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超幸運スキル持ちだけど、俺は本当に運が良いのだろうか?  作者: ぬぬぬぬぬ
第一章 俺、自身の運の良さを再確認する
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クソガキと訳あり少女4 苛立ちと呆れと諦めと巻き添え

「お前、俺に何か恨みでもあんの? 一々邪魔してくんなよ」


 一応だけど、お前が今生きてることに俺は若干の手助けしてる立場なんだけどな。

 いや、2、3日ぐらいなら死にはしないだろうから多少大げさではあるか。


「は? 子供相手に借金背負わせようとしてる奴には言われたくねぇよ」


 なんなのその謎理論。

 うーん、でも俺も高校生ぐらいの年齢だった時はこんな感じだった気が……しないわ。

 いくら何でもここまでひどくはなかった、はず。

 …………うん。多分大丈夫、ここまでじゃなかった。

 せいぜい、国語の教師に説教されてる時に「うっせぇなぁ! ズラのくせによぉ!? このハゲェ。そのズラ剝ぎ取ってやろうかオラァァン!?」って心の中で考えてたぐらいで、ここまでひどくはなかったはずだ。

 あの時は何で説教されたんだったかな?

 …………あぁ、確か授業中に携帯がなったんだっけか?

 まったく、俺も悪かったけどさ、そんなことで一々怒ってるからハゲるんだぜ。

 と、俺も脳内で謎理論を展開してみたりする。

 あ、俺も目の前のクソガキと大差ないな。


「お前アレだな、子供に心臓頂戴って言われたら速攻でえぐり出して渡しそうな性格してんな」

「は? 意味分かんねぇし、そんなことしねぇよ」

「あっそ、アレンさんアレンさん」


 俺だけでこのガキの説得をするのは不可能だと思えたので酔っ払いのおっさんを巻き込むことにした。

 この面倒見の良いおっさんならこのガキを説得してくれるはずだ。


「なんだ~?」

「今日の稼ぎいくらだった? あ、俺の依頼の分は抜きでな」

「ん~~、んんん? いくらだろうな? オレン~計算~」


 ダメだ、この酔っ払い使えねぇ。

 いや、脳筋のおっさんにこんなことを聞いた俺が間違ってた。

 なんでこんなダメなおっさんがリーダーなんだろうな。


「大銅貨3枚だ」


 相変わらず金が絡むと答えんの早いな。

 日給三万……結構よさげに聞こえる稼ぎだな。

 これだから冒険者というのはタチが悪い。

 いや、どっちかというとそういう報酬額を決めてる冒険者ギルドが、か。

 

「へぇ、それってこのガキも狩りで貢献してたりする?」

「それはないな。子守りが無ければ銀貨一枚ぐらいにはなった」


 狩りの効率が三倍ですか、そうですか。

 オレンはこの手のことで冗談を言う男ではないし、受付時代にこいつらの一日の稼ぎは概ね把握してる。

 だからわかる。今オレンが言った事はただの事実なのだと。

 うん、やっぱ『採取屋』をやってる俺はこの五人よりも優秀って事だな? 

 ……採取っていう分野に関してだけどな。

 このおっさん達は五人でドラゴン狩っちゃう系男子だからな。『狩り』って分野では未だに勝てる気がしない。

 ってかこの街で俺よりも狩りが下手な冒険者とかいるん? 


「ふんふん。で、聞いてて分かったかクソガキ?」

「は? 何がだよ? 今はおっさん達の日給がいくらかなんか関係ねぇんだよ。このロリコン」


 あぁ……すっごい殴りたいぞこいつ。

 ウザすぎる。

 ギルマスが見てなかったら今のは絶対に殴ってた。


「オレン、今日の出費はいくらぐらいになりそうだ?」

「そうだな……こいつらの飲みのペースにもよるが、ほぼ間違いなく赤字だな」

「だろうな。でクソガキ、今度は分かったか?」

「だから話逸らしてんじゃねーよ! この変態野郎!!」


 うん。今決めた。

 コイツ、絶対にあとでボコるわ。

 あと受付、お前らも頷いてるんじゃねーよ。

 話しかけられたいのか。

 話しかけんぞオラ。


「ゲロガキ、白金貨6枚の価値を言ってみ?」

「はぁ? 何でそんなこ――」

「良いから言えって言ってんだよ。いい加減俺だってキレるぞ」

「ハッ、別にお前なんか怖くねーんだよクソビビり! 逃げてばっかのクソ雑魚のくせに偉そうにすんじゃねーよバーッカ!」

「……へぇ、俺がクソビビりか」

「あ? そうだろ、聞いたぜ、あんた戦わないで魔物から逃げ回ってるんだろ? しかもそれがレアな個体だったら倒してもらった後で金まで恵んで貰ってんだろ。ふっ、弱い冒険者は良いよなぁ。周りの冒険者たちが金を恵んでくれるんだからよ!」


