ここまでのエピローグ的な何か
「おはよう」
目が覚めたのでジト目で俺を見てくるレーナに挨拶しとく。おはよう。
手に持ってるのは……ギルドにある魔物の資料かな?
寝て起きたら知らない部屋(多分治療院)に女の子と二人っきり。
うん、いい感じの雰囲気だと思うだろ?
俺もなぁ、こんな状況じゃなかったらそう思えたんだろうな。
「もう昼なのだが? 更に言うならお前が寝直してから三日経過しているのだが? あぁ、ここに担ぎこまれてからは今日で10日目だぞ」
「詳しい状況説明をどーも。で、なんで俺はベットに縛られてんの?」
どうして俺はベットに縛り付けられているんですかねぇ。
レーナさんはヤンデレさんだったのかい?
いやいや、ここは治療院だし治療の一環という可能性もある。
というかそうであって欲しい。
「寝ているというのにエビのように暴れ回るから治療院の連中に縛り付けられていただけだ。そのせいで何度も傷が開いて治療が進まなかったのでな」
ほら、ただの治療の一環だった。
「というのは嘘で、三日前に私が縛り付けてやったのだ」
おぉう。
「なんで縛ったんよ?」
「腹がったったのでな」
「子供かよ」
「既に成人しているが? それに一応お前よりは一つ年上だ。敬え」
「俺の体を縛ってる包帯? をほどいてくれたら敬ってやっても良いぞ」
「無理だな」
「なら俺も無理だわ」
「そうか」
「……もう少し寝るわ」
「その前に聞かせろ」
「何を?」
「お前を瀕死に追いやったのはオークで間違いないか?」
「そうだな。なんかメチャクチャに強いオークだった。知ってる? オークに小石を投げられると人は吹っ飛ぶんだぜ。あ、あとアレな。オークの怪力は木なんて簡単に殴り倒すんだぜ、マジパネェ」
「ふむ。……先日、森の奥地にオークの巣を見つけたと報告があった」
「へー、そっか。それでどうなったん?」
「その日の内に冒険者達に潰されたぞ。良かったな、もうオークの影にビクビクしなくて済むぞ」
「んー。そっか」
「なんだその反応は? もう少し喜んだらどうだ」
「喜んでる喜んでる。じゃ、寝るわ」
「……次はどうしてやろうか」
「出来れば痛くないので頼む。今更ながら左腕がメッチャ痛い」
「善処しよう」
「お休み」
「あぁ」
◆
寝て起きたら左腕が巨大化、もとい包帯でグルグル巻きにされていた。
「なんて性格の悪い」
「そんな風に褒められても困る。他に痛むところはないのか? 包帯を巻いてやろう」
「しいて言うなら心が痛いわ」
「流石に心臓に包帯を巻いたら死ぬぞ」
「そこは許す方向で考えてくれ」
「流石に冗談だ」
「そうじゃなかったら困る。で、この前に寝てから何日経った?」
「2日だな。もうすぐ昼休みも終わるのでな、私はこれから受付の仕事だ。傍に私が居ないからといって泣くなよ」
「子供かよ」
「違うのか?」
「え? マジか俺って子供だったのか」
「少なくとも大人だったら一人で森通いなんて馬鹿な真似はしまい。その後の始末を他人に任せてグースカ寝ていた男を子供と言わずなんという」
「うーん、一応自分で始末はつけてるんだがなぁ」
「オークの死体を目の前に持って来てから言って欲しいものだな」
「退院したら真っ先にお前に見せてやる。あとどんくらいで俺は退院出来るんだ?」
「ふっ、さあな。自分で治療院の人間に聞きだせ。子供ではないというならそれぐらいは出来るだろう? では私は行くぞ。お前と違って忙しいのでな」
「そっか、行ってら~」
パタン。そこは行ってきます言えや。
うぅん。本当に自分でオークは仕留めてるんだけどなぁ。
あの感じだと絶対に信じてないわ。軽く鼻で笑われてたし。
でもあれか、オークの死体なんて今見せたらアイテムボックス先輩の存在が露呈してしまうのか。
死体が転がってなかったせいで、関係ないオークの巣が潰されたらしいのは――、まぁ街が安全になったってことで良しとしよう。
毒を使いまくったから、死体を放置するわけにもいかなかった。
あと、あんなん森の中に残してたら、適当な冒険者にオークの死体をハイエナされちまう。
寝て起きたらすぐに死体を見せびらかして処分するつもりだったのに、最初に起きたのが7日目だよな? 寝過ごすってレベルじゃないし、その時点で死体を見せるのはもうアウトだったぽい。
オーク殺してから今日までに12日も経ってるらしいし、このタイミングで死にたてホヤホヤ? の死体とか出すのは絶対にマズいわ。
それに、これ以上他人に妬まれるのは勘弁して欲しいなぁ。
ただでさえ運が良いってことを一部の冒険者達に疎まれてるのに、レアスキルのアイテムボックス持ちだったとか、呪い殺されたりしないだろうな。
