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・第8話

「…ダルクもやられたか…」

 そういうとギガスはゆっくりと立ち上がった。

「まさか、クリスタルがすべてあの者たちの手に渡ってしまうとはな。私は彼らを甘く見くびっていたのかもしれない」

 そしてギガスは歩き出した。

「ようやく50年かかって封印が解かれようととしていたというのに、こうなってしまうとは。しかし、奴らの幸運もここまでだ」

 そういうとギガスは外に向けて歩き出した。

    *

「…それで、爺さんたちはどうやってギガスを封印したんだ?」

 ユアンがフレイに聞いた。

「かなり大変だったらしいわね。二人とも危うく死ぬんじゃないか、ってところまで追い詰められたっていうし。結局何とか封印することができたらしいけれど」

「そういえばオレの爺さんもその時の怪我がもとで結局オレの親父が生まれて間もなく死んだらしいからな。」

「でもおじいちゃまもよく言ってたわ。『ユアンのおじいさんがいなかったらワシはおそらく命を落としていた』って」


 ユアンはフレイが広げた地図を見る。

「確か爺さんたちがギガスと戦った、というのはこのあたりだろ? どうやらオレたちももうすぐギガスと戦うことになるかもしれないな」

 ユアンが地図のある一転を指さしながら言う。

「そうらしいわね」

「よし、それじゃさっそく明日このあたりを調べてみるか」

    *

 翌日。

 ふたりは町はずれの森の道を歩いていた。

 普段人があまり入らない、ということを街の人たちから聞いたからか、確かにその森の中は鬱蒼とした感じである。

「…50年前もこんな感じだったのかな」

「さあ。おじいちゃまたちのころとあたしたちのころじゃ全く違うもの。でもあまり変わりがないかもしれないわね。…あれ?」

「どうした?」

「ユアン、あれを見て」

 そしてフレイが指差した先には木がへし折られていたのだった。

「何だあれは?」

 そういいながら二人は木に近づく。

「…これは最近折られたようだな」

「…落雷か何かあったのかしら?」

「いや、落雷だったらこんな感じでは折れないだろうし、大体、森の中に歩きに雷が落ちると思うか?」

「じゃあ、誰かが折った、っていうの?」

「でも、これだけの木をへし折るようなんて人間業とは思えないぜ」

 そして二人はあたりを見回す。

 二人の周りは何者かによって荒らされたような跡が残っていたのだった。


 と、その時だった。

 ガサガサッ、という音がすると、2匹の怪物が二人に襲い掛かった。

「ユアン!」

 フレイの声にユアンが後ろを向くと、怪物に向かって袈裟懸けで切り付ける。

 そしてもう1匹をフレイが短剣を突き刺す。

 息をつく間もなくもう2匹の怪物が襲い掛かってきた。

「フレイ、お前はこっちを頼む。オレはあっちをやる」

「わかったわ!」

 そして二人は散る。

 ユアンは大上段に剣を構えると怪物に向かって振り下ろす・

 怪物が悲鳴を上げて倒れる。

 フレイは素早く怪物に近づくとのど元と左胸に2本の短剣を突き刺す。

 これも怪物が大きな悲鳴を上げて倒れた。

「…あとはいないか」

 ユアンがあたりを見回した時だった。

「…ユアン!」

「フレイ、どうした!」

「クリスタルが光ってる」

「なんだって?」

「だから、クリスタルが光っているのよ」

 そう、フレイの持っている2本の短剣のクリスタルが光を持っているかのように輝いたのだ。

 それを聞いたユアンは自分の持っていた剣を見る

 自分の剣に嵌っている5個のクリスタルも輝いていた。

 そう、クリスタルはそれ自体が光を持っているかのように輝いていたのだった。


 その時だった。

「…さすがだな、なかなかの腕を持っているようだ」

 ふいにどこからか声が聞こえてきた。

 二人はあたりを見回した。

 と、二人の目の前に一人の男が現れた。

「…誰だ!」

 ユアンが聞くとフレイが、

「ユアン、ちょっと待って。もしかしたら…」

「もしかしたら?」

「おじいちゃまの言っていたギガスってヤツじゃないの?」

「なんだって?」

「…察しがいいようだな。いかにもそうだ。今から50年前お前たちの祖父という者たちに封印されたギガスだ」

「おじいちゃまたちを知っているの?」

「知っているも何も、50年間の封印が破られ、お前たちは再び封印をするためにここまで来たのだろうが。そしてお前たちも持っている7つのクリスタルが、封印をするために必要である、ということもな。それにしてもまさかお前たちがカミーラやダルクまでを倒して7つのクリスタルを手に入れるとはな。お前たちの力は十分に見せてもらった。私は少々お前たちを見くびっていたようだ」

