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弱小球団奮闘記  作者: 鈴兼哲
0章:プロ野球の監督になるまで
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プロローグⅡ

8月の盛り

甲子園球場では全国高校野球選手権が行われていた


甲子園球場から遠く離れた神奈川県横浜シースターズ球団事務所では上層部が集まってある会議が行われていた



「8月も中旬だというのに我が横浜(チーム)はどん底の最下位確定…」


小太りの中年男性が徐にそんな言葉を発した

小太りの男性の発言に眼鏡をかけた中年男性は俯いた



「現時点で30勝72敗8分。尾華(おばな)君は十分にやったと思いますが…」


「そうはいってもだね君。最下位脱出のきっかけが見えずに7年連続最下位。ファンもいい加減に呆れておる」


「それでは会長。どうしますか?」


眼鏡をかけた男性は初老の男性に意見を求めた


「尾華君には悪いがこの成績では来年の続投はなしじゃ」


「それでは…」


「水面下で来季監督構想を練る」



こうして横浜は来季の監督交渉を始めることとなった


だが水面下での監督交渉は難航を極めていた

数週間の期間でリストアップされた監督候補は外部招聘やOBを問わず3~4人だけだった




□人物歴□


外部招聘候補1

仰木彰(おうぎあきら)

現役時代は兵庫ブルーウェーブ(兵庫六甲ブルースの前身球団)で主に二塁手・遊撃手として活躍

現役引退後は兵庫ブルーウェーブの二軍コーチ・二軍監督を経て一軍監督に就任する

二軍監督時代に高卒ルーキーのサブローを外野手に転向させ、自身が一軍監督の時にサブローを一軍で起用させて当時の年間安打数を更新するほどの活躍を残した

その後サブローは入札制度を使用して米大リーグに移籍

米大リーグで活躍中も仰木の事を師と仰いでいる

兵庫ブルーウェーブの監督を勇退後、倉敷マスカッティーズ(球団合併により消滅)の監督に就任

倉敷マスカッティーズの時は超攻撃打線を組んで球団初の優勝に導く

名将と呼ばれるが選手時代を含めて日本一の経験がない


現役通算:実働13年 1320試合 857安打 55本塁打 321打点

監督通算:実働14年 2010試合 999勝 957敗 60分 


外部招聘候補2

野村克哉(のむらかつや)

現役時代は南海サンマリンナイツ(福岡ミリオンホークスの前身球団)で捕手として活躍

捕手として史上初の三冠王とトリプル3を達成

晩年はプロ野球2番目の監督兼任選手となる

監督時代は弱小と呼ばれた大阪浪速タイガースを率いて優勝に導いたり、戦力外となった選手を幾人も復活させた手腕に定評がある

知将と呼ばれておりIDを駆使した采配が多い。現役と監督併せて14回日本一に輝いている


現役通算:実働28年 3127試合 2987安打 687本塁打 1999打点

監督通算:実働20年 3200試合 1555勝 1556敗 89分


外部招聘候補3

星野宣一(ほしのせんいち)

名古屋ドラゴンズ(名古屋シルバードラゴンズの前身球団)で投手として活躍

現役時代は打者の内角を突く投球スタイルを確立させてケンカ投法とも呼ばれていた

東京ツインゴリアスに対して滅法強く生涯成績のうち75勝をマークするほど

監督時代は燃える闘将の異名を持ち退場回数が歴代最多の15回を記録


現役通算:13年 506試合 149勝 130敗 7セーブ

監督通算:12年 1880試合 997勝 823敗 60分


OB候補1

髙木雄高(たかきゆたか)

神奈川ベイスターズ(横浜シースターズの前身球団)で二塁手として活躍

現役時代は足の速さから谷敷、加藤、石井らとスーパーカーカルテットと呼ばれていた

横浜が4位を記録した時の中心選手でもある


現役通算:13年 1630試合 1700安打 55本塁打 551打点


OB候補2

碓井仁(うすいひとし)