シノの一件? あぁ、アレはギルマスの為だから別に良いんだよ。
それに個人経営の薬屋でもポーションなんて買えるからな。
薬剤ギルドなんか怖くねぇよ。
ただ、今回はスキル性能の方が問題だからなぁ。
俺のアイテムボックス先輩は優秀過ぎるから、出来れば誰にもバレたくないわ。
そんなことになったらシノとかいうちみっこをイジメたことを含めて、マジで薬剤ギルドの連中に何されるか分かったもんじゃねぇ。
おい、ちょっと薬草摘んで来いよ、と依頼という形で毎日のように命令される未来が見えるぞ。
商人の連中にこのことをバラされたくなかったらわかってんだろうな? みたいな脅し付きでな。
やっぱ薬剤ギルド怖ぇや。
商人にバレたどうなるのかだって? 間違いなく、冒険者だってのを理由に護衛と言う名の実質運搬要因として酷使される。
俺のアイテムボックスは時間経過なしだって事がオークの状態でバレるからな。
そんなスキルを持った奴がいると知られたら、保存のきかない肉とか魚の運搬を死ぬまでやらされる未来しかない。
いや、そういう未来もありかもしれないけどさ。
一応俺の人生での目標は冒険者しつつ、自由な暮らしをするってことだから。
あと、最近追加されたのだと神様を楽しませるってのもあるな。
あ、冒険者ギルドの職員達にバレるのもマズイじゃんか。
受付嬢の誰かに知られたら、嫌がらせの一環として言いふらされる気しかしない。
あれ、よく考えなくても俺って嫌われ過ぎじゃないか?
結論。オークの死体なんて誰にも見せられねぇ。
ちなみに、俺が他の冒険者達とパーティーを結成しないのは概ねこのスキルの存在を隠す為である。
普段は他の冒険者とはそこそこの距離を離して行動してるから、アイテムボックスもガンガン使ってるけどな。
昼飯にドラゴン串を食えないくらいなら、アイテムボックス先輩とボッチ飯の方を俺は選ぶ。
まぁ、要するに他人にこの力を利用されまくる未来とボッチ飯を天秤にかけた時、ボッチ飯の圧勝だったという話だ。
どう考えてもボッチ飯の方がメリットが多い。
幸い、俺の幸運目当てでハイエナ行為をしてくれる冒険者がたくさんいたから、狩場の安全って意味でも無理してパーティを組む必要性がないってのも理由の1つだ。
他にもパーティを結成していない理由という名の言い訳はいくつかある。
が、結論から言えば、やっぱり俺の心が狭いのだろう。
パーティを組む相手がこの力を他人には絶対に話さない。
そういう保証がなければ他人を信用できないような俺の心の狭さが改善されない限り、きっと俺はこれから先も1人なのだろう。
今回の失態は、色々と理由はあるもののやはり俺がソロで活動しているということに問題があった。
仮に誰かとパーティを組んでいた場合、キノコ狩りから帰って来た段階でその日の狩りは終了していた可能性は非情に高い。
そもそも、ソロの活動は全てにおいて自由だ。
自由を望んでいた俺にとってはこの上なく良い状態である。
でも、だからこそ俺は引き際を誤った。
というか、俺が仮に誰か他の冒険者と組んでいたとするのなら夜の森で狩りをする、という前提から成立していなかったのだろう。
夜の狩りを始めた理由だって、色々と理由付けは出来るものの結局は俺の身勝手な理由だ。
それに、普段ウルフしか出ない森だと言っても、やはり昼間の狩りと比べれば安全性は遥かに落ちる。
今回のようなイレギュラーだって、昼間なら他の冒険者に任せることも出来たのだ。
はぁ、夜の狩りはもうやらない方が良いな。
少なくとも、冒険者のランクがC以上になるまではおとなしくしとこう。
……いや、流石にこの辺りが潮時なのかもしれない。
いい加減、自由、自由と喚いていても実力が伴っていなければ今回のような理由で死にかねん。
死んでしまうくらいなら、いい加減決断をするべきなのだろう。
自由を望んで死ぬという末路と自由を捨てて仲間を得る道。
そもそも冒険者を止めて別の職に就くのか、冒険者を続けるのか。
場合によっては、俺のアイテムボックス先輩の力を見せるのも良いだろう。
いずれにしても、このままではダメな気がする。
まぁ、とりあえずどれぐらいで退院出来るのかを治療院の人間に聞きに行こう。
退院をするまでのヒマな時間で結論を出すとしよう。
ベットから起き上がろうとした所で、凄まじい激痛が左腕に走る。
あまりの痛みに、立ち上がることを断念し、ベットの上で身を起こすだけにとどまる。
……おとなしくしてれば痛くはないな。
うーん、このまましばらくは入院生活を――。
あれ、おかしいぞ?
