6.酒場
武器屋からネフィー用の銃弾を多めに見積もって40発ほど買い占めた僕は、その足で酒場へと足を運んでいた。明日の船の便と旅館はネフィーが、そして食物と回復用アイテムはクレイノスの方で調達してくれると言っていた。しかし、そう上手く行くとは思っていない。
特にネフィーがそう上手く行くとは思っていない。クレイノスは買いすぎはあるだろうがおおむね買えるとしても、人間に置いてはエルフに激しい嫌悪感を抱いている者も少なからずいる。船の便は無いにしても、もしも旅館が異種族であるエルフを嫌っている人が居たら下手したら止まれなくなる。
故に僕は酒場へと足を運んだのであった。おおむね、酒場と言うのは余程の事が無い限りは、異種族の受け入れをしている旅館になっているケースが多い。
僕はそう思い、この酒場に泊めてもらえるかを聞きに来たのであった。
「いらっしゃーい! 酒場、『ウミネコの餌場』へようこそー!」
中に入ると、ウエイトレス姿の金色の短髪の可愛らしい娘さんが出てそう言って来る。
僕は軽く挨拶をして、空いているカウンター席に座る。
目の前で優しげな微笑みをしているマスターが話しかけてくる。
「いらっしゃい、お客さん。お1人様かい?」
「あぁ、連れも居るが今は別れて行動中でね。グレープジュースを貰えるかい?」
僕がそう言うと、マスターはグレープジュースを僕に渡してくれた。1杯、口にする。
「ところでマスター。もしかしたら夜にお世話になるかも知れないから、いくつ部屋があるか聞きたいんだが」
「おっ、お客さんは旅の人かい? どこまで?」
「友人に連れられて王都にね。何をするかはさっぱり分からん」
と、半ば呆れたように言って、グレープジュースを口に含む。
「ほぅ、王都に。そりゃ景気の良い話で。観光かい?」
「さぁね。どっちにしても、その前に森越えをしないといけないだろ?
うちのパーティー、ヒーラーとかの回復役が居なくてさ。夜は遠慮したい訳でして」
「まぁ、確かに夜のあの辺は物騒だな。しかし最近では、昼間も厄介な魔物が居るらしく危ないぞ」
「それが本当なら、生き残るのは連れの2人だよ……」
なにせエンチャッターに戦闘能力は無い。2人に比べたら、僕はせいぜい足止めくらいしか出来ないただのがらくただ。2人がもし苦戦してたら、真っ先に捨てられて死ぬのがオチだろう。
そんな自身の悪い結末の事を考えていると、
「……だったらお客さん? 少し良いヒーラーに心当たりがあるんだが」
「本当か? 助かるよ、マスター」
「ほい、チップ」と言って、マスターにチップを渡す。詳しい情報を得るためにもここは何としてでもマスターに話して貰わなくてはいけないから、このチップは必要経費だ。
「で、どこに行けばそのヒーラーとやらには会える?」
「話が早いね、お客さん? じゃあ、こちらで話はしておくからね。夜に来ると良い。心の優しい良い子だ。きっと助けになってくれるだろう」
「あぁ……頼む。では夜に頼むとするよ」
そう言って僕は、グレープジュースの値段を払って、酒場から出たのであった。




