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1人では戦えない僕と、仲間達  作者: アッキ@瓶の蓋。
第一部 王都危機

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20.会議

少し長くなりました。すいません。

 次の日。



 僕は王の謁見の間で、クレイノスにメティア、ネフィーの3人と一緒に謁見の間で1人の女性と会っていた。その女性は少し可笑しな格好の女性だった。



 赤い髪を両側でツインテールにしており、赤い目をした赤い顔の女性。

 全体的に細身で赤いスーツ服のような服を着た女性。胸元には豪華な金色のメダルを付けている。赤い手袋を手にはめており、赤いマントを羽織って赤い三角帽を被っている。

 両足は何らかの理由で分からないが切り落とされたらしく、その代わりに長刀の日本刀を足として取り付けている。腕に『R.M.』と書かれたワッペンを付けている。



「お前が……レッド・モンキー」



「Yes. 私は合成魔物(キメラ)の1つを担っている、通称『赤猿』と呼ばれるものでございます。

 ……あぁ、しんど。この話し合い、もう終わりません?」



「まだ、話、始めた、ばかり!」



「でも、しんどいんですもん。あなた方もあるでしょ? 特に理由も無く、だるくなったり何もやる気がしないなんて言う事は。そんな物、当然なんですよ。だるいのは、だるい。ただそれだけです」



 そう言って、彼女はまた大きく溜め息を吐く。



「結論から言いましょう。我々は王都、並びにその周辺地域を我が魔法帝国により管理、要するに支配だけどさ。をしまして、この国を我らが住みやすい環境に変えたいと思っています。以上、はい終わり」



 端的な説明だ。彼女は面倒臭がりだから、恐らく分かりやすい重要な情報のみを提示してきたと言う事か。



「そんなの無茶苦茶っす! どうしてその帝国とやらに、このガイテックが支配されなきゃいけねぇんですか!?」



「Yes. エルフのお嬢さん、その質問は良い質問だ。しかし、こう考えてみてください。

 その土地をさらに有用に使える者が居る以上、その者に任せた方が国民も幸せでしょう。少なくともその王様とやらよりは上手く使う自信があります」



 今は居ないみたいだけど、と彼女は付け加えた。

 王はこの場には来ていない。何故かと言うと、堂々と城に乗り込んでいる以上、王の命が狙われるかも知れない。それ故、王、並びにその王族はこの場には居ないのである。



 魔女が有用に使えると言うのはある種、方便だろう。

 確かに今の王族より有用に使えるかも知れない。けど、そこに国民の幸せがあるとは限らないんじゃないだろうか? それはこいつらの上司、魔女の3人が楽しめるだけだろう。

 だったら、余計こいつらにこの王都を支配させてはいけないな。



「じゃあ、騎士として質問だ。

 有用に使うと言ったが、具体的にはどう使うんだ?」



 と、クレイノスが聞く。騎士と言う立場上、王国のこれからが気になるのだろう。



「No.それは知らないね。私はただの使い魔、ただの赤い猿だ。猿程度の知能じゃ、彼らがどんな作戦を考えているのか分からなかったよ。具体的に作戦を理解出来てたのは、鴉と蜘蛛くらいだと思うよ」



「鴉に蜘蛛……。それも合成魔物っすか?」



 ネフィーの指摘に、「Yes」と彼女は答える。



「我ら4体揃って、合成魔物(キメラ)であり、彼女たちの使い魔だ。色順に強さが分かれていて、一番弱いのがグリーン・キャットこと『緑猫』、次いでブルー・クロウこと『青鴉』、イエロー・スパイダーこと『黄蜘蛛』となり、一番強いのが暫定的に私、レッド・モンキーこと『赤猿』です。

 ……喋り疲れたー。水飲んでいいですか?」



 そう言いながらも、既に水を取り出して彼女はそのペットボトルの水を飲む。



「あ、兄貴……。四天王ですってよ! なんかカッコいいですね!」



「変なところで感心するなよ。

 まぁ、大体は理解出来た。彼女の言い分も」



 と、僕はそう言って、彼女の前に立つ。



「初めまして、レッド・モンキー。僕の名前はアイクール・パルジャ。エンチャッターだ。

 君の話を詳しく聞こう」



「へぇ……。今までの奴らはこっちが名乗ってるのに、名前を名乗らなかった……。まぁ、それもだるいと言う理由と、魔法の中には名前を知られるとまずい魔法があると言う警戒心から話さないと思っていたんだけど……。

