍も楽しいから良いんだけどね。

 今日も、楽しい冒険者生活じゃった……。

 さて、今日も楽しい飲み会が始まりますね。これは。

 俺は、凄く良い笑顔のおっさん冒険者たちと、今日の狩りを終えた。



 俺が『自由な冒険者』になってから今日で10日程、時間が経っている。


 ◆


「なんか騒がしくねぇか?」


 冒険者ギルドに戻って来たが、なんだか騒がしい。

 飲んだくれの冒険者にとってはいつもの事だ。と、言える時間帯にはまだ早いはずだ。

 だって、まだ朝の10時を過ぎてもいない。

 それなのに、冒険者ギルドの一角では人垣が出来ている。


 ギルド職員なら何か知っているだろうと思い、採取した薬草と、ドリ花をカウンターに置きつつ、レーナに尋ねる。


「お前ほどでもないぞ変態……クエスト達成だな。報酬だぞ変態ネズミ」


 解説しよう。

 変体ネズミとは!

 俺の普段着が全体的に灰色っぽいことから名付けられた、俺のカッコイイ二つ名の1つである!

 俺に沢山の二つ名を授けてくれるレーナには好意すら感じるぜ!


 ちなみに、この街の住人の普段着は大体みんな灰色である。

 どう考えてもただの言いがかりである。


 別にネズミ呼ばわりされたのが嫌な訳ではないが、黒ローブを取り出し、装備する。


「え? 俺ってそんなに騒がしいか?どちらかというと声は小さい方だろ?」


 今回のクエスト報酬である、銅貨5枚を受け取りつつ、聞き返す。

 日本に居た時は「声が小さいんじゃい! クソガキ!」と、上司に怒られたことがあるぐらい俺の声は小さいはずなんだが。

 まぁ、アレは入社したての頃だったので、今では多少改善されているのだが。

 今でも意識していないと、声が小さくなってしまう。


「お前は存在が既に騒がしいんだ。自覚がないのか? 変態ガラス」


 解説しよう!

 変態ガラスとは!

 もう説明はいらないな? 要するに俺の事である!

 どないせぇっちゅうねん?


 ちなみに、変態ガラスは「え? どうして変態カラスじゃなくて、変態『ガ』ラスなのかだと? お前みたいな変態と同一視したらカラスがかわいそうじゃないか。だから、カラスに対する私のささやかな優しさだ」という、カラス好きのレーナさんが、「黒ローブ……黒だからカラス? ……でも、それだと……」と、なんだか悩んだ結果名づけられた、ちょっと他とは違った二つ名である。


 主に、命名までの所要時間が10秒ほど違うよ!

 いつもなら息を吸うように二つ名が追加されるからな!!


 だが、それだけではない。

 追加効果として、少しだけレーナさんの態度が柔らかくなるぞ!

 やったぜ!


 黒い装備を着ていると、レーナは機嫌が良くなる。

 その証拠に、いつものように「用は済んだか? 早く私の前から消えろ変態」と、ジト目をされないですんでいる。

 こころなしか、目がキラキラしているような気もするが、普段のジト目が酷すぎるだけだ。

 やっぱり、レーナと話すときは黒ローブは必須装備だな。


「で、騒ぎの原因は結局なんだ? 教えてくれたら、この黒ローブをくれてやっても良いぞ?」


 この世界で「黒色の服」というのは、一言で言ってレア、だ。

 何故かと聞かれれば「この世界での染色技術では、綺麗な黒色に染めるのはとても難しいから」らしい。

 良く分からんが、そういう事になっている。

 まぁ、黒色の魔物素材を使えば作れなくは無いんだが、高いんだよぁアレ。


 ちなみに、俺が持っている黒ローブは、アイテムボックス大先輩が染色してくれたものである。


 俺のアイテムボックスのここが凄い! その2

 何故かアイテムを染色できるよ! どうやっているのかは不明!


 まぁ、そんなわけで、黒ローブを譲渡するという俺の発言にすっかり機嫌を良くしたレーナが説明してくれた。


「なんだかいかにも馬鹿そうな男が冒険者たちに絡まれているだけだ。確か『ぼ、ぼぼ、冒、け険者ァッ登録をしたいんですがぁ……』とかなりの小さな声で、カウンターに来た後、ヒマしてる冒険者に絡まれたんだ。さ、話したぞ。さっさとそのローブを脱いで帰れ。シュウ」


 うん。

 こういう時は名前呼びしてくれるんだよなぁ。

 あと、急に表情豊かにしゃべり出すな。

 こえーよ。


「ちょっ、待てって! 引っ、張んな……よ…………まぁ、うん。じゃあな」


 俺から黒ローブを脱がせ、奪い取ったレーナが受付を離れていく。

 うーん? 何でそんなに黒色がすきなのかねぇ。

 これで確か、8着目だろあの黒ローブ。

 ま、予備のローブはアホほど買い込んであるから良いんだけどね。

 でも、急に人の服を脱がせていくのは良くないと思います!

 あと、急に振り返って笑顔で俺に手を振ってくるのも良くないと思います!


 まったく、良く分からん女だ。



 さて、人垣の中心に向かいますか。


 別に野次馬根性を丸出しで行くわけではない。

 この冒険者ギルドは、おっぱいさんの職場だ。

 騒がしいのは、書類仕事を頑張っているおっぱいさんにとって迷惑なはず。

 ついでに、いがみあっていたとはいえ、元同僚が仲裁に入るような面倒は止めねばならん。

 なぜなら、おっぱいさんの仕事が増えてしまうからな。

 つまり、これはおっぱいさんの為なのだ!


 ……まぁ、ぶっちゃけヒマだから見に行きたいだけなのだけど。


 人垣をどうにか越え、中心にいた人物を鑑定してみると――。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 リート 男 17 


 スキル:剣スキル9

 固有:異世界人セット

 称号:勘違いクズ セクハラ男 身の程知らず 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 そこに居たのは異世界人の男だった。

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