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超幸運スキル持ちだけど、俺は本当に運が良いのだろうか?  作者: ぬぬぬぬぬ
第一章 俺、自身の運の良さを再確認する
2/22

受付生活2 受付の仕事と現状の把握

「あの……」


 俺はスーパーエリート社畜人。

 今日も元気に社畜ライフです!

 今回のお客様はあからさまな新人冒険者の女性。

 いえ、女の子ですね。小さくてなかなか可愛らしいです。

 え? 俺はロリコンではアリマセンヨ?


 初対面なので、早速鑑定スキルを使用します。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 エリー 女 14 魔法使い(見習い) 


 スキル:無し

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 どうやら、どこかの村からここまで来たみたいです。

 あまりこの辺りでは見ないファッションをしています。

 きっと両親が持たせてくれただろう、ショートソードを腰にぶら下げてるのが可愛さを+しています。

 しかーし! この子は魔法使いになれる可能性を秘めている。

 彼女がこのまま自分の才能に気が付かずに剣士になる? 否! 断じて否である!

 何故なら、俺が気が付いたのだ。

 最近『人物鑑定』と『スキル鑑定』のスキルを身に着けた、俺が!

 ……なんだろう、この謎のテンション。

 俺、疲れてんのかな?

 仕事中に急に謎テンションになることってあるよね。

 え? ない?

 じゃあ、徹夜明けのテンションだと思ってくれ。


「あの~、冒険者、とう、ろ……く…」


 あん?

 声が小さいんだよ小娘。

 そんな控えめな性格だと冒険者なんか出来ないぞ。

 適当に町娘でもしとけ。

 無視することにした。

 さぼりたいからじゃない。

 小娘の将来の為に、だ。

 断じてさぼりたいからじゃない。


「あのー」

「おい、おっさん! 聞いてんのかよ」


 お? なんか生意気なガキが来たな。

 小娘に恰好が似ているな。

 む? 顔も同じじゃないか。双子か?

 どれどれ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ミリー 女 14 剣士 


 スキル:剣スキル1

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ほう。

 その歳でスキル持ちか。

 なかなかに有能だな。

 そして女の子じゃったか。

 すまんな。


「どした?」


 俺はまるで、今初めて気が付きました。といった態度で接することにした。

 決して、おっさん呼ばわりされたことを怒っている訳ではない。

 というか、確か俺の体って今は20代の体になってるはずだろ?

 おっさんじゃねーだろーが。

 え? 子供から見たら年上の男は全員おっさんだって?

 ……俺も小さいときはそんな感じだった気がするから言い返せんな。


「どうしたじゃねーよ。さっきからジロジロ見やがって、それより冒険者登録!」


 まだ鑑定スキルで人を見る事になれてないせいで、ジロジロと見てしまったらしい。

 すまんな。


「冒険者登録?」


 俺は聞き返す。

 言っている事はわかる。

 「冒険者登録に来ました!」ってことやろ?

 新品の冒険者装備だからな。それぐらいはわかる。

 でもな、その年齢を知ってしまったからには無視できないんだわ。

 冒険者登録は15歳を超えた人しか出来ないからな。

 他の受付だったらバレなかったかもしれんが……。

 ま、鑑定スキルが使える俺の所にきたお前たちが悪い。


「あぁ? だ、か、ら! 冒・険・者・登・録!」

「冒険者登録がどうかしましたか?」


 言いながら、俺は上司呼び出しボタンを連打する。


「コイツッ~~!」

「朝からうるさいと思ったら、何をやってるんだいキミは……」


 若干あきれ気味に上司のおっぱいさんがやって来た。

 実に良いおっぱいだな!

 よし、今押し付けるてやるからな!

 うらぁっ!


