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1人では戦えない僕と、仲間達  作者: アッキ@瓶の蓋。
第三部 新天地

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1.洞窟

 僕、アイクール・パルジャが目を覚ますと、目の前にあったのは岩の天井だった。

 全体的に暗く、たき火の小さなほのかなかすかな炎が、この寒空の中確かに温もりを僕に見せてくれている。



 ……痛い! 節々が異常に痛い!

 イエロー・スパイダーから受けた痛みが、身体全体に行き渡っているようで、まるで生き物のように僕の身体を這いずり回っている。

 身体を動かそうとすると、身体の節々が悲鳴を上げるかのように関節がぎしぎしと音を出す。このままじゃ死んでしまう!

 しかし、どうやら血が噴き出す様子は無い。誰がやったのかは分からないが、僕の身体から血が出ないように適切に包帯が巻き付いているようである。いったい、誰が……。



 身体中包帯だらけの身体を酷使して洞窟の外へと出ると、外は雪がしんしんと降る寒空だった。

 肌寒い気候に、雪に覆われた山。そして天からは白銀の雪がちらちらと降り、海は寄せて引いてを繰り返している。ここは……



「もしかして……テスカロテ大陸!?」



 テスカロテ大陸。

 雪降りやまぬ北の大地。大陸の北半分が雪で覆われた、僕が居たアレシル大陸からさらに移動した大陸である。多分、ここはそのテスカロテ大陸でもまだ暖かい場所なのだろう。

 けれどもイエロー・スパイダーの攻撃による傷と、この寒空の気温だったら恐らく。いや、間違いなく死んでいただろう。



 でも、この包帯。それにこの洞窟への誘導して焚火(たきび)してくれた人物。そいつに感謝するしかないな。そんな事を思っていると、



「……あれ? ようやく目が覚めたみたいデスね。全く……惰眠をむさぼるしか脳が働かないダメ人間とは、またしても嫌なマスターに巡り合ってしまったみたいデスね」



 なんだろう。例え恩人だろう人のセリフだとしても、今の言葉は聞きたくなかった。

 惰眠って……僕、胸から血を流してたんですけど? 包帯巻いたからそこら辺知っていると思うのだが。



「まぁ、これも運命(さだめ)として受け入れるしかないんデスね。正直、次のマスターはどんな人デスかねと、高望みしすぎたの今の果てしない絶望感の引き金の1つと思うデスが、それでも最初に会ったのが身体中血だらけと言うのは遠慮したかったデス。

 ほら? そろそろ起きている頃デスよね? 私はあなたを助けたモノデス。だから、他の人が助けてくれたなんて言う妄執(もうしゅう)を捨てて、素直に私の顔でも(いや)らしい目つきで眺めていればいいデスよ?」



 ……本当、泣きたくなってきた。

 確かに、「助けてくれたのはこの人じゃなくて、別の人かもしれない」と思って顔を下に向けていたのは事実だが。妄執って。そこまで思ってもいなかったんだが。



 と言うかこいつ、さっきから僕の事を『マスター』って呼んでないか?

 そんな呼び方をさせた人物は1人足りとも心当たりがない。じゃあこいつは、親しげに罵倒(ばとう)して来る人物は誰だ?

 そう思って、顔をあげて声の主だろう人物の姿を見て、



「……あ」



 絶句した。だって、その人物は人間じゃなかったからだ。



 雪以上に白い白銀のボリューム感たっぷりの髪をツインテールの要領でくくってあり、着ているのも同じくらい白い、このテスカロテ大陸には向かないような薄着。

 体格は小柄にして、細身。しかし、腕や足はまるで鋭い刀のように筋が通っており、その身体には埃一つ草一つさえ付いていない。

 少しふっくらとした顔には紫色の瞳が付いており、その瞳はジト目でこちらをジッと見つめている。



 そして、耳の上には刀のような鋭い刃物のような耳が、兎の耳のようにピンと立っていた。




「顔を合わせて話すのは、マスターが血を無駄にだらだらと流していたのでこれが初めてデスね。

 初めまして、マスター。私はミワ・ミスロス。マスターの持っていた刀、宝剣ミスロスに宿った剣精霊デス」



 ぺこりと、彼女、宝剣ミスロスの精霊は僕にそうぺこりとお辞儀をした。

 その後ろでは、大きな猪のようなモンスターが細切れにされた状態で彼女の後ろに置かれていた。

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