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【無人島アプリ】

作者: シオヤマ琴
掲載日:2025/11/14

海風に鼻腔をくすぐられ、目を開けてみると、眼前には広大な海があった。


「こ、ここは……?」


◆ ◆ ◆


あれは修学旅行先の千葉へ向かうバスの中の出来事だった。

俺たち信楽高校1年3組の生徒たちは、バスガイドさんの歌声を満喫しながらバスに揺られていた。

その時の俺の座席は右側の窓際だった。

その席からは太陽に照らされてキラキラと輝く海がよく見えた。


「ねぇねぇ」


そんな俺に話しかけてきたのは隣の席に座る女子、花崎晶だ。


「なに?」

「勇樹くんって泳げる?」

「え、泳げるけど……なんで?」

「実はわたし泳げないんだよね、だから今回の修学旅行ちょっとだけ憂鬱なんだぁ。だってみんなは普通に泳げるのに、わたしだけ浮き輪なんて恥ずかしいんだもん」

花崎さんは頬を膨らませて言う。

クラス委員である花崎さんにも苦手なことはあるようだ。


「そっか……じゃあ向こうに着いたら教えてあげようか? 俺もそんなに上手いわけじゃないけど、人並みには泳げるからさ」

「本当!? ありがとう!」

彼女はとても嬉しそうな顔をしてお礼を言ってくれた。

「こちらこそ」

そんな会話をしたところまでは覚えているのだが……。


◆ ◆ ◆


「ここ千葉じゃないよな……? っていうかみんなはどこだ?」


辺りを見渡していると、ふと自分のスマホが鳴っていることに気付いた。


制服のポケットからスマホを取り出し、

「……えっ!?」

思わず声が出てしまった。

なぜならスマホの画面には【無人島アプリ】と赤い文字が表示されていて、俺にとってはまったく身に覚えのないそのアプリがすでに起動していたからだ。


「なんだこのアプリ?」


とりあえずホームボタンを押してバックグラウンドに戻そうと思ったのだが、ホームボタンは反応しない。


「マジか……」

仕方なくアプリを閉じようとしたのだが、それも不可能だった。

そして何度押しても無反応なため諦めてスマホの電源ボタンを長押しするが一向に切れない。


「おいおい、嘘だろ?」


困惑しながら他のボタンも試してみるものの結果は同じだった。


「どうするか……スマホが使えないとマズいよな、やっぱり……」


ここがどこかも、自分の身に何が起こったのかもわからないが、唯一の連絡手段が使えないのは困る。

途方に暮れていると突然【無人島アプリ】のアイコンが震えて明滅し始めた。


「うわっ!! びっくりしたぁ……」


慌てて後ずさりするが、すぐに冷静になる。

おそるおそる【無人島アプリ】のアイコンをタップしてみると、次のようなメッセージが表示された。


【チュートリアルを開始します】


その下には【Yes】と【No】のボタンがある。

訝しみながらも【Yes】を選ぶと、機械音声が流れ始めた。


『はじめまして、龍宮勇樹様。あなたは挑戦者に選ばれました』


「えっ?」

つぶやくが、機械音声は俺の声など気にせず続ける。


『あなたの使命はこの島で生き延びることです』


「い、生き延びるって……どういうことだよ」


わけが分からず混乱していると、目の前に奇妙な生物が現れた。

それは体長約150センチほどの緑色をしたトカゲのような姿で、額には白いダイヤマークがあった。


「なん……だ……こいつ……?」


その異様な生き物を見て愕然とする。

するとその怪物は、口から涎を垂らしながらこちらに向かってくるではないか。

しかも意外と早い。


『さあ戦ってください』


スマホから響く無機質な声。


「いや無理無理無理!! こんな状況でいきなり戦えとか言われても困るんだけどっ!?」


慌てふためきながらも、俺は回れ右して、全力疾走で逃げ出した。

しかし、相手の方が速いらしく、徐々に距離が縮まっていく。


そして次の瞬間、

「うがっ……!?」

首元に激痛が走った。と同時に、

『龍宮勇樹様、残念ながらゲームオーバーです』

突如として鳴り響いた不気味な音楽。

その直後、俺の意識は暗闇の中へと吸い込まれていった……。


◆ ◆ ◆


……ん?