   ◆


「……へぇ、俺がクソビビりか」


 あぁ、この馬鹿野郎ついにやりやがった。

 その言葉はシュウにとって一番のジライだ。

 変態扱いされることも、死にたがり扱いされることも、ヘタレ扱いされることも、シュウは受け入れている。それが事実であり、実際にそういうことをしているとシュウ自身が納得しているからだ。

 ただ、ビビリ扱いをされるとシュウはキレる。

 自分で冗談めかして言う分には良いし、他人が冗談で言うのも良い。

 だが、相手が本気でそれを言った場合、シュウはキレる。それはもう、もの凄くキレる。

 普段ならいっそ話のネタにするんだろうが、イライラしている今のシュウには笑って許せる余裕がない。


 シュウが深呼吸をしているの視界の端に入れながら、俺はそっと酔っぱらっている仲間達に指示を出す。

 普段から奇行が目立つ奴だが、キレたときのシュウは本当に何をやらかすかわからない。

 なんてたって、コイツは昔よそから来た冒険者を殴り殺している。

 しかも、最後のトドメはギルド職員にやらせて、自分の罪を軽くしやがった。

 シュウがキレる理由を知っている俺達は、絶対にそれだけは言わないようにしていたし、シュウを気に 入ってたギルマスは全力であの時の事をなかったとにした。


 はぁ、本当に世の中に簡単な仕事はないな。

 もう二度とシュウからの依頼は受けない。

 それが三日で大金を稼げる依頼だとしてもだ。

 あぁ、本当に護衛依頼ってのはロクなもんじゃねぇ。

 なんで俺がこんなことをしなきゃいけないんだ。

 楽な依頼をしたい。

 寝てるだけで毎日金貨一枚貰える、そんな仕事がしたい。


   ◆


 今すぐにでも殴り倒してやろうかと思ったが、視界の隅にギルマスが見えたことで俺の頭は急速で冷えた。

 ここでこいつを殴り倒したら、またギルマスに迷惑をかけちまう。

 それだけはダメだ。

 俺はギルマスに一生かかってでも返しきれない恩がある。

 そう思うと、すぐに冷静になれたし周りのことも見えてきた。


 ふ~。

 囲まれてるな俺。

 いつの間にか正面からいなくなっていたおっさん達が、俺が何かしたらすぐに押さえつけようとする位置に移動していたことを確認して、更に冷静になれた。

 大丈夫だレーナ。

 俺、今すっごく冷静。

 だからそんな目で俺を見るな。

 いつもみたいにジトっとした目で俺を見てろ。

 マジ大丈夫だから。


「オッケー、もう落ち着いた。だからおとなしく酒飲んでろお前ら」


 そう言って、両手を上にあげて敵意がないことを示そうとして、気が付く。

 まーた、ダガー握ってたのか俺。

 しかも今度は両手にダガーだ。

 今の俺はだいぶキレやすくなってるみたいだ。

 ヤバいわ。

 具体的にいうと、シノの俺に対する視線がヤバイわ。

 完全に不審者を見る目ですわ。

 いや、実際不審者だから文句は言えないんだけどね。


「……何やってんだおっさん達?」


 俺がダガーを素早く収納するのを見て、驚いているシノを見つつ椅子に座った。

 焦ってアイテムボックス先輩に直でダガーを収納したから、今のは傍から見たら手品みたいに一瞬で消えたんだろうなぁ。

 あと、驚いてるシノを見て、俺の荒んだ心がぴょんってなった。


 それにしても、当事者であるアホが事態を把握していなくてビビる。

 今なら断言できる。

 俺、高校生の時でもここまで酷くなかった。

 流石に自分に向けられてる敵意ぐらいは感じ取れよ。

 そんなんじゃ大人の世界の皮肉に笑顔で応じて「あ、こいつ皮肉も通じないアホですわ」って思われて馬鹿にされるぞ。

 大人ってのは皮肉をわかるようになって一人前だかんな。更に言うなら皮肉を皮肉で返せれば上出来だ。


「楽な依頼がしたい……」

「コイツに貨幣価値を説明してくれたら金貨一枚払うけど、やるか?」

「断る」

「だよなぁ、まさかこんなことも理解出来ないアホだったとは思わんかった」

「あ? 馬鹿にしてんのかよ? おっさん」

「馬鹿にしてるよ?今まで気が付かなかったのか? お前、本当に馬鹿なんだなぁ。あとおっさんって呼ぶな」


心底呆れたって表情で、クソガキを見ながら続ける。


「もう説明すんの面倒だから一方的にしゃべるぞ。白金貨6枚ってのは大金だ。ここの冒険者ギルドの受付の月給が大体銀貨7枚だ。で、白金貨は一枚で銀貨100枚の価値がある。頭の悪いお前の代わりに計算してやろうか? 100÷7だ、出来るか?」