「ここの二人、上に連れていってもらえませんか? アレです」

「またかい? 最近多いね。この二人は両方そうかい?」

「こっちはありで、こっちは無しですね」


 言って、妹? の魔法使い見習いちゃん、生意気剣士娘を順番に指差す。


「はぁ、ま、わかったよ。おいで二人とも」


 二人を連れておっぱいさんが遠ざかっていく。

 あぁ、おっぱいが遠くに行ってしまう……。


「おい、仕事しろ、仕事」


 ぼーっとしていた俺に声がかかる。

 そこにはおっさんが居た。

 筋肉である。

 それが横に並んで5人になる。

 筋肉パーティである。

 どうせならおっぱいパーティを担当したかった。


「なんか指定はあるか?」

「討伐依頼!」

「採取クエスト」

「「護衛任務」」

「楽な奴」


 お前ら、パーティ内である程度決めて来いよ。

 えーっと、コイツ等は割と優秀だから……これと、これとあとこれかな?

 ふぅ、文字が読めるやつ相手だと説明が楽でいいな。


「この三つから話し合って決めろ。あと楽な仕事などこの世に存在しないぞオレン」


 俺は三つの依頼を並べながら言う。


 採取クエスト

 ◆ランク:D以上

 依頼内容:上毒草の納品

 報酬:一本銀貨三枚

 数量:制限なし

 備考:無し


 護衛任務

 ◆ランク:B以上

 依頼内容:王都までの護衛

 報酬:金貨1枚

 備考:三食食事付き


 討伐依頼

 ◆ランク:C以上

 依頼内容:オークの討伐

 報酬:金貨3枚

 備考:オークが集落を作っている可能性あり


「護衛はないな」

「あぁ、王都までで金貨一枚とかクソ過ぎんだろ」


 そうだな。

 ここから大体一ヶ月かかる距離で金貨一枚は無いわ。

 お前らみたいなやつらにとっては、だけど。


「討伐は……なんかあんのか?」

「個人的に地雷の予感がハンパ無いな。やめとけ」

「じゃぁ並べんなよ」


 そうだな。

 でもお前が討伐クエストやりたいって言うから並べたんやで?


