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十剣の魔導師  作者: 名瀬
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第6話 「主席の少女」

校門から真っ直ぐ五十メートルほど進んだ場所。

そこにトムニカの像が建っている。


一緒に帰る、というほどには仲良くなっていない三人に表情で会釈し、

ミラはこの場所に立っていた。

「・・・・・・すまん・・・・・・。」

ついつい出た言葉も、拾う者は無し。

何故だかフッと小さな笑みが浮かび、ミラは銅像に背を向けた。

すると、そこには一人の少女が立っていた。

挿絵(By みてみん)

「・・・・・・小柄、男子、金髪・・・・・・それに、青い目・・・・・・。

うん、間違いない・・・・・・。」

何やらつぶやいているが、そんな事よりミラは、

今の笑みを見られたのかと不安になり、冷や汗をかいた。

そして・・・・・・自分が見られている事に疑問を持った。


「貴方が・・・・・・ミラ君だね。ううん、言わなくてもわかる・・・・・・。」

一人でウンウン言う少女に何を思ったか、彼はこんな返事をした。

「・・・・・・人違いですけど。」

その言葉を聞くなり、彼女の顔はボゥッと赤くなった。

「え?あ、え、え・・・・・・?う、嘘・・・・・・?」

なんとなく悪戯心が湧いただけだったのだが、

なかなかどうして、面白い反応をしてくれる。

「もちろん嘘だ。君は?」

ムゥっと膨れた、ように見えた彼女は渋々と答える。

(あまり顔に表情が出ていない。赤くはなるようだ。)

「・・・・・・ユクール。戦士Aクラス。」

単語で話す彼女は、一瞬たりとも目線を外すことはない。


「・・・・・・どうして俺だとわかった?」

昨日の適正試験、今日の初授業。

まだ二日しか学校には来ていないのだ。

クラスメイトの事すら、覚えてられないだろうに。


「魔法Cクラスの教室を眺めて、該当するのが貴方しか居なかった。」

何についてかを聞こうとしたが、彼女は更に言葉を続けた。

「目を見て確信を持った。その目は・・・・・・戦場を知っている目。」

「・・・・・・理解に苦しむのだが。」

「噂になってる・・・・・・貴方が、軍人を負かした事。」

(・・・・・・なるほど、つまり噂を聞きつけて、やってきた訳だ。)

「私は、強い人と、パーティを組みたい。」

そう言うと彼女は一歩二歩と、ミラへと歩み寄ってきた。


「・・・・・・訓練場の事は、知っている?」

声のボリュームが少し下がった。

「いや?」

「この学校ではレベル1~5の模擬戦が受けられる。勿論、1から順番に。

そして、その戦闘は、4人までならパーティを組んで挑める。」

「・・・・・・俺と組みたいと?」

「そう。」

「・・・・・・その模擬戦とやらに出たい理由は何だ?」

「レベル4をパスすると、実戦に出る許可が貰える。」

「・・・・・・。」

(つまりは実戦に出たいという事か。)

「・・・・・・私、元々実戦には何回か出た事がある。

それを勉強のため、世間体のためと、この学校に入った。

でも、私が・・・・・・私程度が主席じゃ、勉強になるとは思えない。」

「・・・・・・そうとも限らんぞ。

実戦も大事だが、知識として学ぶことも大切だ。」

「わかってる。もちろん、知らない事もいっぱいある。自覚、してる。

でも・・・・・・実戦に出たら私なんか、全然役に立たない。

その私が、主席。私は・・・・・・もっと強くなりたい。」


すばらしい向上心ではあるが、何をそんなに焦っているのだろうか。

まだ高校一年生だというのに・・・・・・とミラは思ったが、

口には出さないでおいた。


「訓練場のパーティの件は・・・・・・別に構わない。

ただ、俺が足を引っ張る可能性もある。

なんせ俺は、魔法科目三つがE判定なのだからな。」

自虐的に笑って見せるが。

「・・・・・・ううん、貴方は強い。

その目、他の生徒には到底真似の出来ないような強さを感じる。」

彼女はそう、断定してみせた。


トムニカ愛用の武器「一芯いっしん」。

これをその内・・・・・・いや、近い内・・・・・・いつか、使うかもしれないな。

研究所に戻ったミラは、魔法の適正結果を思い出しながら、その杖を握っていた。

「ミラ、戻ったのかねぇ。」

相変わらずマイペースな男は、何やら紙束を持ってミラの元へやってきた。


「・・・・・・何だこれ?」

手渡された紙に目を通す。

「地図だよ、君の家のね。」

「?」

(俺の家はここよりずっと遠い場所にあるのだが・・・・・・。)

「家庭訪問もないとは言えんだろう。それに友達だって呼ぶかもしれん。

それは君が高校生のあいだ生活で使う家だ。」

「なるほど・・・・・・。」

正直、マンションでも良かった気がする。

何だこの・・・・・・無駄にでかい一軒家は・・・・・・。

「地下にトレーニングスペースを設けた。魔法完全無効化結界。

思う存分に魔法を鍛える事が出来るぞ。」

「・・・・・・カガミ・・・・・・。」

そんな事までしてくれていたのか、と。

彼は柄にも無く、涙が出そうになった。

「勿論、君のお金で買ったんだがねぇ。」

気がしただけだった。

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