そう言って、クソガキが少し考えたのを見て、かぶせるように言う。


「15だアホ。端数なんて現実では必要ねぇんだ割り切れない時点でわかれ。これぐらいすぐ出来なくてよく今まで生きてこれたな? で、一年は12カ月だ。流石にわかるか? つまり白金貨一枚稼ぐのに1年と3カ月かかるってことな、これを6回。それが白金貨6枚の価値だ。もっとわかりやすく言ってやろうか? 7年と半年働いてやっと稼げる額が白金貨6枚だ」


 目の前で「なんだ、簡単じゃん!」と言い出しそうなガキを見て、おいおい、そんな稼いだ額を丸々貯金できる奴がいるんだったら世の中の人間はみんなマイホーム持ちになれるじゃねーか。お前の頭の中で生活費にかかる金はどこから湧いてくるんだよ? と思いながら続ける。


「もっと良いことを教えてやろうか? 冒険者、と呼ばれる職業での平均年収は金貨3枚だ。この金額は冒険者ギルドの受付の半分以下ってことだな。あぁ、馬鹿は急に金貨で換算するとわからないかな? 受付の年収は金貨8枚と銀貨4枚な」


 あぁ、これだけわかりやすく言ってやったのに目の前のアホは全然わかっていないみたいだ。

 「で、それが?」って顔してやがる。

 あ~、イライラする。

 冒険者を続けるってことがどんだけ凄いことなのかわかってんのかよ。

 この前キノコ祭りをしたレイズのパーティー仲間なんて、みんなあっさり死んじまったんだぜ?

 まだ、今まで助けてもらった恩返しだって出来てなかったのによ……。


「命がけの狩りでやっと手に入れた大金を寄越せと言ってくる少女がいて、喜んで渡そうとするのは金持ちの馬鹿か、お人好しの大馬鹿か、お前みたいなマヌケだけって言ってんだよ」

「理由があったら子供に借金させて良いのかよ」


 ……はぁ、このガキの思考回路はどうなってんだろうな。

 半ば予想していたがコイツ、話が通じない奴だ。

 ってか、そもそも借金=悪って図式がアホ過ぎる。


 周りを見渡せよ、この世は借金ばっかで成り立ってる世界なんだぞ。

 お前の面倒を見ていた冒険者のおっさん達だって、家を持つために借金をしてるぞ。それは悪いことか?

 奨学金という名の借金を平気な顔でする日本人がどのくらいの割合か知っているのか。最近はどうなのかは知らんが、どっかで今の時代は2人いたら1人は奨学金で大学に行ってるってどっかで聞いたぞ。そいつらはみんな悪人か何かか? そいつらに金を貸す国の存在は悪か?

 違うだろ。

 借金なんてものは、ただの目的のための手段の1つだ。

 家が欲しい、けど金がない。そんなときに家を持つ手段として借金があるんだ。

 大学に行きたい。けど金がない。だから金を国から借りて学校に行くんだろうが。

 本当に、なんでこんな簡単なことがわからないんだこのガキ。

 俺が説得すんのはもう諦めた方が良いな。

 ハァ~、少女に続いてこんなガキにまで負けちゃうとか、大人としての自信無くしちゃうわ。

 まぁ、そもそも勝ち負けってもんじゃないんだろうけど、大人だったらガキの一人二人はきちんと説得してみせろって話だよな。

 これ以上説得続けてたら、俺の頭皮がストレスでハゲそうだからシノに任せてさっさと撤退させてもらうか。


「そっか、それもそうだな。シノ、そういうわけだから今までの話全部なしな」

「え」

「いやー、親切なオニイサンに説教されちゃったから、お前に受付をさせる話、やっぱりナシ! 金も貸さねぇ! 頑張って自分で稼げ、な?」

「ええええええええぇ!!」

「大きい声出すなよシノ、ビックリするだろ。よく考えたた確かに子供に借金させるとかありえないわ。イヤー、オニイサンノイウトオリダワー。コドモニシャッキンサセルトカアリエナイワー。じゃっ、頑張ってなシノ。俺、今からギルマスにも説教されなきゃいけないんだわ。あ、一応言っとくけど、これ以上俺と関わろうとしたらマジで衛兵呼ぶからな」


 言いたいことを言い終えて、俺はギルマスの部屋に直行した。

キノコ回を思い出した人が、なんとなくあぁ、なんか違和感のある会話だと思ったけどそういう事だったのかアレ。と少しでも感じて貰えてたらうれしいです。

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