#07:非公式のパッチファイル
瀬戸陽子の、静かな日常にわずかな外の気配が混ざる頃の話です。
大きな出来事はありませんが、生活の中に小さな揺れが生まれています。
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テクスチャを貼ったようなビルが、無機質に並んでいる。
ただ目的の物を購入するだけの“お使いクエスト”。
スーパーの棚の前、昨日と同じハム&チーズのパッケージを探す。
「……やっぱり無いか」
しばらく悩み、似たようなのを選んで精算する。
スーパーを出た陽子は、レジ袋を片手に歩き出す。
ポケットの中でスマホが震える。
歩きながら画面を開くと、家族LINE。
「明けましておめでとう。今年もよろしくね」
一瞬遅れて、こたつから顔だけ出している猫の写真が表示される。
「……かわいい。これは降参だよ」
口元がふっと緩む。
短く返してスマホをしまう。
身体は冷えていくのに、心だけはまだ少しあたたかいままだった。
陽子はまた無心に歩き出す。
レジ袋が揺れる音だけが、静かな道に混ざった。
読んでくださってありがとうございます。
陽子の世界はまだ静かなままですが、外の気配が少しずつ生活に触れ始めています。
その微細な変化を、これからも淡く追っていけたらと思います。




