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第16話 脱“へっぽこ”~そしてキョウマの本音

ヒロインが徐々に強くなっていきます。

 あれだけレベルの上がらなかった僕が今日のオーク戦で三つも上昇した。これがリナの料理のおかげだというのだから驚きだ。

 ふと、隣の美少女メイドに視線を移すと頬を赤らめている。照れなのか戸惑いなのか、それはわからなかった。むしろ、僕の方が恥ずかしくなってきて視線を逸らすようにして辺りを見渡す。魔物も人も誰もいない。


「リナ、もう少しの間だけ人がいないか探してみよう。どこかに隠れているかもしれない」

「そっ、そうだね。でも、間に合わなかった、ってことはないの?」


 照れ隠しで誤魔化した僕にリナも便乗することにしたようだ。ヒーローアンテナの機能を停止し、ヘタリと垂れた僕の前髪に指を指す。


「それはないと思う。僕の前髪が元に戻ったのはオーク達をあらかた倒した時だから」

「ピンチが去ったから反応しなくなった、ってこと?」


 首を縦に振って僕は肯定の意を示す。もし、間に合わなかったのであれば広場につく前に反応がなくなるか、戦いの最中にその光景を目撃したはずだ。瓦礫の下敷きになって間に合わなかった可能性もなくはないが、限りなく低いと言える。その場合、もっとアンテナが過剰に反応したはずだからだ。


「魔物もいなくなったことだし、まずは動こうか。上がったレベルとステータスの確認は歩きながらにしよう」

「そうだね。ところで兄さん、スキルポイントはどうするの?今なら使えるよ」


 ナビゲーション・リングから僕のステータスを表示させたリナが言う。「わたしは、もう終わったよ」と付け加える。う~ん、抜け目がない。


「それならリナ、スキルポイントはステータスに回したいけど、どのくらいまでなら使える?」

「う~んとね。百までは使えるよ。それとレベルが上がった時に新しくスキルポイントが増えてるみたい」


 スキルポイントの使い過ぎで再び具合が悪くなっても困る。負担のない範囲の数値をリナが間を置かずに答えてくれた。ちなみに新たに増えた僕のスキルポイントは「1」だけだった。


「そうか。これで僕はまだまだ強くなれる」


 僕はチラリとリナを見る。僕が強くならなければならない理由。リナをもう二度と失わない。一緒に生きていく。そのために力をつけなければならない。


「それでポイントは全てステータス上昇に使う方向でいいの?」

「ああ、それで頼むよ」


 僕としては“ポイントを使って技を身に付ける”というのが今一つ、しっくりこない。身に付けるなら剣を振り、地を駆け自分のモノとしたい。

 ステータスに全振りすることについて、リナも賛成している。蒼葉光刃心月流そうはこうじんしんげつりゅうに様々なスキルの効果がある以上、基本ステータスを上げてより恩恵が得られるようにした方が建設的、との判断だ。


「それに、兄さんのステータスが上がるとわたしも強くなりやすいみたい」


 と、話すリナ。これはスキル、【ラーニング】に関係してくる。ナビゲーション・リングを起動させ説明文を表示する。


~~~~~~~~~~

・ラーニング

 成長速度上昇。

 強者の戦闘より経験値獲得、レベルアップ時のステータス上昇値増加。

 スキル、魔法を見切り習得(自身に適正のあるもののみ)

~~~~~~~~~~


 この説明にある“強者”はレベルのことではない、とするのがリナの推測。もし、強者がレベルによるのであれば、「LV1」の僕の戦闘でポンポンとレベルが上がるのはおかしい。特に手加減を解いた時、——アクセル・ウイングを駆使した戦闘時の上がり方が凄まじい。今の戦闘でリナのレベルは「15」に上がっている。