「採取のこれは」

「あぁ、それは絶対に地雷だから。アド沼に行ってもこの時期に上毒草は絶対に生えてない」

「おい、だから『ジライ』って言う依頼を並べんなよ」

「報酬だけみたらこの額はかなり美味いぞ?相場の3倍だ。オレンがお望みの超楽な仕事だ。この時期に上毒草が見つかれば、だが」


 おっさんたちがオレンを軽く睨む。

 まったく、仲良くしろよお前ら。


「護衛任務やるか? うまくいけば……」

「……いや、これだけは絶対にないわ。儲からねぇよ」


 うんうん。

 そりゃそうなるわな。

 5人パーティーで月収金貨一枚って事は、5人で分けたら月収20万ってことだ。

 道中の武器のメンテ代、ポーション代、往復でかかる時間とその期間の稼ぎ。

 その他諸々を考えたらコイツラにとっては、激マズだ。

 この街に帰ってくるときに護衛依頼が無かったら、帰りはただで一ヶ月トボトボと歩くだけになるしな。

 その上、こいつ等の場合はこの街に家がある。

 家の維持費が往復を含めて2ヵ月分かかる。

 どう考えてもマイナスである。

 ついでに、道中の魔物は値段的な意味で美味くない。


 結論。

 この街で、周辺の魔物を狩りまくった方がコイツ等にとっては美味しい。

 値段的な意味でも、素材的な意味でも。

 ついでに、俺の給料的な意味でも。


「ふむ。暇になったな?」


 俺は若干ニヤけながら言う。

 これでコイツ等に今日の相手をしてもらえる。


「オークのを詳しく聞かせろよ。どこら辺がヤバイんだ?」


 諦めてなかったんかよ。

 しかも、ここ最近で一番ヤバイ依頼だぞこれ。


「依頼主に若干問題があるんだよ。いや、問題というよりも、疑問か?」


 死んでも良いような奴ならやらせてるんだがなぁ。

 コイツ等には結構世話になってるし、死んで欲しくない。

 ってか、そんなことしたら俺の受付の評判が悪くなるからしないけど。


「? きちんと報酬を払わねえ奴なのか」

「それはねぇな。国からの依頼だし」

「はぁ? それの何が問題なんだよ? 別に珍しいもんじゃねぇだろ」


 まぁね。

 そうなんだけど、さ。


「俺の今までの経験でこれはやべぇと思ったんだ。だからこれはやめといた方が良い」

「なんじゃそりゃ。もうちょい納得できる理由を言えよ」

「ふむ、もっかい良く見てみ。なんか気が付かないか?」


 採取クエストと護衛依頼を下げながら、もう一度よく依頼内容を見せる。



 討伐依頼

 ランク:C以上

 依頼内容:オークの討伐

 報酬:金貨3枚

 備考:オークが集落を作っている可能性あり


「……これ、ランクおかしくねぇか? 普通オークの集落あるんならランクB以上だろ」

「いや、そうじゃねぇだろ。これ、討伐数が書いてないぞ。それなのに報酬は固定だ」

「あ、これジライだ」

「あぁ、この依頼ジライだな」

「ジライクエストだな」


 何だか『地雷』って言葉が最近冒険者の間で流行り始めてるんだよなぁ。

 俺が使い始めたせいだけどさ。

 そして、コイツ等の言う通りである。

 普通、討伐依頼というのは大きく分けて2種類だ。


 ある強力な個体を倒して欲しい。

 〇〇を討伐したら、金貨〇〇を払う。

 といったものと、

 〇〇の魔物が大量発生したので倒して欲しい。

 報酬は、一体に付き〇〇払う。

 といったものだ。


 他にも、討伐依頼とは別の『調査依頼』の一種として、

 〇〇村付近での安全の調査、又、可能な限り魔物を倒して欲しい。

 報酬は〇〇(固定)+討伐した魔物によって追加報酬の発生あり。

 というものがある。


 この依頼はどちらかというとこれに近い。

 が、討伐依頼として依頼が出ている。

 これはどう考えてもおかしい。

 ヤバイ雰囲気しかしない。

 その上、国からの依頼だ。

 ミスって事はありえない。

 誰かが意図的(・・・)にこういう依頼内容にしたってことだ。

 どう考えても何かヤバイのが間に介入してやがる。

 明らかな地雷クエストである。


 報酬だけ見たらかなり美味いのが更に(たち)が悪い。

 多少怪しい依頼でも、一回の依頼で金貨三枚は美味すぎる。

 人一人が一年は遊んで暮らせる額だからな。

 一般的ななパーティー人数である6人で割っても、二カ月は遊び暮らせる額だ。


 きっと、俺が冒険者ギルドの職員を経験して無ければ間違いなくこの依頼を受けている。

 本当に、俺は運が良い。

 冒険者になる前にギルド職員を経験出来てよかった。

 おかげでヤバイ依頼とまともな依頼の違いが今ならわかるのだから。

 こんなん明らかにヤバイ依頼だわ。


「他にもヤバそうな理由はあるんだけどな、で、受けるか?」

「受けねぇよ。お前、今日の相手は決まってんのか?」


 これは、俺の今日の訓練相手って意味だ。

 俺のことを筋肉なこいつらが誘っているわけではない。

 断じてそういう関係ではない。


「まだだな。受けんのか?」

「今日はいくらだ?」

「そうだな……5人全員で銀貨1枚。1人大銅貨2枚ってことな」

「……わかった、昼前には戻るようにしとく」

「おう、どうせ暇なら草原にでも行っとけ、最近無駄にゴブリンが多いからな。多少は稼げるはずだ」

「あいよ」


 筋肉たちが出口に向かって歩き出す。


 ふぃーっ。

 あとこれを何回やれば良いんだろうね?