ポーション飲んで、治療院にぶち込まれてるってのに痛い?
異世界なんだぞ、それなのにまだケガが治っていない? 魔法が効いてないのか。
右手を動かし、背中に触れる。
「こっちは治ってる。左腕は骨折だから治るのに時間がかかるってだけか?」
「それは違う。それ以上君の左腕が治ることはないよ」
声が聞こえた方向である前方を見ると、白衣を着た若い白髪の男が気だるげな顔で俺を見ていた。
やせ細り、その青白い顔は今の俺なんかよりもずっと治療が必要な様子である。
多分治療院の人だな。
急に声をかけられたのと、その容姿も相まってちょっとビックリ。
一瞬死神か何かかとおもったぞ。
ところでどこから来た? いつからそこに居た?
扉が開いた音とかしなかったぞ。
耳は良いし、視線を感じとれる程度には斥候能力あるはずなんだけど。
それに扉は正面にあるんだぞ。
これで気が付けないって普通の人だとしてもヤバくないか。
寝起きだから気がつかなかっただけかな。
そんなに気にすることでもないか。
……やっぱり気になるから聞いとこ。
「えと、いつからそこに居ました?」
「さっきそこのドアを開けて入って来たばかりさ。あぁ、私が入室したことを患者に気が付かれないのはいつものことだ。気にしなくて良い。悲鳴を上げないだけ君はマシなほうだよ」
影が薄い人ってことなんだろうか。
いやいやいや、死角ってわけでもないのに気が付かれないって影が薄いってレベルじゃねーぞ。
オークにボロクソにされた身としては羨ましい限りである。
どうにかして影の薄い人間ってのにもなれたりするんだろうか。
「私の名前はヨシダ。この治療院では院長をしている。といっても、私が個人で経営している小さな治療院だかね」
「あ、冒険者をやってるシュウです。ども」
ヨシダって思いっ切り吉田ってことじゃないか?
少なくとも異世界っぽい名前じゃない。
元日本人とかじゃないだろうな。
「ちなみに君と同じ元日本人だ。まぁ、だからと言って特別扱いはしないがね。金はきっちり払ってもらう」
マジか。
クソガキに遭遇したばっかなのにまーた日本人か。
ってか何で俺が日本人だってバレたんだ?
名前が原因じゃないよな。
シュウって名前はそんなに日本人感ないだろ。
ちなみに、秀介って名前だったから縮めてシュウな。
小さい頃からそう呼ばれてたから、それをそのまま使った。
ところで、何故日本人だとバレた。
ひとまずとぼけとこ。
「えと、なんのことですか?」
「とぼけても無駄だ。私の眼には見えてる」
えーと? 厨二病患者の方かな?
医者にいった方が良いぞ。あ、目の前に医者はいたわ。
医者ですらかかるとか厨二病こわ過ぎるだろ。
という、くだらないボケをかますのはもうやめてっと。
なんかそういう特殊なスキルをお持ちの方ですか?
俺もじゃあ人物鑑定スキルで――。
おい、何も見えないんだが?
こんなことは今まで一度もなかったぞ。
もしかしなくとも、この人『人物』じゃなかったりするの?