スキルポイント「1」につき、HP・MPが「5」、その他が「3」上げられる。

 僕は「100」、リナもこれまで獲得した「63」全てステータスアップにつぎ込むことにした。ステータスの隣の( )がスキルポイントで上昇させた数値となる。


~~~~~~~~~~


キョウマ・アキヅキ


種族 転生人

職業 竜魂剣士ドラグ・ソウルブレイダー


LV    4

HP  331

MP  141


STR 212  (57)

VIT 191  (54)

AGI 210  (54)

DEX 194  (57)

INT  78  (39)

MND  95  (39)

LUC 302 (300)


スキルポイント残 408


≪属性適正≫ (S~H、適正なしは「—」)

光 -

月 S

火 H

水 H

風 E

雷 F

土 H

闇 -


星 S【星竜闘衣】時、限定

全ての属性を一つに統合、統合した属性を星属性として行使可能)



≪スキル≫

・蒼葉光刃心月流 LV10

・逆鱗

・狂乱

・竜技

・ヒーロー見参!

ウォーターコール(水召喚)

・キュアウォーター

・クリーン 


≪魔法≫

・アクセル・ウイング


≪称号≫

・むっつり???

・天井知らずの限界突破者

・白銀の星竜


≪状態異常≫

【リナの加護/呪い】(キョウマには見えない)

・戦闘中にランダムでプラスの効果を得る。

・不幸体質の改善。

・異性にモテなくなる。


~~~~~~~~~~


リナ・アキヅキ


種族 転生人

職業 サポートメイド


LV   15

HP  167

MP  209

STR  41 (18)

VIT  43 (21)

AGI  62 (30)

DEX  62 (30)

INT 102 (30)

MND  93 (30)

LUC  50 (30)


スキルポイント残 0


≪属性適正≫ 

光 S

火 B

水 C

風 —

雷 C

土 —

闇 —


≪スキル≫

・ラーニング

・メイドの極意  LV  1

・応援      LV  4 UP!

・指輪待機

・情報隠蔽    LV 10(MAX)

・指輪操作    LV  7 UP!

・情報解析    LV 10(MAX)

・射撃特性    LV  6 UP!

・魔導技工師   LV  1

・分解      LV  1

・料理は愛情!

・蒼葉光刃心月流 LV 3 UP!