ふと気付くと、俺はまた浜辺に立っていた。

ただし先ほどと違う点が一つある。それは右手に剣を持っているということだ。


「な、なんだよ、これ……さっきのは、夢なのか……?」


『再度挑戦しますか?』

機械音声が喋り出し、スマホの画面にはまたしても【Yes】【No】の二択が表示される。


「ちょ、ちょっと待ってくれっ。一体なんなんだこれはっ? さっきの生き物はなんだよっ、俺に何が起こったんだっ? そもそもここはどこだ、ちゃんと説明してくれっ!」

機械音声相手に必死に懇願する。


今しがたトカゲの怪物に咬まれたはずの首元には一切傷がないものの、死を意識するほどの激痛は間違いなくあった。

二度と痛い思いをするのは御免だ。

わらにもすがる思いでスマホに話しかけた。

すると、一拍あってから無機質な声が返ってきた。


『龍宮勇樹様、あなたは挑戦者に選ばれました。挑戦者には無人島でのサバイバル生活が待ち受けています』

「無人島でのサバイバル……?」

『この島にはモンスターが無数に生息しています。挑戦者はモンスターを倒すことで、そのモンスターの強さに応じたアプリ内で使えるポイントを獲得できます。また、チュートリアル中のみ、死ぬと武器を手にした状態で生き返ることが出来ます』

「んなアホな……」

『この島は無人島ですが、龍宮勇樹様と時を同じくして、挑戦者として選ばれたほかの方々も複数名この島にいらっしゃいます』

「え、俺以外にも人がいるのかっ?」

『その他、詳しい説明はスマホの無人島アプリをご覧になってください。それでは、龍宮勇樹様。再度挑戦しますか?』

「お、おい、まだ訊きたいことが――」


スマホの画面に表示された【Yes】【No】の文字が、俺を急かすかのように赤く点滅し出した。

くそっ。

……もういっそのこと【No】を選んでやろうか。

そう思うも、もしそれで俺の人生ごとゲームオーバー。なんてことになったりしたらと悪い想像を掻き立てられ、俺は迷った末に【Yes】の文字をタップした。


それを待っていましたとばかりに、例のトカゲが俺の目の前に姿を現した。

ただ、今回は前回とは違い、俺の右手には剣がある。

俺は逃げ出したい気持ちを抑え、意を決して剣を構えた。

すると突然、頭の中にイメージが流れ込んできた。


「こ、これは……」


そのイメージというのは、剣を振るう動作についてのものであった。

イメージ通りに身体を動かせば、上手く立ち回ることが出来るという確信めいた予感もあった。

イケるかもしれない。


「よしっ!」

俺は掛け声とともに跳躍すると、落下しながらトカゲに向けて剣を振り下ろした。


「ギャオォオッ!!!」

断末魔の叫びを上げるとともに、トカゲは血飛沫を撒き散らして地面に倒れた。


「はあ、はあ……」

肩で呼吸をしながら足元を見る。


「やった……のか?」

驚くほどあっさりとトカゲは絶命し、霧散して消えていった。

つぶやく俺に対して、スマホから機械音声が流れてくる。


『モンスターを討伐しました。龍宮勇樹様に10ポイント入ります』


「おお。ほ、本当に倒せちゃったぞ。それにしてもポイントってのは何に使えるんだろう」

あらためて【無人島アプリ】を眺めてみる。

すると画面上部にある『アイテム』という欄が目に留まったので、そこを指で触ってみた。

ピコーン!