魔物、反応なし。 植物これも反応なし。
まいったな、見えねぇや。
どういうこった。
あ、わかった。
「ヨシダさんは神様的な何かだったりします? (死神も神様って分類で良いんだよな?)」
「神? 今までに金の亡者だとか、死神かと思っただとか、失礼なことをいう患者はいたが、私にそんなふざけたことを言った患者は君が初めてだ」
「あっ、はい。なんかすいません」
実は俺も最初会った時、死神か何かだと思ってたわ。言わなかっただけでな。
あと、どうやら彼は神様の事がよっぽど嫌いらしいね。
だいぶ怒ってらっしゃる。
推測だが、だいぶ今までの人生で苦労をしたんだろうな。
それなのに神様は一向に助けてくれなかった的な。
だから今は神などを頼らず、金の力に頼ってるって感じかな。金の亡者らしいし。
それが日本に居た時の事なのか、この世界に来てからの事なのかまでは知らないが。
あ、死に方がよっぽど酷かったもんだから、神様を恨んでるとかってのもあるな。
っと、あんまり余計な詮索はしない方が良いか。
「そろそろ左腕の話をしても良いかね?」
「はい、お願いします」
「まず、結論から言うが腕自体は完治している。その状態からさらに治せと言われても私には無理だ。だから君の左腕がこれ以上治るなんてことはありえない」
「……えーっと? 普通に左腕メチャクチャ痛いんですけど、これで治ってるんですか?」
今でも、動かすとズキズキするんだが?
「治っている。粉砕骨折していた骨も魔法で繋げ直した、切断されていた神経系も魔法で繋げた。皮膚も跡が残らないように再生させた。これ以上のことは私には無理だし、どんなに優秀な医術師でも不可能だ。治っているものを治せと言われてもどうしようもない」
これで治ってるとか嘘だろ。
これから一生この痛みと共に生きていけとかヤメテな。
まぁ、動かさなければそれ程痛くないってのが唯一の救いか。
「じゃあ、なんでまだ左腕に痛みを感じるんですか?」
「さぁ? 気のせいではないのかい。私は完璧な治療をしたはずだ」
んー、幻肢痛ってやつかな。
腕とか足とかを事故で切断した人が、無い腕(足)が痛いっていうやつね。
「ない腕(足)が痛い訳ないだろ、いい加減にしろ!」と言ってはいけない。
そういう病気? も世の中にはあるのだ。 なんかで聞いた。
いや、俺の腕は治ってるみたいだし、別の何かではあるんだろうけどね。
「治療済みの腕が痛い訳ないだろ、いい加減にしろ!」と今の俺に言う奴が居たら、きっとキレる。
他人に理不尽な八つ当たりをしたいと思えるぐらいには痛いんだから。
……最近八つ当たりしたいと思うことが多すぎるな。
「どうすれば良いと思います? 痛み止めの薬とかありませんか?」
「一応痛み止めは出そう。薬止めが効かないようなら、王都に居る私の師を尋ねると良い。あの人でも治せないとなったらいよいよ諦めてもらうしかないがね」
師? 師匠ってことか。
うーん、王都かぁ。
今回の一件で思ったんだけど、良い質の装備が欲しいな。
もしかしたらだけど、俺のへっぽこ技量でも良い剣を使えれば楽にオークを倒せたりしたかもしれない。
と、あの日の帰り道で考えたりもしていたのだ。
そんな訳で王都に行くというのも悪くない。
単純に観光目的で一度くらいは行ってみたかったしな。
「どうする? 紹介状を書いた方が良いかね? ちなみに紹介状は金貨3枚で書こう」
おい、流石にぼったくり過ぎないか?
それって、一般的な冒険者の年収に相当するんだが?
うーん、高い。でもなぁ。
少し冷静になって考えてみようか。
あんな見るに耐えないぐっしゃぐちゃになっていた左腕が、腕の形としてきちんと治してくれた人の師匠だろ?
それに、これから先の人生でこの左腕の痛みを消す為に払う金。
これから先何年生きるかはわからないが、仮に痛み止めが効かなかったら?
痛み止めが効いたとして、それを死ぬまで飲み続けるのにはいくら金がかかる?
薬の材料が急に無くなったりしたら?
そう考えたら、ここで払うのを躊躇すること自体が間違いじゃないか?
