#13 未踏のマップ
瀬戸陽子の、静かな日常に外の気配がわずかに残る頃の話です。
大きな動きはありませんが、生活の端に小さな余韻が滲んでいます。
1/3 20:06
鍵を回す音で、部屋の静けさが途切れた。
扉を開けると、外の空気が思ったより冷たい。
部屋にいても、落ち着かなかった。
マフラーを巻き直し、歩き出す。
歩幅が自然に広がる。
……夜のマップ、最近更新してなかった。
暗い道に、街灯だけが等間隔に並んでいる。
シャッターの降りた商店街の中、吐く息だけが白くて目立つ。
階段を降りると、暗い通りの先にひとつだけ光があった。
前にも、ここに来たことがある。
数少ないマッピング済の場所。
Bar『Crescent Moon』。
三日月の看板が、静かに光っている。
一呼吸おいて、冷えた指先で真鍮のノブに触れる。
重みを押し込むと、カラン、と乾いた鈴の音がした。
読んでくださってありがとうございます。
陽子の世界はまだ静かなままですが、外との接点が少しだけ後を引き、
日々の中に薄い余韻として残りはじめています。
その微細な揺れを、これからも淡く追っていけたらと思います。