 君はどうやらそう言った事を考えない、馬鹿と言う事かい? ウーキキキキキ!」



「使い魔にそんな高等な魔法が使えると思わないだけだ」



 それに名前を知って攻撃など、もはや呪いじゃないか……。そんな攻撃にびびって居たら、おちおちゆっくり名前も名乗れない。だから、僕は信じないだけだ。

 呪いとかそう言った魔法の存在を。



「ウーキキキキキ! 言うね。

 Yes. 確かに使い魔如きの私達にそんな魔法は使えない。厳密に言えば私は使えるが、疲れるらしいので使おうと努力しないだけど……。

 まぁ、先程『馬鹿』と言ったのは訂正しよう。君の話を聞こう」



 ……どうやらこの猿。ただの面倒臭がりではないらしい。こちらも注意して話を進めて行こう。



「まず1つ目。そちらの帝国はこちらの王国を支配出来るほどの軍事力を持つのか?」



「Yes. 持っている。例を挙げるとするならば、緑猫……は弱いか。この王都を騒がせていたタナハトの森の主。あれはこちらの戦力だ」



「何……!?」



 クレイノスが厳しい顔を浮かべる。



「確かに少し前、タナハトの森は急に強い魔物が現れた。そのせいで夜の森の行き来がしにくくなり、ちょっとした被害も(こうむ)った。

 しかしあれは騎士団の精鋭20人ほどが始末していた。もしやあれが貴様らの……!」



「Yes. ちょっとした実験の体で生まれた魔物だ。まだまだ試作機だったが、十分に威力は示されたようだ。……はぁー。あいつを運ぶのは疲れたな。

 と言うような形で、私達の戦力がどれほど強いかは証明されている。そして、こちらはあれ以上の物を大量に作り出す事が出来る準備はある。後は動かすだけ……。

 はぁ、疲れるのは嫌なんで正直、降参してくれると嬉しいんですけど」



「くっ……! あれが10、20体くらいならば国単位で動けば退治するのは楽だ。しかし、あれ以上の者を大量となると……!」



 騎士団的にはつらいらしい。

 ……ふむ。戦力としては十分か。



「戦力は理解した。では2つ目の質問。君は合成魔物で、4体中一番強いと言っていたが、帝国の中ではどれくらいの強さなんだ?」



「ふむ……。難しい所、と言いたい所だが、少なくとも何体か生産し放っているボス機の中でも強い方だろうでしょう。もし私が負けるような事があれば……少なくとも1年くらいは今のような強硬的な形で、支配を促すのはなかなかしにくく……」



「……やはり、そうか」



 思った通り。

 わざわざ王都に乗り込む以上、その者はかなりの強さを要求される。

 何せ、そちらの要求は『国の支配』。使者が弱ければその提案は却下されるのがオチだ。だから使者として呼ばれた、このレッド・モンキーもかなりの実力者と思っていたが、案の定。

 それくらい強いと国の中で定義されているのならば、手の打ちようがある。



「レッド・モンキー。ここで提案だ。もしこの提案を了承して貰えれば、君は無傷で、疲れずに、帝国に良い報告が出来るかも知れないぞ?」



「ほ、本当ですか! それは実に興味深いですね。

 疲れずに、疲れずに、疲れずに! 物事がスムーズに運ぶ物だとしたら、それは是非聞きたい!」



 ……かかった。

 このレッド・モンキーと言う女性は面倒臭がり。無駄な時間と問答よりも、単純明快でスムーズに終わる事を望むような奴だ。この提案は乗って来ると思っていた。

 計算通り、だ。ただ、この計算が上手く行くかは僕達の頑張り次第だが。



「さて、何だい? 君の提案とやらは?」



「君は相当強く、例えば王の軍を相手したって負ける事は無いのだろう?」



「あぁ……。傷一つ無く、勝って見せましょう。それくらい私には強さがある」



 ……傷一つなく、か。随分、大きく出たな。まぁ、それくらい強いと彼女は思っているのだ。

 ならば、そこを突こう。



「そして、僕の提案だ。

 3日後の午前10時、この王都から離れた草原、ウルック草原で君とこの王国軍隊との決闘を行う。

 君の勝利条件は、無傷で王国軍隊を倒す事。

 こちらの勝利条件は、君に傷を付ける……いや、身体の一部に損害を与える事。

 勝てば君の自由にしろ。そして負けた場合、君は帝国に帰って、1年間の無理な宣告を避けるよう魔女たちに提案しろ」



「……ウーキキキキキ! ウーキキキキキ!

 面白いルール。分かりやすく、そして疲れそうにない。

 ……良いでしょう。魔女の皆さんには私から事情を説明し、提案を受けるよう進言しておきます。

 では、後日お会いしましょう。ウルック草原に3日後の10時にでも」



「あぁ、提案成立だ」



「ウーキキキキキ! ではまたです。アイクール君」



 そして、レッド・モンキーは去って行った。



 さて、初手(しょて)は打った。後は……王国の皆さんに話をしようじゃないか。

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