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弱小球団奮闘記  作者: 鈴兼哲
1章:1年目
6/17

2話:キャンプ初日

合同自主トレから早数週間後・・・


2月1日の今日、プロ野球界にとってはキャンプ開始というこの日

ここ、沖縄県宜野湾市では横浜シースターズがキャンプを行っていた


万年最下位の横浜のキャンプを取材するメディアは例年であれば数えるほどでしかなかったが今年は倍近くのメディアが集まっていた

その理由とはプロ経験のない監督が就任したということだけ・・・


キャンプ地となっている宜野湾市営球場のグランドでは全選手とスタッフがマウンドを中心に円を描いていた。

その円の中心には今年から指揮を執る杜の姿があった


「知っていると思うが今年から指揮を執る杜克己です。私はプロでの経験がないが春日井(かすい)オーナーから横浜(チーム)を優勝に導いてほしいと懇願された。先に言っておく試合での負けは監督である私の責任である。君たち選手には一切関係ない、君たちはグランドで精一杯のプレーを魅せてほしい」


「それと、正選手(レギュラー)は私の中では白紙の状態だ。このキャンプで選手(きみたち)の力を見せてほしい。最後にスローガンを伝える“革新そして躍進”」


監督の挨拶と直に伝えられた今年のチームスローガン

今までと違ったキャンプ初日に選手たちは戸惑いを隠せないでいた



杜は伝える事を伝えてマウンドを後に輪の中に戻っていった


「全選手は外野に移動し声だしといこうか」


ヘッドである伊志嶺がそう言うと選手たちは疎らな足つきで外野まで歩いていき

選手会長である鶴から声出しは始まった



「監督、本当にこの日程でキャンプを行うつもりですか?」




時は前日に遡り・・・


キャンプを張る宜野湾市営球場では宮司を呼んで清めの儀式が行われた

その後、杜はコーチ全員と裏方にキャンプの日程表を渡した


コーチは日程表を目にして唖然としていた

なぜなら昨年までと内容が大幅に変わっていたという事、休日が2日ほどしかないというハードスケジュールであったこと


1クール:2/1~4日午前

2クール:2/6~18(14日半日)

3クール:2/20~28


球団間の差はあれど大体4~5日の休日は与えられている

それに対して杜が考えた日程は上記のような感じだった・・・



「選手たちはこの練習についてこられますか?」


尾華の下で戦った経験のある伊志嶺をはじめ全コーチから異論という異論が巻き起こっていた

杜はそれらすべてに自身の考えを伝えた


「昨年にないくらいのハードスケジュールですね」


「投手陣と野手陣とでは別メニューなんですよね?」


「キャンプインから3日ほどは全選手を宜野湾(ここ)で練習を行わせる。第1クールでは選手たちが身体を絞って野球ができるかどうかを見極めたい。実践的な練習は第2クールに入ってから、それと2~3日は半日練習と考えているが殆どは1日練習です」


各コーチ陣はスケジュール表と杜を交互にみていた


「私は選手に対してあまり助言(アドバイス)することはできないと思う、そこはコーチに一任します。私は選手を含めたコーチ陣と会話をして状況を把握したいと考えています」


「監督室の方は?」


「常時開けておくつもりですので気兼ねなく訪ねてきてください。そこで選手の状態を聞かせて願いますか」




そして現在・・・



「よし、グランド10週。ペース合わせて」


「「「はいっ」」」


全選手による抱負の声出しが終わり、杜はアップを始めるように指示を出した

そして、杜は碓井二軍監督と話しを始めた



「碓井さん、箕浦と杉下は二軍(した)で始めさせます。調整は彼らに任せてください」


「いいのですか? 彼らはエースですよ」


「ベテランだからこそ調整も選手に任せる。それに一軍(うえ)は当落線上の選手を多目にしますから、新人とベテラン勢はお任せします」


「わかりました」



その内容とは実にシンプルで、第2クールから一軍と二軍に分けるための選手選考

これには聞いていた他のコーチ陣も納得していた様子だった




(どうやって別けようか…)


杜は一軍と二軍を分ける事を盛大に悩んでいた

過去の実績でわけるべきか、それとも実績を度外視して判断をするべきか・・・



そして、新生横浜シースターズのキャンプ初日は12球団一早い時間に終わりを告げた




◆◇◆◇◆◇

その日の夜・・・


宜野湾市営球場のすぐ近くのホテルに横浜の選手たち、約30名が宿泊していた

そのホテルの一室。杜が宿泊している部屋では一軍コーチが集められていた


「キャンプ初日、選手の動きはどうでしたか?」


杜は各コーチに選手の動きがどのように映ったのか尋ねていた


「自主トレを身体を絞ってきてキャンプに入れている」と伊志嶺ヘッド

「外国人選手は動きがまだまだですね」と波留打撃コーチ

「初日はいつもの感じです」と高津投手コーチ


他のコーチからも様々な意見が飛び出た


「選手の状態についてはよくわかりました。明日は投手メニューと野手メニューを入れ替えます。そして、ゆうボールを使って練習をしてもらいます」


「ゆうボールですか?」


※ゆうボール:プロ野球選手会がキャッチボール専用に開発したボールの事



「キャッチボールから徹底的にやり直してもらいます。それとこのクールでは下半身を鍛えますのでそのつもりで」


「はい」



さて、今年の横浜キャンプはどうなることやら・・・

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