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1人では戦えない僕と、仲間達  作者: アッキ@瓶の蓋。
第四部 戦火

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71/80

1.苦肉策

 ヒュペリヒトに帰還しても僕の気持ちは晴れなかった。そもそも当初の目的はエンチャッターでは戦えないから、僕でも出来る、戦える職業(ジョブ)になるためにナル―ニャ山中腹にある職業紹介所であるソーマリルへと向かって行こうとしたのだ。でもこのソーマリルは僕が行った時には既に無かった。

 魔女帝国の合成魔物(キメラ)の1匹、『青鴉』ことブルー・クロウによってそいつは木っ端微塵に壊されていた。もう僕に紹介して貰えるとは思えないほど、無残に破壊されたソーマリルを見てがっかりした僕はヒュペリヒトへと帰った。



 ギルド、『神籠(しんそう)』はヒュペリヒトにあるギルドの1つで、僕を助けてくれたり、僕にソーマリルの事を教えてくれたりととても優しいギルドで、僕と一緒に冒険していたハーフエルフのネフィー・パルジャや一時期王都へと行く間回復役を引き受けてくれたイスカ・セトドラちゃんも居る。ちなみに街の人達の噂などを聞いていると、どうやらそんな『神籠』には新たに新入隊員が入ったらしい。

 確かエレニア・アストレアと言う名前でしたっけ? 剣の腕が凄い人らしいですけど、僕にはどうでも良い事でした。



 折角、紹介して貰えたのにろくに良い功績、いやソーマリルがなくなると言う防ぐ事が出来なかったのだ。きっと『神籠』のセベア・パイグスさんはそんな事は関係ないと言うかもしれません。だとしても、もし僕が早くにソーマリルへと辿り着いていたら状況が変わっていたのかもしれない。そんなほんのちょっとの罪悪感と、エンチャッターのままの自分を見せるのが恥ずかしいと言う理由で僕は『神籠』に帰れないでいた。



「ふぅ……。我ながら情けない」



 いくら『神籠』に入りづらいからと言って、わざわざ近くの宿屋を借りるのは少々やりすぎだったかな? これだったら『神籠』で無料で泊まった方が安く住むと言う物である。そんな事が出来ないのが僕の弱さと言う所だろうか?



「お待たせしましたデス。我が主」



 はぁー、と溜め息を吐きながらそんな事を思っていると扉をあけて1人の女性が帰って来た。

 クルス・ウルウスから貰った宝剣、ミスロスである。今では僕の事を「我が主」と慕っているが、どこまでが本当でどこからが嘘なのかが分からない。なんとも謎な奴である。



 そんなミスロスにはちょっとした頼み事をしていた。勿論、ミスロスにしか出来ない――――――いや僕が出来ない事である。



「『ヒストロリアに行ったっきりの『神籠』のメンバーを救助して欲しい』。お望みどおりのナル―ニャ山へ行く際にソーマリルへと間違って行くだろう場所にある、誰でも受けられる依頼(ミッション)デス」



「あぁ、ありがとう。助かったよ」



 ミスロスに頼んだのは、『神籠』に行ってミッションを取って来てもらう事。勿論、どんな物でも良いと言う訳では無く、ちゃんと条件も指定した。



 1つ、ナル―ニャ山から行く道筋にある事。

 1つ、誰でも受けられるミッションである事。

 この2つである。



 つまり僕は、『間違えてソーマリルではない所に行ってしまい、たまたま見たミッションをクリアした』と言う体を装う事にしたのである。

 ミッションとは、ギルドで配布される依頼の事。ミッションには主に2種類に分類される。1つは誰でも受けられるミッション、もう1つはギルドメンバーやそれなりに実力を認められた人しか駄目なミッション。僕が頼んだのはその前者の方である。



 ナル―ニャ山には中腹にあるソーマリルだけでなく、様々な別の場所も存在する。つまりあの山はソーマリルだけでなく、他にも冒険者が行くための迷宮(ダンジョン)などがある。それがヒストロリアなのである。

 つまり僕のシナリオはこうだ。僕は頑張ってソーマリルへと行っていたが、その途中で道に迷い、ヒストロリアへと行ってしまう。その途中で僕はたまたま偶然に『神籠』で見ていたミッションの事を思い出して、そのミッションを達成する。



 そしてミッションを達成して『神籠』に堂々と帰る。

 これが僕の考えた策である。



「……なんともまぁ、酷い策です」



「すみませんね。男はどうも見栄っ張りな生き物なんだよ」



 今の状況で帰ったとしても、そこまで怒られはしないだろう。むしろ同情されたりするかも知れない。だけどそれでは僕は、こんな僕を慕ってくれているネフィーに申し訳が立たない。だからこそ僕は、何かを達成した形で僕は『神籠』に帰りたい。



「……まぁ、良いデス。我が主がそこまで仰るのならば、致し方ありませんデス。ではこのミッションをクリアして、大手を振って帰る事にしましょうデス」




「―――――――あぁ、うん。そう……だね」




 そして僕はその日は休んで次の日にそのミッションを達成する事に全力を尽くそう。僕はそう決めて、ゆっくりと休むのであった。

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