「まさかお前の方からやってくるとはな、いざ尋常に勝負だ!」

 とユアンが剣を構えるが、

「まあ、待て。今お前たちとここでやるのは容易いが、今日はお前たちの力を見極めに来ただけだ。私はここでやるつもりはない。それに疲れているお前たちを倒したところで私にとっては何の得にもならぬからな」

「なんだと?」

 ユアンが一歩前に進もうとしたが、フレイはそれを押しとどめ、

「それで、どうしようっていうの?」

「明日、もう一度ここでやろうではないか」

「なんだと?」

「だから、明日、もう一度ここでやろうではないか。心配するな。私は逃げも隠れもしない。ここまで来たのだからいずれお前たちとは戦わなければならないと思っていたからな」

「…」

「さあ、どうする? 私の言うとおりにするか? それとも今ここで私と戦って討死をするか?」

「…わかった。お前の言うとおりにしよう」

「ユアン!」

 フレイが言うが、

「明日、またここに来ればいいんだな」

「ああ。約束は守ろう。もしお前たちが来なかったら、お前たちは怖気づいて逃げ出したと思うぞ」

「そんなことはしない! どんなことがあろうとお前を倒してやる」

「行ったな。それではまた明日、ここで会おう」

 そういうとギガスは姿を消した。

「ギガス!」

 ユアンはあたりを見回すが、もうそこには誰もいなかった。

「…ユアン、いったいどうする気なの?

