13.面接
セベア・パイグスには親友がいた。
そもそも『神籠』はセベア・パイグスとその親友が作った組織である。
薄水色の髪を後ろで緩くカーブした、赤と青のオッドアイの凛とした顔立ちの女性。赤一色の騎士姿。左の腰には二丁の銃、右の腰には2本の長刀。背中には大きな黒いハンマー。頭にはウエスタンハットを被った、そんなちぐはぐした女性。
『です』の真ん中に『り』を入れて、さらに一人称が『巳』と言う変な女性。
彼女の名前はホルック・アシュートと言った。
そんな、4年前に死んでしまったホルック・アシュートに似ているとエレニア・アストレアは思っていた。
どこが似ていると言う訳では無い。彼女と似ている部分なんてほとんどない、けれどもなんとなくそんな気分が感じられる。
(だから、だろうな)
自分よりも彼女の事を大事に思っていた彼が、そんなアカツキを知って仲間にしたいと思ったのは当然なのかなと思うエレニア。
「まず、アカツキさんはどう言った面で我が組織に役立ってくれますか?」
と言うセベア・パイグス。まぁ、無難な質問かと思うエレニア。いくらアカツキさんがホルックに似ているとしてもそれは他人の空似であり、それだけで雇えば他の者からの嫉妬や妬みが強いだろう。流石にそれではいけないだろう。せめて使える人だと良いなと考えるエレニア。
「えぃと、騎士なのでやはり剣での攻撃が得意でぃす」
「剣と言っても色々攻撃方法があると思いますが、どう言うタイプの攻撃ですか?」
と、言うエレニア。エレニアとしてもここで質問しないといけない。
ここで銃攻撃やハンマーもすると言う回答をすると、他人の空似以上の事を感じる。エレニアの知るホルックは剣攻撃と銃攻撃、ハンマーの全てを場面に合わせてやる器用貧乏的な攻撃を得意とする奴だった事を覚えている。
「そうでぃすね……。剣に炎や水などの物を纏わせる、属性剣攻撃が得意でぃすね。と言うより、私の主流戦法はそんな感じでぃす」
「分かった、属性剣だな。あぁ、了解した」
「……はい。私も納得しました」
残念です。まぁ、やはり他人の空似なのだろう。そりゃそうだ。何せ彼女は4年前に……。いや、それはしない方向で行きましょう。
「で、強さとしてはどのくらいですか?」
「そうでぃすね。頑張れば……龍を撃破、出来ますね。
この前、頑張ってアイスドラゴンを倒しましぃた!」
「「アイスドラゴン……」」
その名前は聞いた事がある。山に住む強力な龍タイプのモンスターである。氷の息吹を吐く、山の主と言う異名も持つほどのモンスター。あれを倒せると言うのならば実力は十分にある。しかも別に特別に誇ってる訳でもないから、その実力は認めても良いでしょう。
「事務経験は?」
「ありませんが、記憶力は良い方だと思ってるでぃす」
セベアから彼女が持って来た書類を貰う。見せて貰う。……別に汚くは無い。むしろ上手い。これならば十分に役立てる。
実力もあるし、何も問題は無い。
「「よし、採用」」
と言うと、彼女はとても嬉しそうな顔で
「ありがとうございますでぃす。明日から精一杯、誠心誠意やらせててもらうでぃす! 明日からよろしくお願いしますでぃす! では、失礼しましたでぃす!」
彼女はそう言って、ぺこりと頭を下げる。そして帰って行った。
残ったのはエレニアとセベアの2人。
「……あの娘に似てるから、採用したの?」
と、エレニアが聞く。
「いいや、違う。ただの勘違いだよ。ただ、似てただけさ」
「なら、良いよ」
セベアとエレニアはそう言って、笑いあったのであった。




