#12:未読の通知
瀬戸陽子の、静かな日常の中にわずかな内側の揺れが生まれる頃の話です。
大きな動きはありませんが、生活の奥に小さな温度が差し込んでいます。
1/3 12:13
ノートPCを閉じると、部屋の空気が少しだけ静かになった。
無機質な冷蔵庫の音が、ゆっくりと背景に戻っていく。
次はスマホの日課を……あれ?どこだ。
コタツの周囲を見渡す。……無い。
薄い昼の光が、テーブルの縁だけを白くしている。
寝室。……無い。
昨日のロケーションログをざっと辿る。
……家の中だ。
洗面台に置きっぱなしにしたことを思い出す。
タイルの上に置かれたスマホは、まだ冷たかった。
画面をつけると、未読の通知がひとつ。
薄暗い洗面所が青白く滲む。
『真希:まだ寝てるー?』
「おはようw」
すぐに返信が届く。
通知音が、静かな部屋に軽く跳ねた。
『真希:久しぶりに飲もうよ』
「忙しい」
『真希:今日はイベント更新ないよw』
「そうだっけ。今日何曜日?」
『真希:土曜だよw!
今日そっち戻るし、明日も休みでしょw』
……少し指が止まった。
「行けたらいく」
……着替えるか。
読んでくださってありがとうございます。
陽子の世界はまだ静かなままですが、日々の積み重ねの中で、
内側にほんの少しだけ温度が宿りはじめています。
その微細な変化を、これからも淡く追っていけたらと思います。




