第4章:その手を掴むということ
倉庫の中は暗く、遠くから聞こえる雨音だけが響いていた。
悠人の告白は、瑠璃の心を包む氷を静かに溶かし始めていた。
どれくらい時間が経っただろうか。瑠璃は泣き止み、震えながら、ゆっくりと顔を上げた。その琥珀色の瞳は、恐怖ではなく、決意と、深い愛を帯びていた。
そして、彼女は動いた。
膝を抱えていた手をほどき、自分から、悠人の手のひらを探り始めた。
悠人は、床に置かれた冷たいマグカップを避けるように、ただじっと、その手の動きを待った。
瑠璃の冷たい手のひらが、僕の温かい手の甲に、そっと重なる。
それは、まるで猫が警戒しながら、初めて人間に擦り寄るような、儚く、勇気に満ちた接触だった。
その瞬間、僕の中の何かが弾けた。
「瑠璃……!」
僕は力を込めて、その冷たい手を強く、深く、握り返した。拒絶されることへの恐怖は、もうなかった。彼女が初めて見せた、愛を求める行動だったからだ。
握られた瑠璃の手は、僕の温もりを吸い込むように、じんわりと温まり始めた。そして、彼女の琥珀色の瞳から、安堵と、愛おしさが混じり合った、熱い涙が溢れ出した。
その涙の一筋が、僕の握りしめた手の甲に、温かく零れ落ちた。
強く手を握りしめ、僕は心の底で囁いた。
(独白)
冷たい手のひらが、僕の温もりを求めている。
握られた手の冷たさと、手の甲に触れた涙の熱さ。それは、彼女が過去の檻から抜け出し、僕の愛を受け入れた証だった。
ああ、今、この瞬間。
これこそが、僕が求めていた、そして彼女が初めて僕にくれた、かけがえのないもの。
『冷たい手のひらに残る、琥珀色の温もり』。
僕たちは、その温かさを、永遠に失わないと誓うように、ただ強く、強く、手を握りしめ続けた。