神奈川ベイスターズで遊撃手として活躍

現役時代は髙木と一緒にゴールドグラブ賞を受賞するほど守備の名手

引退後は解説者と経て横浜シースターズの二軍監督に就任

髙木と同様に横浜が4位を記録した時の選手である


現役通算:12年 1550試合 1272安打 125本塁打 500打点




「さっぱりせんな」


会長は一通りの資料に目を通した後ぼそりと呟いた


「会長何がですか?」


「もっと…こう…ワクワクさせてくれる監督候補はおらんのか」


「え…」


あとになって分かったことだが

仰木は体調不良のため、野村は高齢のため、星野は全日本の代表監督のためで候補から外れた



「北越地区担当のスカウトからですが、独立リーグにこのような監督がいるそうです」


眼鏡をかけた男性はスカウトから伝わった情報を会長とその場に居合わせていた上層部に資料として見せた



「ほほう…。杜克己か」



外部招聘候補4

杜克己

神奈川県出身。高校は名門横浜三高、甲子園出場経験あり

高校卒業後は横浜大学に進学、大学3年時には全日本に選出される

JFF神奈川に就職、本業の業績悪化に伴い野球部が廃止

北信越リーグの富山ミリオンスターズに入団

入団4年目で監督代理に就任。翌年正式に監督となる



「この人じゃ、今すぐこの人に交渉をしろ!!」


会長は杜の略歴を見て何かが閃いたようで広報と常務に声をかけた



「これからですか?」


「良いか。色よい返事が返ってくるまで戻ってくるな」


会長の並々ならぬ気迫に押された広報と常務は困惑しながらも頷き、すぐに富山へと飛んだ




■■■■■

富山アルペンスタジアム


球場の外に居てもそれと分かる歓声が聞こえていた


「…本当に来てしまいましたか」


「会長命令ですからしかたありませんね」


「取りあえず試合観戦だな」


「丁度試合中ですしね」


広報担当と常務は窓口でチケットを買って球場の中へと姿を消した




試合は富山が3-2で長野を下した




■■■■■

監督室


「監督、プロ野球横浜から球団関係者がお見えです」


「横浜が…? 選手には内密にして監督室(ここ)に通してください」


「畏まりました」


長野との試合(スコア)を見ながら反省と横浜の関係者が何の用があってきたのかを考えていた

その後数分も立たないうちに球団広報が二名の男性を連れてきた


「杜克己さんでございますね。私、横浜シースターズ球団広報の大森と申します」


「同じく球団常務の三河と申します」


大森と三河は其々名刺を差し出した、杜も名前を述べて名刺を交換した



「杜監督の手腕を見込んで横浜の監督になっていただきたいのですが…」


「はい?」


杜は一瞬耳を疑った

何せしがない独立リーグの監督にプロ野球から監督要請がくることなんて予想だにしていなかったからである

だが、今はシーズン中。ここで返事をしてしまうのはチームの士気に影響すると考えた



「今はシーズン中ですので、そのような話はシーズンオフにでも」


「そうですか…。ですが、今日の貴方様の采配を見て確信しました。是非横浜に来てください」


「いえ…。ですから…」


「本日はほんのご挨拶で。また後日伺います」



そういって広報と常務は監督室を後にした


その後、広報と常務は三顧の礼でようやく杜を頷かせたのは言うまでもない





時は結構流れて10月・・・


静岡県草薙球場では独立リーグ代表決定戦が行われていた



杜がベンチに姿を現わしたのと同時に選手とコーチ陣が一斉に杜を囲んだ


「監督!」


「飯原? これは…」


「監督がプロ野球横浜シースターズの監督に来季からなる事、俺たち知ってるんです」


まだこの時、正式発表をしていなかったが横浜の熱意に負けた杜は監督を引き受けることにした

だがそのことは監督である杜と横浜の上層部しか知らないはず・・・



「俺たちも監督と下で野球が出来て幸せでした。俺たちもいつかプロに行きます!」


「そうか」


「ですから、代表戦勝ちましょう!!」


「おう、そうだな。よっしスタメン発表するぞ!」


「「「うっす!!」」」




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