 目測で、あと30回ぐらいか?


 俺は順番が来た別の筋肉たちに実力に見合った依頼を斡旋する。

 ………

 ……

 …


 お、この金髪は確か王都の出身だったよな。

 この護衛依頼持ってけお前ら。

 3人パーティなら余裕で黒字だろ?

 偶には里帰りでもしとけ。

 ついでに、王都で何かお土産買ってきてくれ。

 剣とか欲しいぞ。

 王都の職人は腕が良いらしいからな。


 ◆


「ふぃーっ」


 あれから何やかんやあったが、今日も一日無事に終わった。

 あとは寝るだけである。


 筋肉たちに協力してもらい『複数を相手にする立ち回り』を練習したが、俺の限界はやっぱり良くて3人ってとこだな。

 4匹以上の魔物に遭遇した場合は、さっさと逃げるようにしよう。


 概ね今の自分の実力は把握出来た。

 一対一で即敗北していた昔と比べれば、随分とマシになった。……はずだ。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 シュウ 男 21 鑑定士


 スキル:剣スキル1 採取4 

 鑑定:植物鑑定5 魔物鑑定2 アイテム鑑定4 人物鑑定6 スキル鑑定1

 固有:異世界人セット 超幸運スキル

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 うーん。微妙だ。

 あれだけ走って、殴って殴られて、蹴って蹴られて、休日はモンスターとの戦闘をして、採取クエストをして、受付嬢に睨まれて、冒険者とそこそこの頻度で戦闘訓練をして、受付嬢に殺気を飛ばされて。


 あれだけやっても身に着いたスキルはこれだけ、か。

 実質、剣スキルと採取スキル以外は『異世界人セット』のおかげだしなぁ。


 ちなみにこの剣スキルってのは凄い。

 具体的には、今まで良く分からんうちに木刀でボッコボコにされていた俺が、どう殴られるのか(・・・・・・・・)太刀筋を理解出来るようになったぐらいには凄い。

 うん。……普通に凄いよね。

 あと、感覚的にどう動けば良いのかがなんとなーく、わかるって効果もある。

 ま、これを習得した頃には既におっさん達に指導を受けた後だったから、俺にとっては本当に『どう殴られているのかを理解する為のスキル』だけどな。


 で、採取スキルってのは採取対象の発見率が上がるっていうスキルなんだが、正直よくわかんね。

 恐らくだが、かなり早い段階でこのスキルを俺は取得出来ていたんだと思う。

 何故か昔から採取クエストだけは得意だからな。


 あ、ちなみにこの世界で自分の所持スキルを確認するには『人物鑑定+スキル鑑定』の両方が必要だったりする。

 俺も最近まで自分の所持スキルを知らなかったしな。

 ぶっちゃけ、スキル鑑定を覚えた時の俺の絶望感はハンパ無かったよ。


 異世界人セット

 全言語完全理解スキルを取得する。読める! 書ける! 喋れる!

 鑑定系スキルの習得速度が上がる。あくまで習得速度が上がるだけ。

 アイテムボックスのスキルをランダムで得る。


 悲しいよなぁ?

 頑張って身に着けた鑑定スキルが、実は異世界人セットのおかげだと知った時の俺は絶望したんだなぁ!?

 絶対に鑑定スキルを得て、給料が上がった日に小躍りしてた俺は神様に笑われてたんだよなぁ!?

