出会い2
『電話貸して』
寝ようと準備していたら、いきなりそう言われた。
いつものこと…。はいはい。そう言って携帯を渡した。
「使いすぎないでよ!」
それだけ言うと、私はシャワ-を浴びにバスタオルを取り部屋から出た。
水色のバスタオルは私のお気に入りで、白のミニタオルとお揃いだ。
タオルの四隅にモンキチョウの刺繍がされてある。
小さな小さなモンキチョウだ。
小さなモンキチョウはとても美しく見えてきて…明るくて…私は一瞬…うらやましいと思った。
なんだか…私は凄く汚い物に見えてきて……凄く不安でしかなくて………慌ててシャワ―を浴びた。
身体中の汚い物が全部流される様に何回も何回も何回も浴びた。
それでも…凄く不安でしかなくて…のぼせるまで……私はいつまでもシャワ―を浴びた。
さすがに少しだけ疲れて…私はタオルに水を染み込ませて…なお…拭っても拭い切れないものを拭った。
小さなモンキチョウが見えて……何故かわからないけど…私はタオルを投げ飛ばした……それでもなお…モンキチョウはとても明るい……そのまま私はその場に佇んだ。
不安でしかなくて動けなかったから……。
Tシャツで体を隠して…私は逃げた。
綺麗なものの側に居たくなかった。
部屋に戻ると…美登里はまだ電話していた…。
『だから…付き合ってよ』
耳を疑った…。
一体何人目よ…。
美登里は明る過ぎる…。
黒アゲハ蝶みたいだ…。華やかさが良く、似合っている…。
無論クラスのみんなは…モンキチョウやモンシロチョウは、こんな美登里を嫌っている。
自分達の側に、そんな黒アゲハ蝶は要らないから…。
私は…烏だけど…眩しいものが好きで…嫌いで…。
何と無くほっておけないんだと思う。
とにかく…側に居なきゃって思っているのかな…。