2.再会
ウルテックの村に帰って来た僕は、まだ怒り顔だった。それを見て、ネフィーは「あわわ……」と言っている。
「あ、兄貴……。そろそろ怒るの、止めてもらえねぇですか? それ以上、兄貴の怒り顔とは、あまり見たくねぇんですけど……」
「……」
「出来心だったんですよ、出来心。完璧なまでの出来心でして……。兄貴の幼少時代にやったとされる、男同士の約束とやらをしたかっただけでして……」
「女も居たからな、一応」
それと、お前も女性だから。お前としたとしても男同士の約束にはならないっつーの。
「あ、兄貴……。本当にどうか……」
涙目でこちらを見て来るネフィー。周りの農民的な村人達も「そろそろ許してやったらどうなんだ?」とか言っている。
……確かにもう良いだろうな、うん。僕もあの2人に申し訳ないと思っただけだし。
「まぁ、良い。許してや……」
「ありがとう、兄貴!」
ガシッ、とそう言いながら、思いっきり僕の身体へと抱きついてくるネフィー。
僕とほぼ同じくらいの背丈なため、僕の胸に彼女の豊満な胸が、柔らかなその感触が胸に押し付けられてくる。
えっ……? ちょっと……!
早くどけて欲しいんですが……。
「あっ……! やっぱりアイじゃねえか!」
おーい、と言う声と共に1人の男性が居た。
金色の髪を邪魔にならない程度まで伸ばしており、サファイアのような輝く緑色の瞳と誰をも魅了するような優しげな顔立ち。少し高めの身長に、全体的に細身でありながらしっかりと筋肉が付いているように見える。
鷲をイメージした紋様が描かれた、白銀の鎧を着ている。腕には赤い宝石のブレスレットを装備しており、背中にはその人物の背丈と同じくらいの大型の金色の剣を背負っている。
僕を『アイ』と呼ぶ彼の事を、僕はすぐさま思い出していた。
しばらく会っていなかったとは言え、見間違えるはずはない。
子供の頃よりも、断然と高貴な雰囲気を纏った彼の名を僕は呼ぶ。
「クレイノス……。どうしてここに居るんだよ?」
「いや、ちょっとな。お前の家で話しても良いか、アイ?」
そう言う僕の幼馴染、クレイノス・テスカルナ。
騎士学校に行ったはずの僕の幼馴染は騎士の格好のまま、僕の首に腕を回すクレイノスと共に僕の家に向かって行ったのであった。
「あ、兄貴……。この方、誰ですか?」
あぁ、ネフィーにもちゃんと説明しないといけないな、うん。
と言うか、なんでここにクレイノスが居るんだ?




