6.追憶
今回はメティア視点でお送りしたいと思います。
昔から私、メティア・アンラニルは人の事が苦手である。
人とのコミュニケーションはとても苦手であった。
だから、昔から人に喋りかけられないように、黒い魔女の帽子を深く被って人と接していた。
私が生まれた町、ウルテックは田舎だけあって、同じ年齢の歳の子供は私を含めて、たった3名しかいなかった。
アイクール・パルジャ、クレイノス・テスカルナ、メティア・アンラニルの3人。
昔から私達3人は仲良かったけれども、特にアイクールとの遊びが多かった。
魔女と騎士は昔、非常に仲が悪い、と言うか戦争していた時代があった。
私は魔女で、クレイノスが騎士だから、あまりそれぞれの親同士が会う事を許してくれなかったんだろうけれども。
またはそれぞれ修業が全く違って忙しかったんだろうけれども。
とにかくクレイノスと喋る機会が少なくなって、逆にアイクールと接す機会が多かった。
アイクール君の家はウルテックで一番大きな家でした。
親が領主と言う立場であり、さらに親が物凄い大金稼ぎの職業らしくとても大きい家でした。
そんな大きい家で、2人で本を読む機会が多かった。
アイクールは体力的に優れているとは言えないけれども、精神面では私達よりも遥かに大人びて見えた。
彼はいっぱい本を読んでくれた。面白い本や悲しい本、楽しい本やためになる本。沢山の本を読んでくれた。
彼は沢山遊んでくれた。修業と言うより、外で2人で遊ぶ事が多かった。中で探索と称して家を探索したこともあった。
それに私が覚えた魔法を見せた事も多かった。私が魔法を成功すると、彼はまるで自分の事のように褒めてくれた。だから私は彼に褒めて欲しくて、魔法の特訓を精一杯頑張った。
彼と過ごす毎日はとても楽しい毎日だった。
ある日、私は新しい魔法を両親から覚えたので、それを彼に見せたくて急いで彼の家へと向かった。
しかしその道中、私は沢山の年上の少年に囲まれていた。私は同じ年齢の子供は私を含めて3人しか居なかったと言ったが、別に同じ年頃の人間ならもっと居たのだ。彼らはそんな同じ年頃の連中だった。
「へへへ……。おい、魔女。ちょっと俺ら、むかついているから殴らせてもらって良いか?」
と、不気味な顔で彼はそう言っていた。要するに彼らは魔女と言う私に暴力と言う形で私に攻撃し、ストレス発散をしようとしているのだ。魔女とはだいたいそんな感じで皆に疎まれていた。それはとても怖かった。
そんな風に苛められる事もあって、私は魔女帽子を深く被る習慣がついてしまったのかも知れません。
「止めて、くだ、さい……。私は今、急いで、いるん、です」
私は早く魔法をアイクールに見せたかったから、彼らにやめてとお願いした。
「それは聞けないねぇ……。なぁ、皆」
「あぁ、そうだな」と取り巻きの2人がけらけらと笑いながら、私に迫って来ていた。
もし彼らが大人だったら、私を魔女と言うだけで苛めはしないだろう。そんな時代はもう終わったのだから。でも彼らはまだ子供、「魔女は卑しい者だった」と言う親の教えを「だった」を意図的に聞かなかったことにして、「魔女は卑しい者」と信じてストレス発散のはけ口を作りたかったのだろう。
年上の男子3人は私よりも遥かに背が高いように見え、私はそんな大きい彼らに囲まれて動けなくなった。
殴られるのを覚悟して、私は目を瞑った。しかし、いつまで経っても痛みは襲って来なかった。
恐る恐る目を開けると、そこには汗をかきまくったアイクールの顔がドアップであって、私は急に恥ずかしくなり、いつも以上に帽子を深く被った。
彼は「はぁはぁ……」と肩で息をしていた。つまりそれだけ疲れているようだった。
「アイ、クール……。どう、して、ここに、居るの?」
「えっとな、メティア。お前、良く僕に魔法見せてくれるでしょ? だから僕も母親から『速度上昇の追加魔法』を覚えて、お前に見せようかなーって。
だから、見せたくてメティアを探していたら、あの光景だろ? だから『速度上昇の追加魔法』を使って連れ出したって訳だよ。まっ、2、3回かけてぎりぎりだけど……」
