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瀬戸陽子シリーズ  作者: 瀬戸 陽子


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3/17

#03: 聖域の外側

瀬戸陽子の、変わらない日常の中にある小さな揺れを描いた短い話です。


特別な出来事はありませんが、静かな生活の密度をそのまま置いています。

12月31日 13:30


「ねえ、美味しいもの食べに行こうよ」

「無理」


「即答?」


「寒い。それに、これからログボ回収しなきゃいけないし」

コタツに潜り込んだまま、私はスマホの画面をタップする。


「そんなの電車の中でやりなよ。大晦日だよ?」


「外に出るリソースがもったいない。お昼は昨日のピザの残りで十分」


「ダメ。せっかくの一年最後なんだから。今夜のために、最強の『神アイテム』ゲットしに行こう?」


「......課金? 悪いけど、今日はお金使わないって決めてるから」


「リアルのやつ! 広報の私のセンス、信じなさいって」


「ゲーミング手袋? 持ってるけど」


「秘密。ほら、脱出!」


相変わらず、強引なんだから。

…………まあ、いいか。年末だし。

文句を言いながら、私は重い腰を上げた。


大晦日の街は、驚くほど静か。

ゲームが始まる前の、誰もいないロビーみたいだ。


でも、辿り着いたカフェ 『Annex 44』だけは、活気にあふれていた。


高い天井に、楽しげな話し声が響いている。


「これにする。チキンオーバーライス」


運ばれてきた一皿は、スパイスのいい匂いがした。 一口食べると、チキンが口の中でホロホロとほどける。


「......美味しい」


昨夜のピザの匂いが、鮮やかな味で上書きされていく。

身体のシステムが、正常に戻っていくのがわかった。


駅ビルのデパ地下に寄ると、真希は

「陽子にはコレでしょ!」 と小さな紙袋を手に取った。


「中身、食べ物?」


「機能的な『補給物資』。指が汚れない工夫がしてあるの。 帰ってから開けてみて」


そのまま、改札で別れた。電車に揺られながら、少しずつ「ソロモード」へ。


一人じゃ絶対に辿り着けなかった大晦日ルート。


お腹と心のHPは、だいぶ回復した。

あとは聖域へ帰って、戦利品を確認しよう。


読んでくださってありがとうございます。


陽子の世界はまだ大きくは動きませんが、日々の中にわずかな変化が積もり始めています。


その微細な揺れを、これからも静かに追っていけたらと思います。

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