・エピローグ
「ここか…」
ユアンとフレイはある洞窟の前にいた。
その洞窟には小さなくぼみがあった。
フレイがユアンに目で促すと、ユアンは剣から青いクリスタルを抜くとそのくぼみにはめ込んだ。
くぼみにはまったクリスタルは一瞬輝きを見せるが、そのあっという間に輝きもなくなり、普通のクリスタルに戻っていた。
「…これで、あと一つか」
そう言うとユアンは自分の剣を見る。
5個嵌っていたクリスタルも今は透明なクリスタル1個だけになっていた。
そしてフレイの短剣も2個のクリスタルのうち、ピンクのクリスタルはすでにはまっていなく、赤のクリスタルが残っているだけだった。
*
話はこの少し前、ユアンとフレイの二人がギガスを倒した直後にさかのぼる。
ギガスを倒した直後、ユアンとフレイの二人はそれぞれの剣にはまっていたクリスタル全てをそれそれの剣と短剣から抜いた。
透明―これを二人は「白」と呼んでいたが―、青、赤、黄、緑、紫、ピンク、今二人の手の中には7個のクリスタルがあった。
二人はじっとクリスタルを見ていた。
「…やっぱり違うな」
ユアンが言う。
「何が?」
「ほら、オレたちが旅に出る前のころと比べると『力』を強く感じるだろ」
そう言われてフレイもクリスタルに手をかざす。
「確かにそうね。あたしたちが村を出たころには随分と弱かったけれど、今はかなり強く感じるわね」
「それだけ『封印』の力が強くなった、ってことか」
「そうかもしれないわね」
「どうする? もう二度と復活できないように、ここで壊しちまうか?」
「それはちょっとまずいわよ」
フレイが言う。
「どうしてだ?」
「そのクリスタルは、おじいちゃまは元に戻すべきだ、って言ってたわ」
「元に戻すべき、って…」
「確かおじいちゃまが言ってたわ。7個集まっているときには確かにクリスタルは封印の際にはすごい力を発揮するけれど、もし何かの形で封印の力が破れた時にはその分の力もすごい、って…」
「それじゃ7個集まっているときは危険だというのか?」
「そうらしいわね。そのことがあっておじいちゃまとユアンのお祖父さんが50年前に封印をした時も7個のクリスタルをあちらこちらに分割して、1個だけはおじいちゃまが持ったんだと思うわ。それに…」
「それに?」
「もしユアンの言うとおりに壊したとしたら。またすぐに奴らが復活するかもしれないじゃない。だとしたらせっかくここまで苦労して封印したあたしたちの努力が無駄になっちゃうわ」
「そうか…」
「だから、大変でも今まで来た道を戻って元の場所に戻したほうがいいかもしれないわ。おじいちゃまたちだってそうしたんだし…」
「…そうか、それが正しいのかもしれないな」
そして二人はクリスタルをもとの場所に戻し始めたのである。
*
そして5個目のクリスタルをもとの場所に戻してから数日たったある日。
二人は洞窟の前に立っていた。
そう、その洞窟は二人が最初にクリスタルを手に入れた洞窟だった。
「なんかついこの間だったのに随分と昔の様な気もするな」
「いろいろなことがあったからね。最初のころは全部どころか1個でも集めることができるのか不安だったけれど…」
そして二人は洞窟の中を進んでいった。
まだあたりに何かあるのではないか、と思い慎重に進んでいくのだが何も現れなかった。
二人はある場所の前で立ち止まった。
そこには何やら小さなくぼみの様なものがあった。
「どうやら。ここにはまっていたようだな」
その言葉にフレイはうなずくと短剣を取り出した。
「これが、最後の1個ね」
そういうとフレイは自分の短剣から赤いクリスタルを抜いた。
フレイはそれをしばらくそれを眺めていたが、やがて小さくうなずくと、そのくぼみにクリスタルをはめ込んだ。
クリスタルは一瞬輝きを見せたかと思うと、やがてその輝きは収まっていった。
しかし、以前と違い何やら1つだけでも「力」の様なものを感じた。
「これでひとまずは大丈夫か」
「そうね」
そしてユアンは残った1個のクリスタルを自分の剣から取り出した。
そのクリスタルからも赤のクリスタルと同じくらいの「力」を感じた。
「この力がある限り、封印は大丈夫だという事だな」
「そうね」
「…でも、もし、また封印が破られた時は…」
「心配しないで。その時はきっとあたしたちの孫がまた旅立つわよ」
「は?」
「い、いや、何でもない。独り言よ、独り言」
「そうか、それならいいけどよ。…それじゃ、帰ろう」
「うん!」
そして二人は故郷に向かって歩き出した。
THE END
(作者より)この作品に対する感想等がありましたら「ともゆきのホームページ」BBS(http://www5e.biglobe.ne.jp/~t-azuma/bbs-chui.htm)の方にお願いします。