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十剣の魔導師  作者: 名瀬
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第7話 「決戦は月曜日」

月曜に適正試験、火曜から授業開始し、今日はもう金曜日だ。

四度目となる昼食を、これまた四度目となる〝牛丼カフェ〟へと足を運んでいた。

〝牛丼カフェ〟というのは勿論〝ファーストカフェ〟の事で、

リオンが二日目に食べた牛丼が格別に美味であったためについた名前だ。

そして今日もこの四人で席を囲む。


「いやー、回復魔法って何で必修なんだろうねぇ。」

決まって最初に口を開くのはリオンだ。

「孤立無援の状況だって有り得る、

簡単な治癒魔法くらいは覚えておいた方がいいな。」

それを真面目に返したミラに、リオンは口をとがらせる。

「わかってるわよ、ちょっと愚痴っただけじゃんか、もう。」

「クノの回復魔法は優秀だった。」

「ありがとうゼファー君。こう見えてもヒーラー目指してますから。」

クノは一際大きな胸を揺らした、いや、胸を張った。

「・・・・・・どこ見てんの、ミラ。」

「いや、夢が詰まっているな、と・・・・・・。」

リオンのジト目から目をそらすと、見知った少女がこちらへ駆けてきた。


「・・・・・・月曜日の事、だけど。」


突然の訪問者に、他三人は固まってしまった。

それを気にもしない様子で、ユクールは話を続ける。

「一度、練習しておかない?

お互いの戦い方を知らなきゃ、逆に邪魔しちゃう可能性だってある。」

月曜日の事、とは例の模擬戦の事である。

なんでも、適正試験のある初週は受けられないらしい。

「それは構わんが・・・・・・。」

「・・・・・・?」

「二人で受けるのか?上限は四人なのだろう?」

「ん・・・・・・でも・・・・・・。」

「・・・・・・なになに、何の話?」

そこへリオンが口を挟んできた。

ミラが目配せをし、ユクールがコクリとうなずく。


「来週の月曜に訓練場で模擬戦を受けるんだ。」

「訓練場・・・・・・レベル4クリアで実戦参加出来るってアレ?」

「そうだ。」

リオンも知っていたのか、しかし、他の二人は知らないようだ。

「へー・・・・・・なんか、面白そうじゃん。」

「リオン、まさか実戦に参加したいのか?」

「そりゃそうだよ、私だってここの学生なんだから。」

まさかとは思ったが、兄譲りの好戦さだな・・・・・・。

だが、リオンと共闘するのは望ましくない。

彼女は俺の存在を疑っている節がある。

戦闘を繰り返すという事は、それだけ戦い方を見られるという事だ。


「貴方たちでは、レベル4は突破できない。」

挿絵(By みてみん)

「・・・・・・えっ?」

突然のユクールの発言に、思わず声が出たリオン。

「過去のレベル4を突破した最短記録は、二年生の四人組、それも九月。

適正試験の平均がA判定。それでも大怪我をした生徒が居た。」

「・・・・・・。」

突然の長台詞に絶句したリオンは、その意味を理解して更に絶句。

「一年生の初週で、能力が劣る上、味方の戦い方もわかっていない段階では、

レベル1すら突破は困難。これは、貴方たちのために言っている。」

淡々と言葉を続けたユクールはミラを見た。

「・・・・・・他の一年生にレベル4をパス出来るような生徒はいない。

多分、良くてレベル2。それに、実戦経験が無きゃ、訓練場は難しい。」

「・・・・・・そういえば、訓練場では誰と戦うんだ?」

そう言ったミラに、ユクールは静かに首を振った。


「誰と、じゃないよ。戦う相手は魔物。それも、強力な。」


「魔物・・・・・・?」

クノが息を飲む。

ミラの顔にも動揺が伺えた。

(魔物か・・・・・・まさか学校内でそんなものを飼っていたとは。)

しかし、ミラにとっては得意分野と言える。

人間相手だと、多少の情は湧いてしまうものだから。


「・・・・・・と、みんなすまない。

ユクール、練習の件だが、今日の放課後でいいか?」

「問題ない。」

「じゃあまた銅像の前で。場所は・・・・・・その時になってから決めるか。」

「うん、わかった。」

そう答えると、ユクールは牛丼カフェから去っていった。


そして少しの静寂が訪れた。


「・・・・・・なんか、複雑な気分・・・・・・。」

そう、ぽつりとリオンがつぶやいた。

「彼女、主席の子でしょ?信頼されてるのね・・・・・・。」

「ああ、同感だ。」

ゼファーがクノの台詞に同意を示す。

「要するに、私たちには実力がないから、入ってくるな、って事でしょ?」

「そこまで悪くは言ってないが、意味は合ってるだろうな。」

「あー、悔しい・・・・・・確かに私はCクラスだけど・・・・・・っ。」

「俺もCクラスなんだが。」

「ミラは別!私には現役軍人は倒せなかった!」

(・・・・・・やはり見ていたんだな。)

「私、その場面を見てなかったんだけど、噂は本当だったのね・・・・・・。」

クノが神妙な面持ちで二度うなずく。

「俺も訓練場には興味がある、しかし、今じゃないだろうな・・・・・・。」

かぶりを振ると、ゼファーは食事を再開した。

「・・・・・・悔しいけど、私も無理・・・・・・

実力は、自分でもわかってるつもり・・・・・・。」

諦めたのか、リオンも牛丼を口に放り込んだ。


だが、しかし。

クノの手だけは止まっていた。


「ねぇ・・・・・・回復役、必要なんじゃないかな・・・・・・?」

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