14.魔女幼馴染
僕の幼馴染、メティア・アンラニルの事を話そう。
いつも僕とクレイノスの2人の後をとぼとぼと歩く、そんな臆病気質な少女。
片言で喋り、それでいて魔法は流ちょうに話す少女。
魔法の才能に溢れて、魔法都市の魔法学校に行ってしまった少女。
料理が得意で、それでいて裁縫が苦手で、人付き合いが苦手で、黒い魔女の帽子をしっかりと被った、可愛い僕の幼馴染の1人。
それが僕のメティアに持っているイメージである。
でも、10年前の印象だから変わっているかもしれないけれども。
「なるほど……。兄貴の幼馴染、つまりは姉御と言う訳ですね」
「ネフィー、何か違うから。それに僕は兄貴じゃないし」
「そうだぞ、ネフィー。あいつは姉御と言うキャラじゃない。どちらかと言えば、魔法使いだ」
「なるほど、クロノウスの言葉で分かりやした! そのメティアと言う人は、兄貴の幼馴染で魔女なんですね!」
……ネフィーの中では、『メティア=魔女』と言う法則が成り立ってしまっているんだろうな。
「メティアの奴、お前に会えると聞いて物凄く喜んでいたぞ?」
「……そうか。10年ぶりだからな。僕も楽しみだよ」
メティアの奴、どう成長しているんだろうか。僕も楽しみである。
「……むー」
すると、ネフィーが僕の頬を引っ張る。頬が伸びて、頬に痛みが……!
「い、痛い! ネフィー、痛いってば! 何でこんな事をするんだよ!」
「す、すいやせん! 兄貴! つい何か頭に過る物がありやして……」
そう言いながら、ネフィーは頬から手を離してくれた。うー、まだほ頬がひりひりとする……。
「ハハハ! 愛されてるね、アイ!」
「これのどこが愛されてると言えるんだ、クロノウス」
「分かっていない内はメティアにも十分に勝ち目はあるな。うん。
じゃあ、メティアからは俺は席を外すように言われてるからさ。じゃあ、カウンター席に居る黒魔女の帽子を被った女性がメティアだから」
「あっ……! ちょ……!」
そのままクロノウスは帰って行ってしまった。
「ネフィー、お前も来るか?」
「いえ! クロノウスが言っていやしたように、ここは兄貴1人で感動の男同士での、感動の再開を楽しんで来てください! 兄貴のこれからを、オレは応援してやす!」
そう言って、そのままネフィーは外に向かって行ってしまった。
はぁ~。結局、1人で行かなければならないか。そう思いながら、僕は中を開けた。
中は旅館のカウンター、そして向こう側にバーのようなカウンター、そしてその席の1つに1人の少女が座っていた。
腰より長く地面の近くまで伸びる黒髪、小柄な身体に似合わないネフィー並み、いや小柄だからネフィーよりも大きいその胸を、黒のボンテージ服で包んだ服装。そして、目元を隠すように深々と黒魔女の帽子を被っている。
その深々と魔女の帽子を被る姿が、幼い頃のその幼馴染の彼女の姿を思い出す。
「……メティアか?」
「久し、ぶり。アイ、クール」
ニコリと、帽子に隠れていない口元を緩ませて、幼馴染であるメティア・アンラニルは僕との再会を果たしたのであった。




