#17:夕暮れのシフト
夕方の光は、昼とも夜とも違う“切り替わり”の気配を持っている。
世界がゆっくりと次のレイヤーへ移動していく中で、
部屋の中だけは、まだ前の時間を引きずっている。
陽子にとっては、この“境目”の時間が
いちばん自然に身を置ける場所なのかもしれない。
#17 は、そんな夕暮れのシフトの話です。
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カーテンの隙間から入る光が、少しだけ角度を変えていた。
陽子はコタツの中で足を伸ばす。
ゲームの画面では、さっきの白い文字がもう消えている。
ヘッドホンを外すと、さっきまでのBGMがふっと途切れた。
外から子どもの声がかすかに届く。
「……ふぅ。」
短く息をついて、スマホを手に取る。
画面は静かで、通知はまだ増えていない。
冷蔵庫からハム&チーズをひとつ取り出し、そのまま口に運ぶ。
噛むたびに、体の奥のクールタイムが少しずつ短くなる。
コタツに戻ると、省エネモードが勝手に起動していた。
肩にひやりとした空気を感じて、目を開ける。
スマホを手に取り、時間を見る。
【18:34】
どうやら寝ていたらしい。
通知が一通。
『真希:また今度飲みに行こうねー!』
指が軽快に滑る。
「行けたらいく」
日が沈んだ部屋の中で、胸のあたりがほんの少しだけ温かい。
夕暮れは、何かが終わるわけでも、
何かが始まるわけでもないのに、
どこか“次のレイヤー”へ移行する気配がある。
陽子は特別なことをしない。
ただ、光の角度や、冷たい空気や、
通知の文字に合わせて、静かに位置を変えていくだけ。
その小さな移動が、彼女の一日の終わりを
ゆっくりと形づくっていく。
これで、瀬戸陽子シリーズはひとまず区切りです。
決して大きな出来事も無い日々の連続。
ほんの少しでも『瀬戸陽子』の影を感じて頂けたら嬉しいです。
読んでくださって、ありがとうございました。




