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第三話

途中で口調が、がらりと一変しますが、後々理由を明らかにしますので、気にしないで下さいね。

 何日か後、何かが動く気配と共に、声が聞こえた。それは、新しい主の物だった。

「帰って…来たのか…。」

たった一言の、短い言葉だったが、私の一番欲しかった物だ。その声に、聖獣は気付かなかったが、主が聖獣の頭を撫で始めると、私は不機嫌になる。

まあ、聖獣の方が主に近いので、仕方の無い事だったが、私も構って欲しかった。

その行為に聖獣が気付き、騒ぎ立てるが、主に頭を叩かれていて、つい、いい気味だと思ってしまう。

散々、主に撫でて貰ったのだから、それ位我慢しろと言いたい。嫉妬に似た感情で見ていた私の前を、声を聞き付けた光の精霊が通る。

心配そうに主を見る精霊に、主は声を掛けていた。そして、主は寝台からゆっくりと降り、服を着替えようとしている。

その主に精霊が新しい服を被せ、抱き上げて連れて行ってしまった。行先は、主の言葉が聞こえたので、判っている。

「神殿に…最も尊き、高き神殿に…。」

そう、主の声は告げた。

この国にある神殿へ、主は精霊に運ばれ、向かったらしい。

主が死の淵から帰って来た事を喜んでいると、今度は主が向かった方角から、多数の気配がして来た。見知らぬ物が三つ、良く知っている物が六つ。

知っているのは、神龍と言う者達のそれ。

七神の傍にいた頃に、感じた覚えのある物。

それと…何故か、主の気配が変わっている。

絆は切れていないので、主の物のだとは判るが、今まで感じていた木々の精霊の気配が無くなり、感じた事の無い物になっている。

如いて言えば、神龍の物と似ているが、違うようにも感じる…そうか…様々な属性を感じれて、尚且つ、偏っていないのだ。

何かの気配と共に、強い光と大地の気…神子の気配と、…神の気配なのだろうか?

主は神の役目を持っている故…持っていても可笑しくないのだが、三種類もの気配を、同時に持っている事を不思議に思う。

神と神子の気配を、主が持つのは判る。

神子である以上、神としての役目を得ても、その気配は残る。しかし、もう一つの全ての属性を持ち、偏っていない気配は何なのだろう。

そんな事を考えている時に、見知っている二つの気配が、この部屋に訪れた。一人はあの方の許にいた気配、もう一人は、あの方の妻である神の許にいた気配。

確か…光の神龍の方と、大地の神龍の方だったと思う…そんな呼び名いや、あの方々は、黄龍(こうりゅう)翆龍(すいりゅう)と呼んでいた気がする…。

その金髪と緑髪の神龍の方が、何やら準備を始めている。

……主の新しい服を用意しているらしい。

白地に黒い縁取りのあるそれは、龍達が来ている物と色違いに見える。

ん?色違いの騎士服?何故、神龍の服を、主が着なければならないのだ?

主が着るべき服は、神の装いでは無いのか??

私の疑問を知らない龍の方々は、用意を終え、主を待っている様だ。

ああ、主の気配が近付いている…漸く部屋に戻ったらしい主を、この方々が迎え…る…???

主?主の気配…だよね…?絆は繋がっているし…?

だけど…この姿は……あの方?あ…いや、線が細いし、御髪が長いし…背も…言っては何だが、主は低い…光の精霊の胸位しか…無い………・。

あ・る・じ・ですよね……髪の色が光髪でも、瞳の色が空の色でも…これは主だよね…ええええええええええ~~~~~~!

主、思いっ切り、光の神子じゃあないですか!!!

あの色は何だったんですか~~~~~。

尋ねたいが、この姿では尋ねられない。もどかしいが、主以外がいる前では、人型を取りたくない!!

えっ?我等が王?神龍の方々、今なんて?

我が王と?…そ・それじゃあ、主は…神龍の王?!

………………………………………………………はっ、混乱していたようです。

ええっと、主の事を整理してみますね。

先ず、主は、あの方の神子。

これは今の姿からして、間違い無いですね。

で、主は、神の役目を持つ。

これは主が名乗った名から、判ります。

加えて、主は神龍の王。

今の神龍達や聖獣、精霊の言葉から判断すると、そうなりますね。…そう言えば、神龍王の姿は、あの方と同じ特徴になると、聞いた事があります……。

主…貴方は、どれだけ忙しい方になるおつもりですか~~~。神の役目と、神龍王の役目を兼ね備えるなんて~~~。

そう言えば、主の名のファムエリシルって、意味は何でしたっけ?

後で、対の物にでも訊いてみましょうか?

