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実録:セクハラ対抗記  作者: 怒れる中年女子
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2、戦う決意

2、戦う決意

私がセクハラ基地外社長やその仲間達と戦う決意をしたのは、書類を整理していた時だった。

あの会社には前に老人おむつという人間がいた。このじじいは老人おむつを会社のロッカーの中に入れている男だった。歩く時はブーブーと屁をしながら歩く。唯一の楽しみは基地外社長の言う通りに行動して、海外旅行に連れて行ってもらう事だった。あの会社は老人で健康じゃない人が多かったが彼もその一人だった。基地外セクハラ社長は他の社員に、

「お前らこんな物食った事ないだろう?」

とか言ってホテルのギトギトした食事を食べさせて喜んでいたがあんな物ばかりじじいが食べたら健康に悪いに決まっている。自分と経理の女だけ毎日ホテルでそういう食事をしては自慢していた。

経理担当の女性は糖尿病で目が見えなくなった。最初は可哀そうだと思っていた。だからそういう病気の人達が食べる食事を、会社のお昼に宅配で取り始めた時は、レンジで温めるのとか協力していた。だけどこんなまずい食事は食べたくないだの、私は可哀そうだと文句ばかり言うのでウンザリしてやめた。私が彼女にあの病人食を食べさせようとしたのが元々間違いだった。あの人は人より自分は高い物を食べていると吹聴するのが生きがいの一つだった。心配する必要など全くなかった。それからほどなくして、またホテルの高い食事を毎日お昼にとっている事を、私含めた会社の社員に自慢していた。

その上毎日のように会社の便器にうんちを垂らすようなばばあだった。ちなみにこのうんこ垂ればばあの後始末の掃除も私の仕事だとしてやらされた。

「社員だから当たり前だろう。」

と社長に言われた。頭にきたので証拠写真を撮っておいた。

話を戻そう。老人おむつは全く書類の整理ができない男で、自分が使っていた机の引き出しはごちゃごちゃにして定年で辞めた。

ある日事務の私があのじじいが残していった書類を整理しろと後釜になったかえる腹に言われた。これがすべての始まりだった。かえる腹は暇さえあれば自分が前にいた会社のホームページを検索して、偉くなった元同僚を穴の開くほど見つめ何十分も呆然としている男だった。最初は、

「かわいそうだなぁ。」

と思っていたけど後から事ある事に、自分はお前達とは違う。俺はいい会社にいた人間なんだ。俺はいいホテルに泊まった事があるんだ。俺はお前達と違って旨い物を食べていた…と私を含めて会社にいる技術者達を「俺はお前達を違う。」と言ってバカにしていた。面倒だから相づちうっていた。そうすると上機嫌で子供みたいに無邪気な表情を見せて笑っていた。この男はセクハラで困っていた私に

「社長は神だ。お前は何でもいう事を聞かなくちゃいけない。」

と言った。その時得意そうにニタニタ私を見ていたあの顔は一生忘れない。とにかく何かあると、

「俺は偉いがお前達は最低のカーストだ。」

とドヤ顔で言い続ける徹底した優越感の持ち主だった。六十歳過ぎていたけど胸に桜バッチをつけ、呪文のように中国や韓国の悪口を言っていた。

あの日もいつものようにかえる腹は自分の前の同僚達が如何に偉くなっているかを見て「ちくしょう。」

と小声でいい私は、

「また始まった。」

と思っていた。こういう事は日常茶飯事だったので、私に何を言って欲しいのかもわかっていた。

「その会社大した事のない会社ですよね?」

こう言ってやる。そうすれば、

「そうだ。だから俺は見切りをつけて辞めたんだ。」

と得意そうに言って五分後には寝ていた。それが彼の会社での日常だった。あまりにしつこくて、ウザったいので何も返事をしないで無視している時もあった。大体そういう時は、

「これを整理しろ。」

とか言いながら書類の山を差し出してくる。あの時もそうだった。老人おむつが引き出しの中に残して言ったごちゃごちゃの書類。私を含めて誰も重要な書類が入っているとは思っていなかった。だから老人おむつが辞めても彼の引き出しはそのままだった。大体屁をこきながら歩く人間なんかの机は誰も触りたくない。会社のオフィスで彼の机は主がいなくなった後埃をかぶっていた。しかしあの日かえる腹が、

