第4話 異世界への旅立ち~二人のステータス
ツッコミどころ満載かもしれません。
ご容赦ください。
結局、世界樹らしき大樹の裏手にある家屋で一晩明かした。色々と疲れていたのかぐっすりと眠ることができた。朝、早くに目覚めた僕はそっとベッドを抜け出し外に出る。外といっても召喚の間、早朝の空気を味わうことが出来ないのが少々残念だ。
屈伸して軽い体操を行い、左手を前にかざす。虚空より現れた黒い空間から訓練用の木刀を取すと僕は正眼に構えた。肺から一息、空気を吐き出し素振りを始める。
「あら早いのね」
「ええ、早くに寝ましたから」
いつの間にか女神も起きていたようだ。小首をかしげ右手をヒラヒラさせた。僕はそっと一礼して朝の挨拶を行い再び素振りを開始する。ここに召喚された際、若返ると同時に数多の戦闘でボロボロとなっていた体も調子も改善されていた。それでも若返った反動か多少なりとも違和感がある。早くなじませないといけない。そのための訓練なのだが……、ジーっと見つめられると何だかやりにくい。起き抜けのはずなのに、昨日と変わらず身だしなみが整っているのは流石の一言だ。
「そう見つめられるとやりにくいんですけど……」
「いえ、召喚した私が言うのも変だけど、恭真ってすごく不思議」
「そうですか?」
「そうなの。今みたいにナビゲーション・リングなしで収納空間も使える上、高い身体能力……、他にもまだありそう。理奈ちゃんの件がなくても最初から技も魔法も何も必要なかったのかもしれないわね」
女神が溜息をつくのを見て、僕は素振りをやめて天を仰いだ。
「そんなことないですよ。僕は何も守れず全てを失った。“まだまだ”なんです。失ってあがいて復讐に駆られ、力はついたけど何も残っているものなんてなかった」
「そう……、でも何も残っていないなんてことはないでしょう?例え復讐のためとはいえ手にした力がある。確かにあるの。それを今度は守るために使わないと、ね?」
「ええ!そのつもりです!」
腕を高くつき上げ何かを掴むように強く拳を握った。
もう失わない――その誓いを込めるように……。
◇
しばらく雑談を交えつつ素振りに汗を流した。それとなく僕を勇者召喚に選んだ理由を尋ねてみたりした。
「どうして僕だったんです?剣や体術は覚えがありますけど、使える魔法は加速系一つだけ。あの力を失った今の僕では、中途半端だと思うんですけど……」
「そう思っているのはあなただけ。それに能力云々の前にあなたでなければダメだったの」
「僕でなければ?どうして?」
「異世界でも女の子にモテそうにないからよ」
「……」
「嘘。どうせ理奈ちゃん以外興味ないのだから別にいいでしょ?」
「~~~~~~っ!」
「理奈ちゃんのこと頼んだからね。あの子のこと大切にね」
「わかってます!」
この時一番のキレある一振りを放って僕は答えた。訓練に手ごたえを得られたことに満足し木刀を収納空間にしまう。はっきりとした本当の理由を聞けなかったのは残念だが、嘘は言っていないことだけは分かった。
(僕でないとダメ、と言うわりに僕のことを知らない部分もある……。どういうことだ?)
謎が一つ残った。頭を振って今は疑問を隅に置く。
(理奈と再会できた。それで十分だ!)
流した汗を拭きとり終わるころには理奈も目が覚め、いよいよ出発の時を迎える。
「オキエスに行っても元気でね」
「色々ありましたけど、ありがとうございました」
手を振る女神に僕は深く一礼した。返事に「気にしないで。それより二人で頑張って」と激励の言葉を受け取る。理奈はこの一晩で随分女神と仲良くなったようだ。瞳は湿り気を帯びている。
「その!本当にありがとうございました。ここで助けてもらえなければ、わたしは暗闇で泣いたまま消えるだけでした。兄さんと今こうしていられるのも全部、女神様のおかげで……す?」
言い終えるのをまたずして黄金の女神は理奈を抱きしめていた。耳元でただ一言「元気でね」と口にした。突然の出来事で理奈は目を丸くするも、背に腕を回し慈しむように抱き寄せる感触に表情は緩んでいく。
「えっと、おかあ……さん?」
「あっ、えっ!?……うん、“おかあさん”でいいわよ」
どうして、そう口にしたのか理奈本人も分からないでいるようだ。「多分、“おかあさん”って皆、こういう感じなんだと思ったから」と苦し紛れの表情で口にした。もっとも女神の方は満更でもないようで“おかあさん”を受け入れていた。目を細めて微笑み、理奈の頭を撫でている。目元が潤んでいたことには気づかないことにし、少し離れて二人の気のすむまで待つことにした。
二人の少し長めの抱擁が終わったすぐ後、女神は「えいっ!」と杖をかざすと光り輝く転移魔法陣が浮かび上がる。僕と理奈は歩を進め女神に向かって振り返る。
「「行ってきます」」
かける言葉は既に決まっていた。示し合わせたわけでもなく二人の声が重なる。
「行ってらっしゃい」
優しく紡がれた言葉が僕達の背中を押す。そっと零れた理奈の「また、会えるよね」の言葉に「次に会ったら、名前を聞き出さないとな」と続けた。クスリと笑って「そうだね」と答える理奈に僕も笑みをこぼす。
瞬間、魔法陣が輝きだし視界が光で塞がれた。小さく手を振る女神の背後より先ほどまでいた空間がひび割れていく様子を一瞬、目にしたような気もする。何が起こったのかを確認する間もなく転移が完了し、新たな世界への一歩を踏み出した。
旅立つ二人のステータスは、というと………。
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キョウマ・アキヅキ
種族 人間 → 転生人
職業 竜闘士 → 竜魂剣士
年齢 19 → 15
LV 76(46+30) → 1
HP 2855 → 286
MP 1223 → 122
STR 1561 → 156
VIT 1366 → 137
AGI 1561 → 156
DEX 1366 → 137
INT 390 → 39
MND 585 → 56
LUC 3 → 1
スキルポイント残 637
転生によりレベルは「1」、ステータスは転生直前の十分の一に低下。(「0」以下にはならない)
≪属性適正≫ (S~H、適正なしは「—」)
火 H
水 H
風 E
雷 F
土 H
?
