9話-1:開幕戦~試合前~
3月29日 13:00 東京 後楽園ドーム
試合開始予定時刻は18時にもかかわらず長いペナントシーズンの開幕戦を心待ちにしていたファンが球場の外に長蛇の列をなしていた。その数すでに1万人越
今シーズンから両リーグでの予告先発制度が廃止されたこともあってか、開門までの間ファンたちは両チームの開幕投手を予想していた・・・
「やっぱ、シースターズは箕浦だろ?」
「そうなるよな。じゃ、ウチは?」
「本当に誰なんだろうか…」
先日行われた12球団の集いで発表された開幕登録選手の中から開幕投手が選ばれるのは当然であるが、ツインゴリアスは左のエース内原が登録されておらず、かつてチーム事情で開幕投手を務めた経験のある投手が数名登録されていた。
ツインゴリアスはシースターズとの開幕3連戦の後に控えている名古屋シルバードラゴンズとのカードにエースをぶつけるのでは・・・と各評論家の意見らしい
昨シーズンは名古屋シルバードラゴンズに対して24試合9勝13敗2分けと相性が悪く、仮にシースターズ相手に3連勝を決めてもシルバードラゴンズで勝率を5割にさせないための投手起用ではないのか・・・とか噂されていた
つまり、シースターズは格下扱い。それもそのはず、ツインゴリアスにとってみれば貯金10を稼いだお得意様となっている
同時刻 後楽園ドーム 選手入口
各球場の構造によって選手入口は異なるが、ここ後楽園ドームの選手入口は地下にホームビジター別々に造られている。
そこにシースターズの選手・監督・コーチ陣を乗せたバスが到着した
「よし、いよいよ開幕戦だ。144試合のうちの1試合だが気を抜くな。鶴、昨年は何勝した?」
「6勝です。6勝16敗2分けです」
「今年は逆にしよう。というかするぞ!」
「「「はい!!」」」
「よし、行くぞ。」
「「「おー!!」」」
監督は昨年のツインゴリアスの対戦成績を選手会長である鶴に答えさせ、選手を激励し球場へと足を運んだ
ビジターチームの練習時間とホームチームの練習時間は共に1時間30分だが、先にビジターチームのアップが先というのが通例である
その理由というのがホームチームが先だと開門予定時刻に練習時間が終わってしまうからであるが・・・
※現実には確か逆だったような気が(笑)
※練習風景はちょっと割愛
時間はかなり進んで17時丁度・・・
「やばい、緊張してきた。というかなんで監督は俺を開幕投手に選んだろう…」
「どうした、西田?」
ブルペンでは開幕投手の西田が投球練習をしていたが、ふと思ったことを口に出していた
後ろで西田の投球を見ていた籾山投手コーチ(ブルペン担当)は西田に声をかけた
「籾山コーチ。なんで俺が開幕投手なんですか?」
「気になるのか」
「はい。箕浦さんや甲斐さんがいるじゃないですか?」
「なるほどな。箕浦や勝喜(甲斐の登録名)に比べたら新人のお前じゃ実績がないな。だからと言って箕浦や勝喜が何か言ってきたのか?」
「いえ…そういう訳ではないですけど」
「まぁコーチの俺から言わせてもらうとすれば1年の最初の試合の先発を任せられるなんてよっぽとの事がない限りできないぞ。新人だからと言って萎縮することはない。逆に開き直って楽しむぐらいしてみろ」
「はい!」
(実際、キャンプ中に聞いていたんだがな…。さて、どこまでいけるかな…)
「籾山さん、いつでもいける心構えはあります」
「太亮、中継ぎだけど頑張れよ」
「しかし、監督も面白い采配しますね」
「相手は驚くだろうな。メンバー表を見たら」
一方のグラウンドでは両チームのバッテリーが発表される頃合いで・・・
『試合に先駆けまして両チームの先発バッテリーをご紹介いたします
横浜シースターズ先発は西田、背番号10。キャッチャー鶴、背番号9
東京ツインゴリアス先発は宮原、背番号30。キャッチャー鳥羽、背番号10』
両チームのバッテリーが場内アナウンスされると、一瞬ざわついた声が湧きあがったのと同時に「誰だ?」という声も上がった
「奇策でもなんでもない。西田にはキャンプ中に投手陣の前で伝えたさ」
先発バッテリーを聞いたツインゴリアスベンチは選手とコーチ陣が頭に「?」を浮かべていた
「監督、西田ですよ。箕浦は故障ですかね?」
「ベンチ入りしてはいる。先頭打者で代える方向だろうな」
選手たちはベンチに置かれていた選手名鑑を見て西田の情報を仕入れようとしていた
「西田って、ルーキーだよな」「ルーキーか。気の毒に」「勝ったも同然だな」
と様々な声があちらこちらからささやかれていた
様々な憶測が球場内に飛び交う中、正式な先発メンバー表交換の時間になり、両監督と審判団がホームプレートに集まってメンバー表を交換した
いざ、シースターズ開幕戦へ!