2.話
今、僕は久しぶりに、家に尋ねて来てくれたメティアと一緒にお茶を飲んでいた。
ちなみに僕の背後の壁には先ほどネフィーが書いていた『友情』、『努力』、『勝利』と書かれた書写の紙が貼られている。書かれている文字に付けられたルビは『とも』、『しゅぎょう』、『おんな』と言う何とも微妙なルビなのだが。
まぁ、それはともかく僕は目の前のメティアに視線を移す。
「あぅ……ふー……ふー」
お茶が熱かったのか、メティアは一生懸命お茶をふーふー、とお茶を冷まそうと頑張ってる。
綺麗で端正な顔立ちの彼女がそんな行動をしていると、とてもギャップがありとても可愛かった。
(と言うか、メティアの顔なんて初めて見たな)
昔から極度の赤面症、及び恥ずかしがり屋の彼女は僕に顔を見せてくれなかった。そんな彼女の素顔と言うのは、初めて見る顔でとても綺麗で大人っぽい……。
昔馴染みで幼馴染だけど、こうやって見ると何となく懐かしく思うと同時に……綺麗だなーって……。
(って、何を考えてんだ! 相手はメティア・アンラニル! お前の幼馴染だろうが!)
と心の中で自分に言って、顔を大きく振る。
「……? ……アイ、クール、どう、したの?」
「……! い、いや、何でもないから。と言うか、どうしてここに来たんだ?」
そう、それが知りたい。メティアはこの前王都で再会したけれども、普段は世界的に有名な魔法学校の優等生である。そう簡単に故郷に帰って来れる立場の人間では無いはずなんですけれども……。
「魔法、学校の、課題。今日は、それを、相談、しに、来た」
「課題? それってもしかして……魔法学校の卒業課題である課題探しって言う奴か?」
「……コクコク」
やっぱりそうか。
魔法学校には卒業制作と言うか卒業課題と言う事で、課題が与えられる。内容は確か魔法薬研究とか使い魔探しとか……だったか?
「私、課題、杖作り」
「……あぁ、杖ね」
魔法使いにとって杖とは大事な物である。だから杖を作るのは、魔法使いにとっては大事な事である。だから魔法使いが杖を作ると言う事は重要な行為である。
だから杖作りは魔法学校において自身の居たと言う証を残すと言う行為である。
「で、杖を、作る、素材が、ルドラオン、海岸に、あるん、だそうです」
ルドラオン海岸。確か……特殊な素材が取れる事が有名な海岸、だったな。
「ルドラオン、海岸、行きたい。クレイ、ノス、断られた。故に、アイ、クールと、行きたい」
「観光気分で言うな……ただの素材集めだろうが。まぁ、杖を作る際はそう言った特殊素材も無いといけないし……。
じゃあ、下に居るネフィーも呼ぼうか?」
今のパーティーだと、補助職である僕と魔法使いのメティアと言う後方攻撃タイプのパーティーである。近接系騎士のクレイノスは断られたから、後は銃士のネフィーに中距離を任せるしか無いだろうし……。
「嫌」
「はっ……?」
「あの女、は嫌」
「えっ……? でも、そうするとお前がかなり無理しないといけないぞ?」
僕は戦えないし、そうすると魔法使いのメティアのかなりの負担になってしまうんだが……。
「それ、なら、私、頑張る」
「……はい? いや、心意気程度で何とかなる話じゃないんですけれども……」
「大丈夫、やる! アイ、クール、明日、行く! 村の、入り口、で待ち、合わせ!」
そう言って、メティアは急いで部屋を出て行った。
部屋を出て行くと、「……ありがとう~ございやした~」とネフィーが送り出す声が聞こえて来た。
「……と言うか、メティアの素顔もびっくりしたが、やる気に満ちたメティアも新鮮だな」
と、僕はそう言ったのであった。
後はネフィーにどう説明するかが問題なんだけど。絶対に着いて来るって言うだろうし……。
どうしようかな、うん?




