大空へ!
目の前に、真っ直ぐに延びる滑走路。
その先に広がる晴れ渡った空。
磨き上げられたキャノピーを通して、頭上高く昇った太陽の光が操縦桿を握る手元を照らす。
計器の最終チェックは完了。出力を最小限に絞ったエンジンは、離陸の時を待って掠れたような甲高い音を発している。
管制塔から無線が入る。
『エンジョイ15フライト、風は静穏、離陸許可する』
「離陸許可、了解」
管制承認を復唱し、横に並んだ僚機を見やる。
こちらを窺い指示を待つのは若いウイングマン――俺はひと声、気合をかけた。
「いいか、しっかり俺について来いよ!」
『はい!』
離陸の合図とともにスロットルを押し出す。
急激に高まるエンジン音。ブレーキの解かれたF-15は圧倒的なパワーに押し出され、轟音を響かせて加速してゆく。
体に僅かな圧迫を感じると同時に機体が浮き、滑走路を離れる。緑鮮やかな草地の間に見える駐機場や誘導路、そして基地の姿は背後へと、眼下へと流れてみるみる遠ざかり、森や田畑が目立つ地上の景色の中に紛れてゆく。
ところどころに浮かぶ雲が陽の光に輝いている。その間を突き抜けると、キャノピーの外に広がるのはもう、透き通った青い空だけだ。
どこまでも高く、果てしなく続く空――。
俺たちは日々、この広い空へと向かう。
多くの人に支えられて。
夢を叶えたその先にある、大きな使命を果たすために――この国と、この国に暮らす全ての人の平穏な日常を守るために。
人々の営みが、これまでと同じように、これからもずっと変わることなく続いていくように。
ただそれだけを願って。
そして今日もまた――大空へ!!
<完>