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叶わぬ恋なら終わりにしよう
僕は足音が聞こえたら水面に顔をだすようになった
彼女に会うために
最初は他の連中と同様、ただパン欲しさに彼女に近付いた
彼女は毎日、池にやってきた
僕は彼女に会うたびに彼女をいとおしく思った
パンをちぎっては丸めて池に落とす彼女の姿
時おりみせる笑顔
もうパンなんてどうでもよかった
僕は恋におちていた
わかっているさ 叶わぬ恋だということぐらい
わかっているさ 彼女がパンをくれるのはただの暇潰しだということぐらい
所詮僕はただの鯉
どんなに願おうと人間にはなれないのだ
もう終わりにしよう
その日から僕は、彼女がきても池のまん中でじっとしていた
次の日もその次の日も
彼女は相変わらずパンを鯉にあげていた
ある日、彼女はいきなり食パンを丸ごと一枚投げて、そのまま走り去ってしまった
その日以来、彼女は池にこなくなった
彼女が最後に投げたパンは少ししょっぱかった