「何でこんなごちゃごちゃになっているのに整理をしない?」

と言ったので、

「わかりました。」

と答えて整理を始めた。私はノロノロやって時間稼ごうとぐらいしか考えていた。どうせもうすぐこいつはお昼寝だ。行動パターンは保育園児と一緒だ。いや、保育園児以上に手間がかかった。

俺はかわいそうな男だ。不幸の星の下に生まれた。こんなに優秀なのに最後はボロ会社にいる。昔の同僚はみんな大会社の役付き。若い女の子の秘書に大きな車がある。俺の目の前に今いるのはおばさんの事務員。そう一日考えて過ごしている。だから自分の欲求不満解消の為、会社の人達をこき下ろさないと生きていけない。

「早く寝ろよ。社会のゴミ。」

と思ってまたネットを見ながら頭が左右に揺れ出してかえる腹に、

「死ね。クズ。」

と一日心の中で何回も言う言葉を言いながらノロノロと書類を整理するふりをしていた。


その時に『退職金規程』を見つけたのだ。


あの時は死ぬほど驚いた。何故なら退職金が支払われた事など一回も見た事ない。この会社を辞めても退職金はない。ボロ会社だからしょうがないとばかり思っていた。しかしそれは間違いだったのだ。

退職金規程は二つありよく見ると最初の退職金規程では払う金額が高すぎると思ったのだろう、基地外社長と老人おむつで話し合って退職金を下げる相談をしていたらしい手書きのメモもあった。そしてそれに基づいて二つ目の退職金規程もあった。私は、

「この会社には退職金規程はないからな。」

と大声で言っていた基地外社長の言葉を思い

出し開いた口がふさがらなかった。書類を整

理しているふりをしながら、かえる腹の様子

を見るといつものように熟睡して口が半開きになっていた。その隙にこれらの書類をコピーしバックの中に入れた。そして何食わぬ顔して退職金規程も含めた他の書類を整理し、パンチで穴をあけ、ファイルし本棚の中に入れた。会社規程・他と表紙にはつけた。

数日後にふと見ると私が整理したファイルはなくなっていた。退職金規程も含めたすべてファイルごと消えていた。かえる腹が本棚から持ち出したに違いなかった。そして基地外社長にこう報告した。

「社長、よかったですよ。あいつはバカだからこれが退職金規程だとはわからないけど、他の社員にばれたらえらい事ですよ。退職金を払わなくちゃいけなくなりますよ。」

この功績でまたかえる腹は他の社員に黙って

社長にくっついて海外に行けた。海外で鉄砲

を撃つという個人的な楽しみにふける事がで

きた。何人もの辞めた社員に退職金を払わな

くていい功績は大きい。何回でも海外に連れ

て行ってもらえるだろう。

かえる腹はいつも自分が担当している会社の技術者をコミニュケーション能力がないとか、技術力がないとかぼやいていた。だから売るのが大変だと言っていた。しょうがない人間達を俺が構ってやっているのだ。だからお前達みたいなバカでも仕事にありつく事ができる。有難いと思えという話だった。 

私はあの男が死ぬほど嫌いだったけど、もしかしたら本当にあいつは優秀な営業マンだったのかもしれない。だけど個人の退職金という基本的な権利も侵害するような人間が誰がコミュニケーションの能力がないだの、誰がバカだのアホだのと評価する権限はないと思う。他人の基本的な権利も認めないばかりか、故意に隠蔽するような人間が他人をとやかく批判する資格はない。

 あの退職金規程を発見しそれまで「転職大変だもんな。」と思って我慢していた私も「ここは基地外の集まりだ。辞めるしかない。」と決心するに至った。それから証拠集めを始めた。退職金を払えと言ってもきっとごちゃごちゃ言うだろう。誰か社員が会社を辞めると言い出すと大騒ぎだった。何も言わせない為に悪事の証拠を集めよう。何も言わせないぞくず共めとあの時腹を決めた。

 聞いた話だけど老人おむつは退職した後歩けなくなったらしい。病気だそうだ。そりゃそうだろう。今まで何人もの若者の退職金を騙し取ってきた。自分が海外旅行に行きたいから基地外社長の言う通り払わない様に画策した。天罰だなと思っている。


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