あれ?主様の手に、見た事も無い指輪が、填まっているのですが…ん???先程感じた気がありますね。

…銀色の蛇…ああ、大いなる神が創られた、神龍王の保護しゃ…いや、守護者達ですか。そうか、初めの見知らぬ気配の二つは、彼等だったですね。

あと一人は人間だったから、問題無いし、関係も無いです。

でも、此奴等…主の一番近くに居るなんて、う・羨ましい。


おや、煩いのが来たみたいです。

何時もの如く、大きな声で、色々な馬鹿を仕出かしましたね~。

今度は主の姿で、何かをやったみたいですよ。

興味が無いから、聞いていませんが、相変わらずの慌て振りで。此奴も、私に挑みましたね…まあ、無理でしたが。

主が彼等と共に、部屋を出て行き、私はまた一人になりました。主の変った姿を思い出し、その美しさに絶賛していると、主からの呼び声が聞こえます。

『我が竪琴、ジェスリム・ハーヴァナムよ。我が前に、その姿を現せ。』

何事かと思いながら、その声に応じますと、この国の重鎮たる面子と、神龍達、聖獣と精霊が集っています。

主の腕に抱かれ、試弾きをされました。勿論音は、私の本当の音色。

光を纏う音色に、この国の騎士らしき者が、納得した顔になったのですが…?

…そうか、主の姿が変わったから、本人か、如何か、判らなかったのですか。

まあ、仕方無いでしょう、絆が無いのなら、余計に判らないですからね。しかし…前の姿でも、今の姿でも、主はお美しいです。

そう思っていると、私は聖獣に預けられ、主が手にしている剣を抜かれました。ん?主、何時の間にか、剣が、違っているのですが…。

前の剣は、主が怪我を負った時に、その気配が半減していたようですが…でも、この剣は…主の気配と同じ??

だから、今まで判らなかったですか…。おや、剣の刀身の彩が変わって行く。

『そうだ、我は神龍王の剣・ルシム・ラムザ・シュアエリエム・シェナムと申す。

初めて御目に掛る、我と(ぬし)を同じくする光の竪琴・ジェスリム・ハーヴァナム殿、今後とも宜しく。』

『初めまして、神龍王の剣・ルシム・ラムザ・シュアエリエム・シェナム殿。

こちらこそ、宜しくお願いします。…え?貴方も、意思をお持ちで??』

嗚呼(ああ)、我は、大いなる神に創られし物。

貴殿と同じく、神々の御業と言われる物。残念ながら、姿は変えられぬし、主様(ぬしさま)とも話が出来無い。だが、同じ御業の物とは、会話が出来る。

…貴殿が羨ましい、主様と話せる様だからな。』

挨拶と共に、簡単に会話をする私達を余所に、主達の話が進んでいます。関係の無い話の為、無視をしていると、再び剣から話し掛けられました。

『竪琴殿、主様の、心の支えに()って貰えぬか?我では主様と共に戦えても、心の平穏を与えられない。

貴殿なら、主様に平穏を与えられる。主様は心優しき御方故、貴殿の様な方に、傍に居て貰いたい。』

『判りました。私からも、お願いがあります。

貴方には、私の分まで主と共に戦い、(あるじ)を護って頂きたいのです。私に主を護る術は有りますが、戦う術は無いに等しいのですから、貴方に頼めますか?』

『承知した。

時には、貴殿の護りの力を借りるやもしれんが、其れでも宜しいか?』

『私は、主の御心のままに従うまでです。

主が望むなら、私に何の(こだわ)りも有りません。』

()うか、我等の唯一の拘りは、(ぬし)が誰で在るかだけで有って、主様の意向に沿う事が、我等の望みなのだな。』

会話が終わり、辺りを確認しますと、此方(こちら)も終わったらしく、神龍達が何処かへ行っては、直ぐに主の許へ帰って来てます。

剣曰く、この国の結界を強化しているとの事ですが、主の命ならば納得します。主は、この国を気に入っているらしく、護る気でいる様ですね。

……姿が似ておられるとは言え、此処まであの方に似ているとは…血の繋がりとは、奇妙な物だなと思いますよ。

等と考えていると、光の精霊の言葉が聞こえて来ました。

「神龍の方々…貴方々の永年(ながねん)の念願が叶い、漸く、真の主の許に集えた事を、御祝い申し上げます。

…特に黄龍、同じ光の属性の者として、永年の知己の者として、貴女の望みが叶った事は、私も嬉しいですよ。」

これを皮切りに、神龍達が主に抱き付かれています…ちょっと…羨ましいですね。でも、先程の精霊の言葉を思い出すと、納得します。

彼等もまた、王という名の主を待っていたのですね……私と同じだったのですか…

…まあ、彼等の主も、私の主も同じ神なのですが………この際、それは気にしないでおきましょう。

それだけ主は、魅力的なお方…あ…いや、その…こ・これでは、主自慢になってしまうのではないですか!

ん?何だか、剣殿の頷きの声と、対の笑い声が聞こえる気がしますが…無視しておこうっと。う~ん、今の主には、調子を狂わされます…。

あの方の時は……同じだったかもしれませんが、忘れました。

もう、あの方の事は、如何でも良くなっています。

今の主が、私の全てになっている様です。

でも、それで良いのです、私は神に創られし御業の物。

主だけが、私を奏でる事が出来る、お方なのですから。 

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