7.仲間再会
セベア・パイグスの言われた通り、『神籠』にて僕を待っていると言う人が居ると言うエントランスへとやって来た。
豪華なシャンデリアが飾られた、美しく赤い絨毯と椿のような花が描かれた壁紙を壁に張った、優雅さと気品溢れる場所だった。
そしてそこに知っている顔が2つ。
「あっ、兄貴―――――! 大丈夫だったんですか、怪我とかしてないですか!?」
「……無事で本当に良かったです」
そいつは銃を使う自称弟分のハーフエルフのネフィー・パルジャとタナハトの森を越える際にお世話になったヒーラーのイスカ・セドドラちゃんだった。
ネフィーは僕の周りを激しく動き回って僕の身体を擦ってくれていて、イスカちゃんは良かったと本当に安堵した顔をしていました。
「マスター? この愚かそうで醜い方達は誰デス?」
「「愚かで、醜い!?」」
と、ネフィーとイスカちゃんはミスロスに言われて2人で言葉を合わせて驚いていた。
「と、と言うか兄貴! この鋭い兎耳毒舌のこの女は何者ですか!? あ、兄貴の新しい愛人ですか!?」
あ、愛人?
愛人って、既に正妻が居る人が使う言葉だと思うんだけど……と言うか、僕は正妻を持った覚えは無いんだけれども……。
「え、えっと……! アイクール君、毒舌な女の子と付き合っても良い事はないよ?」
イスカさん、それってどんな人生相談ですか?
「マスター……。流石に同時に付き合う人は2人までにした方が良いと思うデスよ?
前のマスターの経験上、2人以上の二股は意外ときつい者デス」
……。
もう何でも良いや。
何も言う事なんて無くなってしまったわ……。
結局、数分を費やして僕は彼女達に自己紹介と話を付けたのであった。
「で、2人はどうしてここに居るんだ?」
なんとなーく、クルスホテルから電話して近くの家の知り合いの人からネフィーはテスカロテ大陸で男修行をすると言う事は聞いていたが……。
「オレはここで武者修行ならぬ男修行を! 寒風摩擦に、滝修行、そして百発百中を、日々鍛錬していました!」
……きつそうな毎日を送ってたんだなー、うん。
「わ、私はここで人々に回復の施しを! ここには回復施設がほとんどないのです」
「そりゃあ、大変だな」
まぁ、テスカロテ大陸は元々魔物が強いから、回復施設はなかなか作れないらしい。回復施設と言うか、そこで働くスタッフがここの厳しい風土に付いて来られずに倒れたり、ここから出たりするのだとか。
「まぁ、マスターのように海で漂流をして付いたよりかは、まともな理由だとは思うデス」
「……返す言葉もありません」
まぁ、けれどもそうやって付いたのだから他にどうしようも……。
「少し、よろしいでしょうか?」
と、そんな事を皆で話していると後ろから凛とした、どこか通るような声がする。後ろを振り向くとその声の人物はこちらをじっと睨んでいた。
少し灰色がかった黒髪をト音記号のような髪留めでツインテールにしていて、セベア・パイグスと同じように上品そうな白の軍服をしっかりと着込んでおり、上にどこかの学校の制服のような物を羽織っている。全てを見通しそうな大きな瞳に、クールで大人っぽい顔付き。銀の靴を履いた、そんな彼女はジト目でこちらを睨んでいる。
「エンチャッターのアイクール・パルジャさんはここに居ましたか……」
「あっ……、はい」
な、何だろう。
この女性は何を言いたいんでしょうか? ま、まぁ、良いんだけれども……。
そんな変な女性、そうその時はそうしか思って居なかった。
「えっとテスカロテ大陸に居るんだったら、あなたのエンチャッターではあまりにも生きるのは難しくて、このままだと死んじゃいますよ?」
「えっ……?」
な、何だ? 彼女はいったい何を言いたいんだ?
「単刀直入に言っちゃいます。今すぐこのテスカロテ大陸から出て、新たな地に行く方が良いと思うよ? じゃないと大変な事に成っちゃうよ?」
と、僕はよく分からない内に、いきなり出て来た人にそう諭されてしまっていた。
そして後日、僕はとある人物と対談する事を申し込まれたのであった。




