プロローグ
これを期に上達していけたらいいなと思っています。アドバイスや感想等を頂けると嬉しいです。
目の前で展開されている出来事は、およそ現実とは思えなかった。
「第二班、砲撃! 第一班は後方で援護!」
弾ける銃声。耳をつんざく悲鳴。火薬と血の匂いが漂う。それと、鼻に付く獣臭い臭いも。
名栗蒼甫は呆然とそれを眺めていた。
十数人の武装集団が、二階建ての建造物くらい強大な、しかもイソギンチャクのような触手を大量に生やした怪物を取り囲み、機関銃というのか、取り敢えず本物の銃で集中砲火している。
これは夢ではないのか。気を落ち着けるためについひらいた携帯電話のディスプレイには二十三時七分と表示されていた。日付も狂っていない。さらに辺りを見渡しても、野次馬達が数人いるだけで異世界という訳ではなく普段通りの地元の商店街。蒼甫は取り敢えず携帯電話付属のビデオを起動した。後でSNSサイトにでも上げようと鼻息を荒くしながら。
「撃ち方止め! 行け、アラヒト!」
銃撃戦の後ろで指揮を執っていたリーダー格の男がそう叫ぶと、野次馬集団の背後から一つの塊が飛び出してきた。街灯に照らされたそれは、全身闇に溶ける漆黒の防具を装着した人間だった。
「おおおおおおおおおおお!」
低い雄叫びを上げながら、それは怪物に突っ込んでいく。既に銃撃で弱っている怪物は、最後の抵抗と言わんばかりに触手を振り回す。人間だろうが建物だろうがお構い無しに破壊しようとするそれを黒いソイツは華麗にかわし、一瞬で懐に潜り込んだ。
「らああああああああああ!」
そして、勢いそのままモンスターに右拳を突き立てる。砲弾のようにに放たれた右拳は、そのままモンスターの腹部を貫通する。体液が飛び散る生々しい音と、怪物の断末魔の叫びが夜の商店街に響き渡る。
少し間を置き、どっと歓声があがった。野次馬達はその場で起きた不可思議な出来事に、ただ訳も分からず興奮していた。武装集団も安堵した様子でお互いにハイタッチを交わしていた。
「まだだっ!」
喧騒の中でもはっきり響いたその声が、全員の行動を止める一瞬前だった。蒼甫が見ていたのは携帯電話の画面。その画面に向かって何かが飛んでくる。そしてあっと言う間もなく、世界は暗転した。