電子音とともにスマホの画面には、ありとあらゆる品物が一覧になってズラリと表示された。その数なんと数百種類以上。


「すげぇ……」

思わずうなってしまう。しかし気になる点もある。

おそらくポイントを消費することでこれらを手に入れられるようだが、その品物はどうやって届くのだろうか。

まさかドローンが運んできてくれたりはしないだろうし……。


ぎゅるるる~。


考え事をしているうちに、俺の腹の虫が悲鳴を上げた。

思い返せば、朝早くにパンを一枚食べただけで、昼ご飯もまだだ。

スマホを確認すると、今は午後四時を回ったところ。


「そうだな。まずは何か食べよう……」


ひとまずポイントを使って食料を調達しようと思い立つも、肝心のポイントはさきほど手に入れた10ポイントのみ。


「うう……10ポイントで何か買えるかな」


なけなしのポイントで何ができるか調べようと【アイテム】から【おにぎり】の項目を押してみた。

すると、以下のような説明文が表示された。


【おにぎり ×1個(中)/価格:1000ポイント】


「1000ポイントっ!? そんな高いのかっ……まいったな」


どうしたものかと思案していると、突如として【メッセージ】というタブが点灯したことに気が付く。


「ん? なんだろ……」


そこに触れてみると、

『挑戦者の皆様にお知らせがあります。本日夕刻より島全体で豪雨となり、夜半過ぎまで降り続きそうです。この雨を耐え凌ぐためには、洞窟などの自然的な雨宿り場所を利用するか、防水性のある衣類・傘などが推奨されます。なお、防水シート等は10ポイントにてご用意しております』

「おぉ……」

さらに続けて、

『チュートリアル終了後、本チュートリアルにて獲得されたポイントおよびアイテムの全ては没収されますので、ご注意ください』

との注意事項が案内された。


「マジか……」

周りを見渡すが、洞窟らしきものは見当たらない。

そうこうしている間に空模様が怪しくなってきた。


「腹は減ってるけど、仕方ないか……」


さっきのトカゲを百匹倒さなければ、おにぎりは手に入らなそうだし、今にも雨が降り出してきそうだ。

逡巡したのち、俺は雨ガッパを10ポイントで購入してみる。

すると刹那、俺の足元に黄色い雨ガッパが具現化した。


「うおっ、マジで出たぞ!」


雨ガッパを拾い上げ、早速制服の上から着てみた。

どういうわけか、サイズもぴったりだった。

そして、それと引き換えに俺の手持ちのポイントは0になった。


豪雨の中、俺は洞窟などの雨宿りできる場所を探し歩く。

雨ガッパは手に入れたものの、チュートリアル終了時に獲得ポイントとアイテムは消えるらしいので、その前になんとしてでも拠点となる場所を見つけておきたい。


「あ~、腹減ったな……」


【無人島アプリ】とやらの詳細な情報も調べたいが、この雨の中ではそれもままならない。

なんとしてでも雨を凌げる場所を見つけないと。


ガサガサッ。


「っ!?」


近くの茂みから何かの気配がした。

慌てて剣を抜き放つ。

構えを取ったまま、茂みの中を凝視しつつ、そっと後ずさりをする俺。


「モ、モンスター、来るなら来いっ……で、でも出来れば来るなよっ……」


するとその草むらから現れたのは――

「勇樹くん!?」

「えっ……は、花崎……さん……?」

「よかったぁ、他にも人がいたぁ!」

涙目になりながらも抱きついてきたのはクラスメイトの花崎晶さんだった。

花崎さんは、俺の顔を見ると安心したのか、泣き出してしまった。


「ご、ごめんね……私すごく怖くて……」

「う、うん、で、でもちょっと待ってっ」

俺の胸で泣いている彼女をなだめる。

俺自身も内心かなり焦っているのだ。


「ど、どうして花崎さんがこんなところに……」

「わかんないよぉ……気が付いたらこの島にいたの……」

「そ、そっか。実は俺も一緒でさ……なんか変なアプリがスマホに入ってて、それでチュートリアルみたいなのが始まって、わけも分からないままモンスターと戦って、ポイントみたいなのを貰って、それから……」