 クッソ。


 極めつけはこれだよ。


 超幸運スキル

 超幸運運キルとか子供の好きそうなネーミングよね。

 ちなみに私の自作スキルよ。

 とりあえず幸運スキルの10倍の効果があるわ。

 暇なときは見てあげるから死なないように頑張ってね。

 追伸:三十路ダンスでとても笑わせてもらったので、もう一回やって下さい。


 で、冒険者ギルドの資料室で見た幸運スキルの効果がこんな感じ。


 幸運スキル

 レアモンスターとの遭遇率が上がる。

 レアドロップの確率が上がる。

 レア素材の発見率が上がる。

 スキルが取得しやすくなる。


 うん。まず神様に小躍りをばっちり見られてた。

 そして、俺が鑑定スキルを覚えられたのはほぼ間違いなくそういうことなんや。

 小躍りしてた俺を見て神様は「プッハ、あいつ踊てるんだけど。おっさんっ、三十路のおっさんが踊ってるんですけどー」って笑われてたよね?

 俺があの時「うっは、俺スキル取得早過ぎなんだが」って喜んで踊ってたのを、さ。

 笑われてたんだよね?


 これを知った時、俺の絶望感はハンパ無かった。

 例えるなら、カップ焼きそばを流しにお湯ごとだばぁした時とか、ソフトクリームっぽい形のアイスのフタを外すときに半分に切断された時とか、そんな感じの絶望を10倍しても、まだ足りない程度には絶望した。

 ま、最近のカップ焼きそばは構造上あまりないらしいけど俺が若い頃は割とあった。

 アイスの方は……コンビニでソフトクリームのアイスとかあるじゃん? あれでフタ外すときに上の部分がフタにくっついてて、ソフト/クリームになる感じな。

 わかりやすく言うと、数多く経験したことはないけど、誰しも一度は経験したことがあるだろう絶望感ってことな。

 要するに、次の日は普通に仕事出来る程度の絶望な。


 資料室でアイテムボックスの記述を見つけた時の俺も、笑われてたんだろうなぁ。


 アイテムボックス

 一般的に種類は3つあるとされている。

 1、容量4:重量10kg以下の物を4つまで収納可能なアイテムボックス。

 収納した物の時間経過あり。

 2、容量8:『同じ種類』を一枠として考え、8つの枠が存在するアイテムボックス。

 一枠の収納量は、100kgまで。

 収納した物の時間経過は通常の1/4になる。

 3、容量12:『同じ種類』を一枠として考え、12つの枠が存在するアイテムボックス。

 一枠の収納量は、150kgまで。

 収納した物の時間経過は通常の1/2になる。


 この説明を見た後にさ、俺は18枠もあったら「うっは、キタコレ」って思うじゃん?

 ちょっとテンション上がっちゃうじゃん? ガッツポーズとかしちゃうじゃん?

 はしゃいで他のギルド職員に「うっさい!」って注意されるのも仕方ないやん?

 あれも神様に笑われてたんだろうなぁ。


 あ、ちなみに俺のアイテムボックス。効果が超すっごいよ。


 アイテムボックス

 容量18:『登録したカテゴリ』を一枠として考え、18の枠が存在するアイテムボックス。

 一枠の収納量に限界はない。

 収納した物の時間経過をある程度自由に操作出来る。

 カテゴリとして登録されていない物は自動で適応したカテゴリに分類される。


 これ、超凄いんだよね。

 例えば、他のアイテムボックスで最弱魔物のゴブリン。あぁ、ゲームに出てくる緑色の小人な。そんでゴブリンの死体を入れると『ゴブリンの死体』って収納されるわけだ。

 他のアイテムボックスだと時間経過ありだから、当然素材が痛んだり、肉が腐ったりするんだ。

 けど、俺はその気になったら『時間経過無し』の設定にもできる。凄い。



 でさ、最後の一文だけど。

 俺のアイテムボックスに『ゴミ』『素材』『肉』『魔石』って4つのカテゴリを登録した状態で「ゴブリンの死体」アイテムボックスに入れると、こうなるわけ。

 死体のカテゴリがないので、自動分類。

 死体を入れると、素材、肉、魔石、ゴミの四種類に自動で分類されて収納される。


 うん。すっごいんだこれが。

『死体カテゴリ』が無いと勝手に死体の解体作業してくれるんだよね。


 最初の頃は『登録したカテゴリ』ってのが良く分からなかったんだけどさ、やっぱり、「登録してないのを無理矢理突っ込んだらどうなるんだろ?」って考えるじゃん?

