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ツインズバインド  作者: クダラレイタロウ
第三章・笑美
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まとまる

結果を言えば、宇賀神さんは一度も私に手出しをしなかったし、きちんと自立もさせてくれた。


蓄えがある程度できたタイミングで、私は彼の部屋を出た。

当然、不動産のチラシを破られることは無かったし、どころか彼は、部屋探しをアドバイスも交えて、甲斐甲斐しくサポートしてくれた。

予定していたよりだいぶ遅くなったけど、私はようやく一人暮らしができた。

あ、最初は寛軌先輩がいたから、別に一人暮らしを目指してた訳じゃなかったんだっけか。

寛軌先輩とか、久しぶりに思い出した気がする。もう季節は春だから、高校は卒業した? それともあの調子だとダブったかもなあ。もう別に、どうでもいいけど。

漉磯先輩にしても、宇賀神さんにしても、一部屋の中の一室を借りていたような状態だったから、水回りが自分一人の為だけに使えると言うだけで、嬉しかった。


て言うか、きちんと独り立ちできたんだ、私。


そう思うとたまらない気持ちになって、ベランダから実家の方向に向かって「ざまあみろ!」と叫んだ。

当然、近所から苦情が来て、超恥ずかしくって、謝る時はめっちゃ顔が熱くなった。


場所は結局、宇賀神さんの部屋からかなり実は近い。るんに電話してからは、必要以上に宇賀神さんに怯えることは無くなった。

お世話になる恩義が降り募り、信頼度が増さざるを得なかった一方で、膨らんでいく想いがあった。


ふと背の高い彼を見上げると、るんとはまた違う安心感がそこに生まれていた。

まだ漉磯先輩とのことで怯えていた時のことを思い出す。

頼りがいのある彼を見て、思ったこと。漉磯先輩のことが無かったら、好きになってたかも知れない。

あの時、私は確かにそう思った。一度思い当たってしまうと、やっぱりダメだった。

既に私は、宇賀神さんのことがどうしようもなく好きになっていた。

ライブで寛軌先輩と並んで『三日月サンセット』を聴いた時の気持ちが、久しぶりに蘇る。

あの曲が収録されてるのは、『GO TO THE FUTURE』って言うミニアルバムだったよね。

CDは家に置いてきちゃってるし、タワレコに今度、買い直しに行こうかな。


窓を開けると(叫ぶためじゃないから! もうしない、もうしないよ)、春風が吹きこんできた。

家を出て、もう半年と少し。半年でここまで来れたのなら、上出来じゃないだろうか。

私を支えてくれた宇賀神さんと、るんに心の底から感謝した。



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