「私も一緒だよっ……大きなクモに追いかけられて、必死で逃げてきたの、そしたらいつの間にかここにたどり着いて……」

「そうなんだ……」


話を聞く限り、どうやら花崎さんも俺と同じ境遇らしい。

ということはだ、この島にいるほかの挑戦者というのも、もしかしてみんな俺のクラスメイトたちなのかもしれない。


「そ、それで、勇樹くん。わたしたち、これからどうしよう……」


少し落ち着きを取り戻した様子の花崎さんが、俺の顔を見上げて言った。


「そうだな……とにかく今は雨風を凌げる場所を見つけないと」

「うん……」

花崎さんは赤い傘を持っていたが、モンスターから逃げている内に木の枝にでも引っ掛けたのだろう、あちこち破れて穴が開いていた。


「とりあえず、これ着て」

「え、でもそれじゃあ勇樹くんが風邪ひいちゃう……」

「俺は大丈夫だから。それよりこのままだと花崎さんの方が風邪ひくよ」

「でも……」

「いいから、はい」


押し問答している時間ももったいないので、俺は半ば強引に雨ガッパを花崎さんに着せた。


「あ、ありがとう。勇樹くん」

「じゃあ、行こうか」


幸いなことにしばらくすると雨が小降りになってきた。

このぐらいなら濡れても平気そうだ。


「あ、勇樹くん、あっちに建物があるよっ」


隣を歩く花崎さんが指差した方向には、小さく黒い影があった。

近づいてみると、それは木造の廃屋だった。

扉を開けると、ギィィというきしむような音が鳴った。


「うわぁ、ボロボロだね……」

花崎さんが言うように、室内は荒れ果てており、床板が腐っていたり壁が崩れ落ちていたりしていた。


「まあ屋根があるだけマシかな」

「そうだね……」

雨ガッパを脱いだ彼女は床に腰を下ろした。

少しだけ離れて、俺も床にあぐらをかいた。


「……」

「……」


お互い、疲労や困惑、空腹などが重なって、言葉が出てこない。

沈黙が続く。


「……ねぇ」

ややあってから彼女が口を開いた。


「ん?」


彼女の目線は斜め下に向けられている。表情が見えない。


「わたし、バスの中で泳げないって言ったでしょ。だから、正直に言うと今回の修学旅行あんまり楽しみじゃなかったの……」

「ふーん」

「でもね、勇樹くんが泳ぎ方教えてくれるって言ってくれたから、ちょっとだけ楽しみになってたんだ」

そして彼女は顔を上げ、俺の方を見る。


「こんな状況だけど、ううん。こんな状況だからこそ、勇樹くんに会えてよかった」

そう言うと再びうつむいてしまう花崎さん。

顔が少し赤いような気もするが、まさか風邪を引いてしまったんじゃ……。


一分ほど経った頃だろうか、

「……あのさ、勇樹くん」

口を真一文字に結びつつ、花崎さんが俺の目をじっと見つめてきた。


「も、もしよかったらなんだけど、一緒に協力し合わない……?」

「……え?」

「これからどうなるかわからないけど……一人だと不安だし、二人なら助け合えると思うの。だ、だから……」

「うん、別にいいよ」

「本当っ!? ありがとう!!」

俺の両手をギュッと握って顔をほころばせる花崎さん。

心底嬉しそうな彼女の表情に、気付けば俺もつられて笑っていた。



すやすやと眠る花崎さんを横目に、俺は【無人島アプリ】の詳細の書かれたページに目を通していた。

そして、小一時間ほどそれを熟読してわかったことは、以下の通りだ。


・無人島に生息しているモンスターは数百種類。

・モンスターにはレベルがあり、倒すとそのレベルに応じたポイントを獲得できる。

・チュートリアル期間中は何度死んでも自動的に生き返る。

・チュートリアルは丸一日。

・俺が倒したトカゲは無人島の中ではかなり弱い部類に入るらしい。

・ポイントで購入できる一番安い食べ物はおにぎり(小)、一個500ポイント。

・ペットボトルに入った飲料水500mlも500ポイント。

・必需品であるスマホのバッテリーも500ポイント。

・1万ポイントでイカダ、10万ポイントで手漕ぎボート、100万ポイントでクルーザーと交換できる。

