#08:夜更かしのメンテナンス
瀬戸陽子の、静かな日常に少しだけ外の動きが触れる頃の話です。
大きな出来事はありませんが、生活の中に小さな変化の気配があります。
1/1 25:15
いつも通りマイクをミュートにしたまま、キーボードを叩く。
『お疲れ』
すかさずヘッドホンに届く仲間達の声。
「おつー」
「サンキュー、またね」
「今日も助かったよ、ありがと」
その一言が、タイピングの手を一瞬止めた。
こんなふうに言われることは、あまりない。
私はいつも皆の後ろで応援して、
邪魔にならないようにアクションしているだけだ。
褒められるようなことなんて、何もしていない。
「……まぁいいか」
部屋の空気は、昼間よりも静かだった。
外の気配はほとんど届かない。
冷たい水でコップを流し、手が勝手に動くまま伏せた。
いつも通りの寝る前のルーティン。
窓の外の燈が、いつもよりも少ないように見えた。
ベッドに入り、深く息を吐く。
スマホの画面を見る。
通知は来ていない。
それでも、画面を裏返しに置いた。
心地よい疲れが眠気を誘う。
なんて変哲もない、ただの1日だった。
読んでくださってありがとうございます。
陽子の世界はまだ静かなままですが、外との接点がゆっくりと生活に滲み始めています。
その微細な揺れを、これからも淡く追っていけたらと思います。