「…やってやるよ。あいつの言う通り、明日また来よう」

「ユアン!」

「もともとオレたちはあいつらを封印するためにここまで旅をしてきたんだぜ。ここまで来て引き返せるか」

「…そうね、確かにそのためにここまで来たんだもんね。ここまで来たら何としてもあいつを倒さなきゃ」

「フレイ」

「ここまで来たんだもん。もう一頑張りしましょう!」

    *

 そして翌日。

 フレイとユアンは昨日も来た森のはずれの道を歩いていた。

 そして昨日ギガスとあった近くまでやってきた。


「…なあ、フレイ」

 ユアンが不意に聞いた。

「何?」

「…怖いか?」

「…とっても怖いわ。ユアンは?」

「オレも、はっきり言って怖いさ。でもな…」

「でも?」

「こういうときこそ怖がっちゃ駄目なんだよな」

「そうね」

「…よし、フレイ、行くぞ!」

「あ、ちょっと待って」

 そう言うとフレイはユアンの首に手を回し、ユアンの唇を吸う。

 一瞬何が起こったかユアンはわからなかった。

 数秒後、二人の唇が離れると、

「お、おい!」

「ごめんね、ユアン。はしたない女だって思わないで。でももう大丈夫」

「大丈夫って?」

「ユアンから勇気もらったから」

「それを言うなら吸いとった、だろ?」

「ハハハ、そうかもね」

「よし、それじゃ行くぞ!」

「うん!」


 そして森の近くに来た時だった。

 ユアンが立ち止った。

「どうしたの?」

 フレイが聞く。

「…どうやら来たようだな」

 そう言うとユアンは剣をいつでも出せるように構える。

 それを見たフレイも短剣を取り出せるように構えた。

 その時だった。

「…来たか、待っていたぞ」

 どこからか声が聞こえ、二人の目の前にギガスが現れた。

「ちゃんと約束通り来たのだな」

「当たり前だ! ここまで来て引き返せるか。お前を倒さなきゃオレたちの今までやってきたことが無駄になっちまうからな」

「…口だけは達者なようだな。だが私が倒せるのかな?」

 そう言うとギガスは剣を抜いた。

「絶対に倒して見せるぜ。行くぞ、フレイ」

「うん!」

 そして二人は剣を抜いてギガスに立ち向かっていった。


 ユアンがギガスに向かって剣を振り下ろす、

 しかし、ギガスはユアンの剣を頭の上で受け止める。

「…何っ!」

 そして次の瞬間ユアンは吹っ飛ばされた。

「ユアン!」

 ユアンに駆け寄るフレイに向けてギガスが剣を振り下ろした。

 すんでのところでフレイがそれを受け止めるが、やはり女であるフレイにはギガスの剣を跳ね返す力がなく、あっという間に跳ね飛ばされてしまった。

「…よし、二人いっぺんに行くぞ」

「わかったわ!」

 そして今度は二人でギガスに立ち向かうが、今度は二人いっぺんに吹っ飛ばされた。

「く…」

 そしてユアンが立ち上がった。

「よせ、何度立ち上がっても同じことだ」

 そして二人はギガスに向かっていくものの、全くと言っていいほど歯が立たなかった。

「…どうした、それだけか?」

 ギガスが言う。

「まだまだだ!」

 そういいながらユアンが立ち上がる。

 しかし、二人が何度立ち向かっていってもギガスは二人の攻撃をはねのける。

「な、なんてヤツだ…」

「こんなに強いなんて…。あの男に隙はないの?」

「隙? …そうか!」

 ユアンが何かひらめいたようだった。

「どうしたの?」

「フレイ、お前は下がってろ」

「え?」

「いいから、オレの言うとおりにしろ! オレが一人であいつとやる」

「でもユアン…」

「心配するな!」

 そう言うとユアンはギガスに立ち向かっていった。

「ユアン!」

 そしてユアンがギガスに剣を振り下ろす。

 しかしギガスは余裕でユアンの剣をかわす。

 ユアンは再びギガスに向かって剣を振り下ろした。

 ギガスはユアンの剣を弾き飛ばす。

「ユアン!」

 フレイが叫ぶ。

 ギガスはにやりと笑うとユアンに向かって剣を振り下ろした。

 思わずフレイが目を背けたその時だった。

「…何!」

 ギガスの声が聞こえフレイは恐る恐る目を向けた。

 そう、ユアンが自分の頭から数センチというところでギガスの剣を白刃取りの要領で止めていたのだった。

「…フレイ、いまだ!」

 ユアンが叫ぶ。

「え…?」

「いいから、早くしろ!」

 そう、ユアンはフレイの言う「隙」をユアンが作った、と理解したのだった。

「う、うん!」

 フレイは助走をすると、ユアンの背中を踏み台にして大きく飛び上がった。

「ええええいっ!」

 そしてフレイは渾身の力を込めて。ギガスに向けて短剣を2本突き刺した。

「ぎやああああ!」

 ギガスが大きな悲鳴を上げる。

「ユアン、今よ!」

「ああ!」

 フレイが叫ぶとユアンが落ちていた剣を拾い、ギガスに向かって走り出した。

 そしてユアンは剣を大上段に構えるとまっすぐに振り下ろした。

 ギガスの体を一直線にユアンの剣が切り裂いた。

「くっ…」

 ギガスの体がぐらりと揺れる。

「…これが、お前たちの…力…か…」

 そしてギガスの体内からまばゆい閃光がきらめき始めた。

「フレイ!」

 ユアンはフレイを抱きかかえると、その場に伏せる。

 そしてひときわ大きな閃光と悲鳴があたりに響き渡る。


 それからどのくらい経っただろう。

 何も音が聞こえなくなり、あたりに静寂が戻った。

 ユアンとフレイは起き上がるとあたりを見回す。

「…ギガスは…?」

 フレイが聞く。

 そこにはギガスの姿はなく、無造作に1本の長剣と2本の短剣が転がっているだけだった。

「倒し…たんだな…」

 ユアンが言うとフレイは何も言わずにうなずいた。

「…終わったあ!」

 そう言うとユアンは大の字に寝ころぶ。

 それを見たフレイが思わずくすっ、と笑い出す。

 ユアンはそれを見ると、

「おまえのその笑顔、久しぶりに見たぜ」

「そお?」

 そういうとフレイはユアンの顔を見つめた。


(エピローグに続く)

(作者より)この作品に対する感想等がありましたら「ともゆきのホームページ」BBS(http://www5e.biglobe.ne.jp/~t-azuma/bbs-chui.htm)の方にお願いします。

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