 で、試しに死体の登録を外して、ゴブリンの死体を突っ込んだわけ。

 ゴブリンって特に素材とか無いから「多分『ゴミ』カテゴリーに分類されるんだろうなー」って思ってたら、素材の枠にゴブリンの素材、肉の枠にゴブリンの肉、魔石の枠にゴブリンの魔石、ゴミの枠にゴブリンのゴミ。って感じで分解された。


 ゴブリンの素材。ゴブリンの肉。ゴブリンの魔石。

 この3つの項目が非常に気になった俺は、メッチャ調べた。

 ゴブリンの死体に使い道があるということを、俺は知らなかったからだ。


 で、調べてわかったんだが、一部の地域ではゴブリンの肉を食べるし、ゴブリンの耳や血液というのは『錬金術』の素材になることがあるそうだ。

 そして、ゴブリンの魔石は通常『屑魔石』と呼ばれる物で『使い道のない魔石』らしい。

 ちなみに、冒険者ギルドで買い取りすら行っていない程度価値である。

 これもやはり『錬金術』では素材になるらしい。


 つまり、俺の基準だとゴブリンってのはゴミだったが、アイテムボックスのおかげで違うことが分かった。

 まぁ、錬金術師とか、珍し過ぎて俺は一度も会ったこと無いんだけどね。


 で、ゴブリンの素材ってのを試しにアイテムボックスから出してみたら、べチャっと音がして地面に血だまりが出来た。両耳が血だまりに浮いている状態でな。

 服と靴がメッチャ汚れたのは言うまでもない。


 うん。これじゃぁダメだ。

 というわけで『素材』の項目がある状態で新しく『液状素材』の項目を作ってみた。

 すると今度は、きちんと『素材』の項目にゴブリンの耳が、『液状素材』の項目に「ゴブリンの血液」が入っていた。

 新しい項目の作成をすると勝手に中身が分かれてくれるみたいだ。超便利。


 こんな感じで『素材』の項目は細分化されていったわけだ。

 ゴブリンは時々『角持ち』と呼ばれるちょっと強い個体が居るので『角素材』の項目も増やした。

 本当は『牙素材』や『爪素材』といったものも欲しいが、枠が足りない。


 これを知った俺はやっぱり小躍りした。

 笑いたきゃ笑え! 俺はもう吹っ切れたぜ! って気分でな。

 だって、このおかげで俺は解体技術とか、素材剥ぎ取り技術とか覚えなくて良いんだぞ。

 アイテムボックス様様だぜ。


 ちなみに今のアイテムボックスに登録しているカテゴリはこんな感じ。

『武器』『防具』『道具』『魔道具』『服』『液状素材』『皮素材』『骨素材』『鱗素材』『角素材』『素材』『俺の食用肉』『肉』『魔石』『薬草』『毒草』『可燃ゴミ』『不燃ゴミ』


 これが俺の試行錯誤の結果だ。

 素材の項目が多いのは仕方無い。

 こうしないと細かく分かれてくれないからな。


 今の俺は、この18の項目を『冒険者』にとって最適な形にするために色々と考えながら眠るのが日課である。

 やっぱり、整理するなら草の項目とゴミの項目か?

 他は削れないし。

 でも、これが無いと適当に採取した草の分類が出来ない上に、毒草がゴミ扱いされるから出来るなら分けておきたい。素材以外の項目を減らすべきかな。武具って項目に変えるか? でも武器と防具が分かれてると取り出しが楽になって便利だしなぁ。

 結局、実際に冒険者しながら考えた方が良いな。

 俺の社畜生活はあと10日で終わるんだし。


 早く冒険者の生活(ファンタジー)を始めたいものだ。

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