17.海岸戦闘
ニッチクラブがハサミを振り回して攻撃している。そしてそのニッチクラブの背の上に乗ったイソカブキンチャクはカクカクとした機械的な動きをしながら毒液のような物を発射して攻撃して来る。
「あら、よっと」
クルスはそのハサミの攻撃を避けながら、腰から木片のような物を取り出す。そして毒液をその木片に当てた。毒液によって木片は少しずつ溶け始めて行く。そしてその毒液によって溶け始めたその木片をニッチクラブにぶつける。
『アァァァァァァァァァ…………!』
ニッチクラブは悲鳴をあげており、その上に乗っているイソカブキンチャクは当然のごとくカクカクと言う動きながら落ちて行く。その落ちて行くイソカブキンチャクをクルスは短刀で斬る。
イソカブキンチャクに亀裂が入り、イソカブキンチャクは逃げようとするがイソカブキンチャクは自ら動く機能を持たない共生型の魔物。その足となるニッチクラブが今もなおイソカブキンチャクの毒液でのたまって要る以上、かの生物の協力は仰げない。
そしてクルスはイソカブキンチャクを倒していた。続けてイソカブキンチャクも倒す。
同じようにしてクルスはニッチクラブとイソカブキンチャク達を倒していく。
メティアの方には別の魔物が向かっていた。ハシラマキシャークとテンチェリーラビットの2種類の魔物である。
ハシラマキシャークは魚型の魔物である。凶悪な鮫の顔を持つ二足歩行で陸を歩けるようになった魔物で、その手に持つ人の腕や足が巻き付いた薙刀が有名な魔物である。
テンチェリーラビットは兎型の魔物である。海に住む珍しい魔物であり、全体的に赤い身体が特徴の兎の魔物。背中には青い文字で『テンチ』と書かれており、耳はそれぞれ左と右で長さが違う。左耳はとてつもなく長く、右耳は極端に短い。そしてそのそれぞれの耳の上には人形が意図でくくりつけられている。
そしてそんな2種類の魔物を、メティアは闇の魔法で倒していた。
「……」
――――――無表情で。
彼女の気になって居るのは、今ここに居ないアイクール。いつの間にか彼の姿はここから消えていた。
どんな目に合っているのか分からない。
傷つけられているかも知れない。誘惑されているかもしれない。籠絡されているかも知れない。一番嫌なのは――――――殺されている事。
「……ッ!」
そんな不安げな事を考えていると、本当に嫌になる。そんな事はあって欲しくないから。
でも、分からない。彼はお世辞にも強いとは言えない。
補助職のエンチャッター、彼の役割はエンチャットする事。戦う事では無く、後ろから支援する事。だから1人の彼は危険なのだ。最近は銃でちょっとは強くなっているけれども、それでもだ。
そんな思いがメティアの中で見え隠れする。そしてそんな彼女の思惑も知ってか知らずか、彼女、ブラウンベル・グランドはリュウグウカブキ・マキナの上に乗りながら高らかな声をあげていた。
『にゃはは―――――! 面白―――――! やっぱり、こう言うのは面白さに限るよね―――――!
世界はもっと面白くなるべきだと思うよ――――――。何せ、本来はその方が正しいんだからさ――――――。人間は人生を楽しむために生まれて来たんだから、ね―――――』
「ムカッ……」
ただでさえ、アイクールが居ないために不安定だった彼女は楽しそうな声に怒りを覚える。そして、彼女は一瞬にして自分の頭上に炎の塊を作り出す。それはどんどんと大きくなりながら力を増して行き、それを彼女は自分の足元へ落とす。落とすと共に、炎の熱は地面を広く広がって行き、自分の周りに居たハシラマキシャークとテンチェリーラビットの2種類の魔物の軍団に狙いを付けて倒す。
『くっ……! やっぱりメティアちゃんは強いね! 奥儀、石投之見得!』
そして、リュウグウカブキ・マキナは背中からバズーカ砲のような筒がクルスとメティアの両名に向けられる。そしてバズーカ砲のような物から赤い炎を纏った岩、隕石が発射される。
クルスはニッチクラブとイソカブキンチャクを短刀で上に飛ばしてその間にクルスは隕石の届かない場所へと走って移動していた。メティアはその隕石を見ても眉一つ動かさずにポケットから白い棒のような物を取り出して魔法陣を書いていく。
メティアが書いた魔法陣をメティアはすぐさま書き終わる。書き終わると共に魔法陣は巨大化してその巨大化した魔法陣が隕石を防いでいた。魔法陣にぶつかった隕石は徐々に勢いを失いながら壊れて小さくなっていく。そして小石程度になったそれは砂浜へと落ちて行った。
『っ……! 隕石は駄目だったか―。ならば、次はこれ! 役者魂!』
リュウグウカブキ・マキナは『キラリ!』と瞳を輝かせてそして、その機械の両手を激しく前後に移動させて攻撃する。両手は高速で動く事によって幾つも手があるように見えて来る。メティアの魔法陣は幾つもの張り手が当たると共に薄れて行き、そして魔法陣は消えて行った。メティアは破られる前に走って避けていた。
「あら、よっ―――――――!」
クルスは高速で足を動かして海面を走り、ある程度走った所でクルスは海を強く蹴って宙に跳ぶ。そして短刀を取り出してそのリュウグウカブキ・マキナの腕―――――――その腕のコードを一瞬にして斬っていた。
コードが斬られると共にリュウグウカブキ・マキナの腕は速度を落として行って、遂にその機械の腕の動きは止まっていた。
『……おおぅ? 可笑しいですね、ユノセティ遊園地から取って来た高度な鋼を作って作ったのにー。
やっぱりリュウグウノツカイ? リュウグウノツカイが悪いのかな―――?』
「黄泉の門を開け、そして遥か彼方からの雷を敵に与えよ」
―――――――メティアは杖を取り出して、魔法を発動していた。リュウグウカブキ・マキナの周りに緑色の魔法陣が出現していた。
リュウグウカブキ・マキナの首がゆっくりと上を向く。そしてリュウグウカブキ・マキナの顔から冷ややかな汗のような物が流れる。
『――――あれ? 私、もしかしてピンチだったりする?』
「怒涛なる雷の裁きを受けよ、サンダーブレード!」
そしてメティアは大きな雷の剣を天から落とす。リュウグウカブキ・マキナに大きな雷の剣が突き刺さり、リュウグウカブキ・マキナが雷で痺れて行き、黒い煙が昇って行く。
「だ、脱出――――!」
そして、ブラウンベルは高速で飛んで行く。「また来週――――――――♪」と言いながら、ブラウンベルは帰っていた。
「……なるほど。イエロー・スパイダーはこれを恐れたのか」
納得したようにクルスは小さく言っていた。
そして、
「……何、あれ?」
メティアは空中に指を指す。彼女の指差す先には、
宙に浮かぶアイクールの姿があり、近くの崖の上には黒いボンテージ服を着た金髪女性の姿があった。




