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第一話

今回から、新しい話になります。

 我は大いなる神・エルムエストム・ルシムの手により、作られし物。

かの神から離れし邪悪なるモノを、滅ぼす為の力を与えられ、神龍王という者と共に、()の敵を倒す役目を頂いた。(しか)し……創られてから、幾層の時が流れたが、一向に我が主様(ぬしさま)は現れてくれなかった。

邪悪な気配が何度現れようと、我が(ぬし)たる神龍王は、目覚めてくれない。

新たに現れた邪悪は、大いなる神から生まれた初めの七神であり、守護神である方々と神龍達で葬られている様だ。其の為、大いなる神から離れたモノでは無いと判るが、我は気が気では無かった。

何時(いつ)、何時、あの者達の封印が解かれ、()の世界が(おびや)かされると思うと、傍にいる銀蛇達と一緒に、不安に駆られる。

我と同じく大いなる神から創られ、今は、我の守護に当っている彼等と共に、王の出現を待つしか出来無ぬ。

其れがもどかしく、()つ、辛い。

此の世界が邪気に脅かされていると思うと、居ても立っても居られないからだ。

其れは、共居る彼等も同じ。

自分達の王を待ち侘び、その王の為だけに、己が力を使いたいと願っている。

其の為には、王が目覚め、我を求めて此処(ここ)を訪れるのを待つしか無い。



 何時もと同じ思案を何百回、何千回と繰り返した時、初めて変化が起こった。

小さな子供が、我が(ぬし)以外に来れない此の場所へ、迷い込んだのだ。

戦に巻き込まれた様な、服と言い(がた)いボロボロの布を身に着け、彼方此方(あちらこちら)に傷と血を滲ませ、汚れきった人間の幼子(おさなご)

此処へ来れたという事は、我の主かと思われたが、其の容姿、纏う気配は我に、主で無い事を教える。

何故(なにゆえ)、外に有る結界を抜けて此処に来れたのか、不思議に思っていると、幼子が我に向かって手を伸ばした。

「これが…おじさんたちが言ってた…もの?

これなら、あの黒き王を…たおせるの?」

そう言って、我を手にしたが、我に従う意思は無い。

拒絶をしようとしたが、何故か出来無かった。

否、しなかったとも言える。

子供が我を手にした時、主の気配を感じてしまったのだ。

無論、目の前の幼子からでは無く、別の場所。

然し銀蛇達と違い、人型の取れない我では、此処を離れられぬ。

幾多の結界に包まれた此処では、我が主様の処へ飛ぶ事すら儘ならない故に、この幼子を利用して、主様の処へ向かうしかないと考える。

我を護っている銀蛇達には悪いが、主様の気配が弱々しい故、その方法を取るしか、(すべ)が無い。そう思い、手を伸ばす幼子に我が身を預ける。

我を手にした幼子は、嬉しそうに何かを呟き、此の多く重なった結界を諸共せず、出て行く。其の事を不思議に思ったが、此の幼子から別の気配…七神の祝福の様な物を感じて、理解した。

神々の祝福が有る者なら、あの結界を(くぐ)れるのも納得出来る。

あれは大いなる神が、我等の為に施した物。

目覚めの無い神龍王が、我を手にしない為の物。

其の結界を抜けると、銀蛇達が侵入した幼子に、我が奪われた事を知ったらしい。

「そこな子供、それを此処からそれを持ち出す事、(まか)りならん!!」

「その剣は、貴方のような子供が扱える者ではありません。

悪い事は言いません、今、此処で返しなさい!」

二人の銀蛇の怒りの声に、我は焦る。

此処で結界へ戻ると、主様と会えない。

銀蛇の声を無視し、意を決して主様の気配を辿り、其処(そこ)へ飛ぶ。

我を手にしている幼子には悪いが、我には主様の許へ行く事が優先だった。

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