≪スキル≫
・蒼葉光刃心月流 LV10
剣技、身体強化、気配察知など、多数のスキルを兼ねる流派スキル。蒼葉光刃心月流の技が使用可能。
・逆鱗
大切な人や物に危害を与えられたときに発動。怒りの度合いによりSTR、VIT、AGLに補正。
怒りが最大に達した場合、【狂乱】へと至る。
・狂乱
怒りが頂点に達した時、STR、VIT、AGIが三倍に上昇、INT、DEXが二分の一に低下。
≪魔法≫
・???
≪称号≫
・むっつり??? NEW!
発動時、パーティーメンバーの中で最も好感度を高く持つ女性に対する敵視及び攻撃を引き受ける。時々、対象の女性に対して見とれる。
・天井知らずの限界突破者
ステータスの限界値を超えて成長することが可能となる。ステータスが高くなるほど、成長の幅が大きくなる。
・白銀の孤独竜(転生後、効果発動不能)
単独行動時、「運」以外のステータス十パーセント向上。
最大MPの半分を消費して「レベル+30」の効果を得る。HPが四分の一以下の時、MP消費なし。
???
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リナ・アキヅキ
種族 人間 → 転生人
職業 魔法学園生 → サポートメイド
年齢 15
LV 1
HP 12
MP 18
STR 2
VIT 2
AGI 3
DEX 3
INT 8
MND 7
LUC 2
スキルポイント残 0
≪属性適正≫
火 B
水 C
風 —
雷 C
土 —
≪スキル≫
・ラーニング
成長速度上昇。
強者の戦闘より経験値獲得、レベルアップ時のステータス上昇値増加。
スキル、魔法を見切り習得(自身に適正のあるもののみ)
・メイドの極意 LV1 NEW!
料理、裁縫、掃除スキルにプラス補正
・応援 LV1 NEW!
応援することで対象者に対してステータス上昇の支援をもたらす。
上昇効果はスキルレベル×5、対象への好感度により効果増減。マイナス効果を付与することもある。
・指輪待機 NEW!
指輪の格納空間に隠れて待機する。本人の意思、またはキョウマの指示によって発動する。
発動時、指輪は主=キョウマの装備アイテムとなる。獲得経験値は減少する。
・情報隠蔽 LV 10(MAX) NEW!
ステータス等の情報を隠蔽するスキル。
スキルLV最大により、解析者に対し、カウンタートラップを仕掛けることも可。
・情報解析 LV 10(MAX) NEW!
対象の情報を解析する。
スキルLV最大により、ナビゲーション・リングを通して冒険者組合のデータベースからの照合が可能。
・指輪操作 LV5 NEW!
ナビゲーション・リングを使いこなすスキル。
・射撃特性 LV3
射撃系武器及び魔法の命中精度増。
・魔導技工師 LV1
生産職系スキル。
スキルLVが上昇する程、高度な魔導機械の製作が可能となる。
・分解 LV1
分解して素材を取り出す。
機械類のみに使用可。
・料理は愛情!
家庭料理限定。好感度の高い人への料理制作時、制作評価にプラス補正。
極稀に大失敗することがある。
≪魔法≫
・フレイムショット
炎の弾丸を飛ばす。火属性初級魔法。
・アイスショット
氷の弾丸を飛ばす。水属性初級魔法。
・サンダーショット
雷の弾丸を飛ばす。雷属性初級魔法。
・ヒール NEW!
初級回復魔法。部位欠損の修復不可。
・キュア NEW!
状態異常回復魔法
≪称号≫
・世話焼き
回復魔法の効果・範囲アップ。対象者への好感度によって増減。
・分解好き
生産系スキル「分解」の成功率増。
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~おまけ~
「ねえ、兄さん。わたし達って“LUC”、すごく低いね……」
「そういうこと言うと何かフラグが立ちそうだな……」
「「……」」
「そっ、そういえば兄さんって何かステータスが微妙……。弱くはないけど半端?みたいな……」
(むかっ!)
「そういう理奈は“へっぽこ”だよな……」
「わたし、“へっぽこ”じゃないもん!兄さんが人間辞めてるだけだもん!普通の人はステータス全部【1】なんだから……」
「でもまあ、スキルや魔法は結構揃っているんじゃないか?(残念なのも目立つけど)だから元気出せって」
「兄さんは口もスキルも脳筋だよね……なんか厨二くさいし……」
「悪かったから機嫌直せって……」
恭真と理奈はこれより、冒険者キョウマとそのサポートメイドのリナとして生きていく。
二人の冒険はようやく幕を開けた。
お読みいただきありがとうございます。
次回、ようやく異世界、そしてバトルとなる予定です。