・死んだ者を生き返らせる蘇生薬というアイテムもあるが、1000万ポイントが必要。

・戦うための技術の補助をアプリにしてもらうことも可能だが、チュートリアル期間外はポイントを消費する。

・スキル、武器や防具の強化、アップデートなどが存在しており、これらにもポイントが必要。

・モンスターは基本、夜行性。夕方以降になると特にレベルの高いモンスターが活発になる。


ざっとまとめるとこんな感じだ。

やはりこの謎のアプリを使うには、ポイントが必須だということになる。

問題はそれをどうやって稼ぐか。

さっきのトカゲみたいな低級モンスターを百匹狩っても、食糧はわずかしか手に入らない。


「……まいったなぁ」


独り言が漏れる。


「……ん、勇樹くん……?」


その声で目を覚ましたのか、花崎さんが目をこすりながら上体を起こした。


「あ、ごめん。起こしちゃった?」

「ううん。わたしの方こそ一人で寝ちゃってごめんなさい。勇樹くんも横になって、今度はわたしが起きてるから」

「ああ、ありがとう」


実を言えば眠気が限界だった俺は、素直に彼女に甘えることにした。

硬い床の上ではあったが、横になり、目を閉じるとあっという間に睡魔に襲われた。


翌朝――


「おはよう。勇樹くん」

「ぅん……ああ、おはよう花崎さん……」

花崎さんの挨拶に応える。

彼女は俺の横で、雨ガッパをきれいに折り畳んでいる最中だった。


「勇樹くん、このカッパまだ使えそうだから大事にとっておこう。ね?」

「え、それは無理じゃないかな……」

「そんなことないよ。全然きれいだもの」

「あ、いやそういうことじゃなくて」

「?」

きょとんとした顔つきの花崎さんに、俺は昨晩【無人島アプリ】を調べて得た知識を伝えた。


「……というわけで、チュートリアル期間中に手に入れたアイテムはチュートリアル終了時に全部なくなるらしいよ」


すると彼女は、ハッとしたような表情を浮かべた。

俺の言っていることを理解したらしい。


「そっかぁ、残念……」


明らかに落胆している花崎さん。

そんな彼女を見て、俺は不謹慎にも、喜びに似た感情を抱いていた。

なぜなら、いつもはクラス委員としてしっかりしている花崎さんの、表情がコロコロ変わる様子を見ることが出来たからだ。

正直言うと、彼女のことは、もっととっつきにくい女子だと思っていたのだ。


「勇樹くん? なんで笑ってるの?」

「いや、別に」

「何、気になるじゃん」

「本当になんでもないよ」


などと話していると、きゅるるると可愛らしい音が花崎さんの方から聞こえた。

咄嗟にお腹を押さえる花崎さん。


顔を赤らめ、

「き、聞こえた、よね?」

と上目遣い。


「ふふっ、お腹空いたね。俺も腹減ったよ。ちょっと外に出て食べられる物がないか探してみよう」

「……うんっ」


小屋を出た俺たちは、小屋の周辺を歩いて回った。

その結果、意外にもリンゴやみかん、柿の木などを見つけることが出来たのは嬉しい誤算だった。

おにぎりに1000ポイントも必要なので、てっきりこの島には食べ物などないと思っていたのだが……どうやら空腹で死ぬことはなさそうだな。


◆ ◆ ◆


「あ~、お腹いっぱい」

「ふう、味はともかく腹は膨れたな」


ピーピーピー!


腹をさすっていると、俺のスマホが、けたたましく鳴った。

ポケットから取り出して、画面に目線を落とすと、

「げっ、ヤバい。充電が切れそうだっ」

俺のスマホの充電のメモリが10パーセントを切っていた。


この島ではスマホがすべてと言っても過言ではない。

もしスマホの充電が切れたら、スマホ用のバッテリーを入手することも出来なくなり、詰んでしまう。


「スマホのバッテリーって、たしか500ポイントだったよね?」

「あ、ああ……マズいな」


一難去ってまた一難とは、まさにこのことだ。

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