≪魔法≫

・フレイムショット

・アイスショット

・サンダーショット

・ヒール

・キュア


≪称号≫

・世話焼き

・分解好き


~~~~~~~~~~


うん、僕のステータスはまだちょっと微妙だ。当面はレベルアップの都度、スキルポイントを消費して強くなるのが目標かな。

 一方のリナは確実に強くなっている。ゴブリンやオーク程度で後れを取ることはないだろう。中・遠距離には“てっぽう”による射撃。近距離では“蒼葉光刃心月流”。これは化けるかもしれない。うかうかしていられないな。

 ちなみに今回、リナが元から高かったINTにポイントを振ったのは「兄さんより知力が低いみたいでイヤ」だからだ。


…………


「もう“へっぽこ”なんて言わせないんだから!」


 崩れた建物の隙間を覗き込み人がいないことを確認する。ふと、後ろからリナ声がした。振り向くと美少女メイドさんが僕に指差している。


「そんなに気にしていたのか?」

「当然だよ!女の子に向かって、そんなこと言うから兄さんはいモテない(・・・・)の!」


 グサリと突然僕の心に突き刺さる。その凶器の正体は“モテない”の一言だ。今も胸中に「モテないの!」とエコーしている。


「そっか~……だから僕はダメだったんだ」

(こんなんじゃいつまで経ってもリナと恋人同士になんてなれないよな~……)


 大きく溜息をつくと額に手を当て天を仰ぐ。下は見ない。見ると「の」の字を書いてしまいそうだ。そんな格好悪い姿は見せたくない。

 そのままの姿勢で立ち尽くしているとリナが駆け寄ってきた。視界は僕自身の手で塞いでいるので見えてはいないけど気配でわかる。どうやら心配させてしまったらしい。僕の方が先にリナの嫌がることを言ったのに、これではあまりにも情けない。


「あのね、兄さ……」

「別にモテなくても全っ然!気にしないって!むしろ気を使う必要がなくてその方がいいや」


 あえてリナの言葉を遮り、作り笑いを浮かべる僕。


「うん、そうだ。世界中の女の子にモテなくても、たった一人の好きな子と一緒になれれば僕は十分だ」


 腕を組み一人頷く僕。これで解決のはずなのにリナの表情はどこか暗く俯いている。両手でスカートを握り震えている。


「兄さん……、好きな人……、いるんだ……」

「いるよ。いなかったらわざわざ異世界(オキエス)になんて来ないさ。転生を断って、あのまま死んでた……よって、リナ。突然どうしたんだ?」


 言い終わるのを待たずして、僕はリナに詰め寄られていた。目の前に上目遣いで僕を見る。その震える瞳はとても綺麗で吸い込まれそうだ。


「それって本当……なの?」

「“それ”ってどれ?」

「兄さんに好きな人がいて……。そのために異世界(オキエス)に来た、ってとこ……」


 うん?何かおかしなことを僕は言ったのか?

 それ以上リナは何も言わず、黙ったまま僕を見つめている。その真剣さに僕も目を逸らすことができない。

 リナは僕の言葉を待っている。そんな気がして思考をフル回転させる。頭の中ではチビキャラな僕がアクセル・ウイングを全開にして猛スピードで回っていた。


——グルグル、グルグル……——


 1 僕には好きな人がいる

 2 好きな人のために僕は異世界(オキエス)に来た

 3 好きな人がいなければ転生していない

 4 僕が転生に応じた理由はリナと生きるため……


 解 僕の好きな人=リナ


 ハイ!よくできました!(まる)…… 


 ……

 …………

 ………………


 『(まる)』じゃなぁぁぁぁぁぁぁい!

 何をやっているんだ僕は!これでは遠回しに告白しているも同じじゃないか!

 落ち着け、落ち着くんだ僕。

 嘘は言っていない。僕はリナが好きだ。間違いない事実だ。どうする?このまま一気に告白するかそれとも……。


 心臓の音が鳴りやまない。今にも爆発してしまいそうな程高鳴っている。

 リナの顔をよく見る。頬が赤いどころか耳まで染まっている。お互い瞬きしてもう一度……。

 

 リナは目を閉じたまま開かない。顔を上げ、リナの唇が僕の視線上に重なる。柔らかで微かに震える口元に吸い寄せられたまま僕は目を逸らすことができない。


(キス……して……いいのか?)


 その小さな方にそっと手を置く。一瞬、ピクッとした後拒むことなく僕の背へとリナの手が回された。つま先立ちとなって、やがて僕の首元へと届く。

 僕も静かに瞼を閉じる。

 もう、言葉はいらない。

 高鳴る鼓動、震える手、全てが愛おしく感じられる。


 互いの距離が近づく。


 ……


 ドンガラガッシャーーーーーーーン!


「「っ!!!」」


 瓦礫の崩れる音により二人だけの世界から現実へと引き戻された。互いに一歩、後ろに下がる。俯き前を見ることが出来ない。


「あ~その……、なんだ……」

 言葉が見つからない僕。


「う~っ……」

 唇を引き結び涙目で僕を睨むリナ。


 登りつめた感情は行き先を失い、元凶たる瓦礫へと矛先を向ける。


「地下室の……扉?」


 崩れたことで鉄製の重そうな扉が姿を現した。いくらなんでもタイミングが良すぎる。


「って!リナ、何する気だ!」

「だっ、だってぇ~」


 扉に向けて“てっぽう”の銃口を向ける美少女メイドを何とか止める。本当は僕だって斬りかかりたい。


「リナ!生き残りがいないか見てみよう、な?」

「う~っ……」


 唸るリナの手を引き地下室へと歩を進める。ドサクサに手を繋ぐ格好となるが、それくらいはいいだろう。リナの機嫌も少しは良くなっていた。


 もちろん僕もだけど……。

お読みいただきありがとうございます。

次回、新たな人間キャラが出る予定となります。

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