第三話
主様の呼ぶ声で、強制的に闇の神龍殿が落ちて来た。
…あれは飛んで来たと言うより、此の表現が正しいだろう。
何も無い空間から現れ、文字通り下へ落下したのだからな。然も、少々痛そうだ。
嗚呼、何も知らずに主様へ、文句を言って居られる…おや?炎の神龍殿に、諌められたか。然も、珍しく炎の神龍殿が、正論を言っておられる。
あの方は、炎の気を持つが故、かなり明るく能天気…否、感情で行動されるからな……まあ、真実だから、此れは当たり前か。
おや?主様が微笑まれた。何と御美しい…流石、主様。
神龍の方々の視線が、釘付けに為っておる…当たり前じゃ。
主様の美しさに勝てる者等、居ないのだからな。
そして…主様が真相を明らかにされ、其の御姿を元の、光の御姿へと御変えに為られた。やはり、主様の御姿は、此れに限る。
此の御姿が、一番御美しい。
纏われる気も、我が王の気と神の気…。
流石、我が主様、神龍の方々も納得された…。ほんに、嬉しそうで何よりだ
そんな事を思っていると、銀蛇達が在るべき姿へと還って行った。
銀色の指輪…彼等は、主様を護る為に存在する、銀蛇。
常に主様の傍にいて、主様を護る…其の必要が有るかは、此の際考えないで置くが、彼等の役目は、神龍の方々の不在時に主様と共に戦う事と、主様が力の回復の為に眠りに着くと、其れを護る役目…だった様な……。
まあ、其れは如何でも良い。
今は、主様と思に居られる事が、我等の喜びで有り、念願で有ったのだからな。
感慨に耽っていると、此の国の王と、神官殿…大神官補佐の方か…が主様と会っておられる。主様と声を交わし、場所を移られた。
ん??此方も神殿の様だが…上の物とは違い、其処等に在る物と同じ様式の様だ…?もう一つ、祭壇が在ると言う事は…此処はルシム・シーラ・ファームリアか!!
通りで、神聖な気に満ち溢れていると思ったら…。
然うか、此の七神の祝福を持つ幼子の行く先は…此処だったのかもしれんな。
我の我儘で此れ以上、迷惑を掛け無くて済んだ様だ。
こんな事を思っていると、主様とルシフの方々の話が始まっていた。
彼等の願いは、あの黒き髪の王の事。
神以外の、人型が取れる者達では、もう、立ち向かえない事を主様へ伝える。
然も有らん、あれは主様では無いと、打ち負かす事が出来ぬ存在。
邪悪を其の身に纏い、主様の様に、目覚める事の無かった存在だからな……。
主様以外の神龍王に成り損無いは、沢山存在する故、其の者が世界の厄災と為れば、主様と神龍の方々以外での、討伐は無理だ。
……七神の方々で、守護神の方なら、まだ太刀打ち出来るか。
だが、あの方々でさえ、完全に滅ぼす事は容易で無いかもしれん。主様の様に、何事も無に帰す事の出来る御方で無いと、強い邪気には対抗出来無いからな…。
我が然う考えていると、主様の声が聞こえた。
「判った。ルシフの王並びに、大神官、その願い聞き届けた。と、言いたい所だが、既にこの件は、我の預かりとなっている。
黒き髪の王に関する件は、七神によって我に託された。故に、この度、神龍を呼び出した。暫くの間、迷惑を掛けるやもしれんが、宜しく頼む。」
…其れでこそ、主様。
既に、あ奴と対抗する許可を、七神の方々から得て居られる等、ほんに我が主に相応しい御方だ。
闇の神龍殿が、真相を聞かれておる。
ほほお、三週間前には、主様が動かれていたのか…やはり、主様は、神龍王に相応しい御方、主様が目覚められて、本当に良かった。
…闇の神龍殿、言葉遣いを光の神龍殿に注意されて、張り手を喰らっておられる…まあ、判らぬでも無いが、光の神龍殿も、容赦無いのう。
まあ、此の事で、闇の神龍殿も納得された様だし…
「リシェアオーガ様、我等神龍に、何なりとご命令を。」
との台詞…他の神龍殿の失笑を買っておられるが、今までの事を振り返ると、致したか無いだろうな……。
話が一段落した様で、主様が今後の事と、幼子の事を話しておられる。
我が迷惑を掛けた其の童は、此の国で暮らす事が決まった様だ。
親御殿は既に居らず、童も新しい親御は欲しくないと言っておる。
其れを聞いた神官殿が、困惑すると思ったが、大神官殿が引き取る事と為った。
親御殿では無く、祖父殿として其の子を育てる様だ。
我が巻き込んだ此の童…幼子の行く末も、善き事に為る事を祈ろうか。
色々有って、主様が部屋へ帰られた様だ。
そして、今、主様が着替えを為さって居られる。怪我が治っておられる事に、気が付き、嬉しそうだ。
我が力の解放した時、主様の怪我も同時に治していたから、当たり前なのだが。
此れであ奴と戦えると、主様は思っておられる。
いやはや、御目覚めになられた主様は、王に相応しいと思われる言動ばかりで、我も嬉しい。然う思っていると、不思議な気配をこの部屋で感じる。
主様の傍に…あの七神の御一人の気配??否、然うでは無い、七神の御一人、主様の御父君の気配を纏う物が、主様の傍に居る。
何者かと思うと…白く輝く楽器が見える。
確か…光の竪琴と呼ばれる物が在ると、聞いた事が有る。
其れが何故、主様の傍に居るのか?
あの光の御方から、主様を護る様、言い遣っておるのか?
我の疑問を余所に、主様は着替えを終えられ、大地の神龍殿と光の神龍殿、光の精霊騎士殿と龍馬殿と共に、部屋を出られた。
先程の気配は…此の部屋に残っているが、我の存在に気付かなった様だ。
まあ、主様と我の気配が同じなので、仕方無い事なのだが…。
…おや、主様の御姿に、光の精霊騎士殿と龍馬殿が見惚れておる。
無理も無い、主様はこの衣装に着替えられて、一段と御美しく為られているからな。
今、部屋に来られた、先程の大神官補佐殿も同じく、見惚れておる。
主様も、罪作りな御人だ…だが、主様の御美しさでは、納得出来るな。
かなり賑やかな御仁も来た様だが…大神官補佐殿と、主様に諭されておる。
…確かに、冷静さを養った方が良い、御仁だったな。