「明日は筋肉痛だな―――」と言う彼を見ながら、それは嘘だと思った。
彼の筋力だと、『速度上昇の追加魔法』が5回でやっと。その後、追い疲れないようにさらに2回くらい魔法を使用したんだろう。
あれだと今日明日の筋肉痛ではなく、多分酷くて1週間は筋肉痛になるだろう。精神的に大人なので、それを使ったら1週間は筋肉痛になる事は彼自身分かっていた事だろう。なのに、それを理解した上で私を助けるために使ってくれた。それがとても嬉しかった。
「まっ、メティアが無事で良かったよ」
と、こっちを見て微笑むアイクールを見て、顔が紅潮してそれを隠すために、さらに帽子を深く被った。
口元まで帽子が隠していて、そんな私の姿を見てアイクールは笑い、私はとても嬉しい気分になれたのであった。
それが私の恋が始まった瞬間。
それから私は努力した。
彼はエンチャッターになるらしく、だったら優秀な攻撃手が必要だと思い魔法をそれ以上に頑張った。
―――結果、魔法学校でもかなりの好成績を維持しているので、成功と言えよう。
いつまでも人見知りなままではいけないと思い、人間関係も円滑になるよう努力した。
―――魔法学校で皆に勉強を教えたり、遊んだりしている内にだいたいそれも克服出来た。
彼にいつまでも見ていて欲しく、スタイルも良くするよう頑張った。
――――身長はそれほど伸びなかったが、かわりに別の所ばかりが大きくなってちょっとがっかり。でも、アイクールはそんなに指摘しなかったし、これも満足。
そして、今そんな彼は、私が魔法で作った即席の家に入らず、外で銃を撃っている。私はそんな彼を窓に寄りかかって見つめていた。
その銃弾はお世辞にも良いとは言えない。でも、頑張る姿はどこまでもカッコよく思えた。
私はそんな彼の姿を見ながら、小さく声を放つ。
「ねぇ、アイクール。今、アイクールは、銃を撃って銃のスキルを必死に上げようとしているんだね。
でもね、アイクール。スキルを上げるんだったら、ただ撃つだけよりもモンスターを倒した方が上がりやすいよ?」
と言いながら、私は魔法の杖を振って深夜のうちに作って置いた瀕死状態のミノタウロスを出現させる。
ミノタウロス。牡牛の頭に人間の4倍以上もある巨大な体躯を持つ上級魔物。鮮血の色に染まった身体に筋骨隆々とした身体で、大きな銀の斧を振るう化け物。
最も、私の魔法で身体はぼろぼろ、血はどろどろと流れだし、―例えば銃弾1発受けただけでも死ぬくらい痛みつけている状態ですが。
そんな瀕死のミノタウロスをアイクールが銃弾が放たれた方向に彼から見えないように出現させる。銃弾が放たれる方向は彼の銃を持つ腕と、彼の銃を扱う腕を考慮して出現箇所を決めた。
彼が銃を放っているのを初めて見たのは、エインラトの宿屋に泊まった日の夜だった。その日からずっと見ているので彼の銃の腕は誰よりも理解していた。
ミノタウロスは雄たけびを上げる前に彼の銃弾が当たり、ミノタウロスは言葉も出さずに死んでいた。
「これで3匹目ですね、アイクール」
そして彼がまた銃を構えるのを見て、彼の銃弾が当たるだろう場所に瀕死のミノタウロスを転移魔法でまたも出現させる。先程と同じように銃弾を受けてミノタウロスは死亡する。
それを何度も行って、彼の銃練習は終わり彼はこっちへ戻って来る。
「ねぇ、アイクール。私はあなたの全てを肯定する。
あなたの皆に隠れての銃の特訓も私が影からサポートする。だから、アイクールは何も心配せずに銃を上達させてね」
アイクールが何をしようとしているのかは分からない。けど、きっと良い事のはず。
だから頑張って欲しい。私が必ずサポートするから。
――――だって、私は彼を
「あれ? 起きてたのか、メティア? 今日も早いな」
続けようと思ったけど、扉を開けてアイクールがそう言っているのを見た。それを見ながら顔を赤らめながら、
「おは、よう。アイ、クール」
といつものように返事を返した。
何かこう言う魔物を出して欲しいなどのアイデアがありましたらメッセージなどでお送りしてください。出来る限り採用したいと思いますので。