低い可能性なのだとしても、治せる可能性が少しでもあるのだというのなら、このチャンスを逃してはいけない気がする。
今はギルマスに払った罰金と、自己満足の為にギルマスに渡した白金貨6枚のせいで金はない。
だが、月草種を大量に採取出来たんだ。
これを売り払えば大金になる。
そっと、アイテムボックス先輩に伺ってみれば、38本も収納されているらしい。
月草種を2本使って作れる解毒薬の価格が最低でも金貨4枚。
最低価格で計算して、19×4だとしても金貨72枚。
残りの所持金と足せば、白金貨7枚と金貨4枚と少し。
……余裕で払えるな。
「えぇ、お願いします。あ、それといつ退院出来るか聞いても良いですか?」
「うむ。即決とは良い判断だ。きちんと用意しよう。それと退院に関しては先程も言ったがね。君のケガは治ってるんだ。家に帰りたいというのなら今すぐに出て行ってもらって構わない。治療費は紹介状と痛み止めの分も合わせて白金貨1枚と金貨3枚だ。10年以内なら、どれだけ遅れても構わないが、銅貨1枚たりともまけるつもりはないことだけは覚悟してもらう。これが契約書だサインしてくれ」
治療費たっか!?
えと、12日入院と痛み止めの薬で白金貨一枚?
マジか、受付嬢の一年と三ヶ月分の給料をを寄越せって言ってんの?
おぉう。
なんつーぼったくり価格。
いや、それだけ俺の怪我が酷かったって事なのかも。
腹、というか背中とか結構痛かったはずのに、今は左腕以外は痛いところないもんな。
あと痛み止めの薬がクソ高い可能性もあるか。
どっちにしろたっけえよ。
贅沢をしなければ、余裕で5年くらいは暮らせる額面だぞ。
アレか。
法の整備が行き届いてない異世界だとこういう事も起こり得るのか。
こんなふざけた値段設定でも良いとか、流石異世界。
しかしなるほど、金の亡者と患者に言われてるだけのことはある。
これは高い、高いがここはおとなしく払おう。
ここでゴネた結果、へそを曲げられて紹介状書いて貰えないとかなったら困る。
金とこの左腕の痛みをを天秤にかけたら金なんていくらでも払うわ。
死んだら金なんて文字通り一銭の価値にもならんからな。
生きてる限りつづく左腕の痛みとか、金を積んで治せるもんなら払うに決まってる。
その可能性ってだけでも十分だ。
「……これで良いんですかね?」
一応契約内容を熟読するが特に問題もないようだったので、素直にサインしておく。
「良いだろう。もう一度言うが期限は10年。それまでの間に必ず支払ってくれ。では少し待っていてくれ。今紹介状を書いてこよう」
◆
その後、紹介状と痛み止め3日分を貰い、普段利用している宿に戻って来た。
が、俺の普段使っている部屋は既に埋まっていた。
店主のおばちゃん曰く、半月近く帰ってこなかったから死んだものだと思っていたそうだ。
その後、生きていてよかったとかなんとか言われたが、そんなことを言うなら俺に今晩の宿をくれ。
と、思いながら俺は別の宿を探し歩いた。
どうにか夕方前には今晩の宿を決めた俺は、今更ながら腹が減っていることに気が付き食事をすることにした。
アイテムボックス先輩から食事を取り出し、ドラゴン串やパンなどをバクバクと食べる。
約20分ほど食べ続け、ようやく落ち着いた頃、思い出す。
「あ、こういう時って胃がビックリするから、あんまりこういうの食ったらダメなんじゃなかったけ?」
どこで聞いたか忘れたが、こういう時に食いすぎると死ぬって聞いたことある。
「これで死んだら洒落にならん」
が、既に後の祭り状態である。
どうしたもんか。
「困った時は時間が解決してくれるだろ」
俺は処方された痛み止めを飲んで寝た。
ちなみに、痛み止めは何種類かあるものを三日ずつ試してみて一番効き目が良かったものをもらうことになっている。
この痛み止めは効いてくれるのだろうか。
その日の夜、俺は下痢した。
どうやら空腹状態で腹いっぱいに食っても死にはしなかったらしい。
が、この状況を見ているだろう神様が腹を抱えて笑っているのだろうと思うと、死ぬほど恥ずかしかった。
「ぐぁああああ。マジで腹いてぇええええ。痛み止めとか全然効いてねぇじゃねえかあのぼったくりやろおおおぉぉぅ」
オークの時と同じくらいの激闘を、俺はその夜経験することになった。
オークの時と同様に、神様に見られているかも、と思った時からは頭も痛くなってきた。
こんな状態なのに一向に効き目がないとか、この薬はダメだな。
明日からは別の痛み止めを試させてもらうことにしよう。
終わりです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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