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今界夢幻界姫  作者: Bow Truth
プロローグ
4/4

再登録は説明がなくて楽


「なんと言うかあっけねえな」


「随分と手慣れていたわね……」


「まあよく襲われるので」


 私はそう応えながら先ほど襲ってきた野盗を道端に転がす。


 これまで遭った回数は10回以上――正確には覚えているのが10回ほどで、実際はすでに50近くに上るかもしれない。なんせどこ行っても人攫いや盗賊に襲われるのだから。もはや奴らは飽きてきた旅路を盛り上げるネタにしか思えなくなっている。

 

 今回もリゼから「街へ行く」と言われ、街道に出た時点でもう確信していた。そしたらイメージ通りの野盗がイメージ通りに出てきてくれたので私が適当に処理して今に至る。


「相手の口上を言い切る前に全員倒すとは思わなかった」


 そう呟くロビン。


「でも瞬殺するのはこういう人気のない街道とかです。街中にいる人攫いはあんまり目立つのは良くないと思って、わざと捕まってから連れ去られた場所でボコしています」


「……すぐ気絶させてくる人もいるんじゃない?」


 今度はリゼからの質問だ。そういえばそんな人もいたような。その時は確か――


「その時はすぐ拘束を解いて静かに締め落としたはず……単独だったので助かりました」


「へー……」


 なんか質問に答えていくたびに引かれてる気がする。いやこればかりは気にしてもしょうがないか。だって遭っちゃうし……。




 



 夕方ごろになると目的の街にたどり着くことができた。

 街の入り口にはデカデカと「アルデーヌへようこそ」という看板が出迎えてくれる。


「アルデーヌ……?」


 私が疑問符混じりに呟くとロビンが答えてくれた。


「東にある大森林の名前がアルデーヌの森なんだ。森に行く人たちはここに拠点を張るから、総じてここもアルデーヌとなっている」


「つまりこの街はの名前はアルデーヌ?」


「いや? 確か違う名前だったはずだが誰も覚えてないし気にしてない。ここは傭兵の聖地といえば通じるからな」


 あっ、ここが傭兵の聖地なのか。以前、傭兵組合に所属していた時傭兵の聖地という言葉をよく聞いた。


 曰く、傭兵として活動したいなら東の端ににある街だ。敵がわんさかといる大森林に近く、街の店も傭兵業に関連するものばかり、行き交う人見れば初心者から玄人と幅広く人が集まる。


 確か誰かがこんな説明をしていた。

 ――さらにその独特な景観と雰囲気が刺さる人もいるらしいが……。



 傭兵らしきゴツい人がそこら中にいるがそれ以外はいたって普通の街、それが街に入った時の感想だ。特別不思議な空気感は感じない。


 そのことを2人に言うとリゼは、


「それは傭兵業があなたにあってるんじゃない?」


 と苦笑しながら言った。






 夕方の組合は帰ってきた人の群れで大混雑していた。受付は大忙しで傭兵の対応をしている。


「やっぱりこの時間は混んでるわね」


「さすがに今日中に登録するのは無理じゃね?」


「いや、今日中に登録して明日の朝イチから森に行く!」


「ええぇぇ……」


 わかりやすく面倒そうな顔をするロビン。だが気持ちはわかる。この中に突撃して長い時間一つの受付場所を拘束するのは申し訳ない。でもこれだけ大きな組合の支部が受付と登録を分けてないの?

 

 そんなふうに思って周りを見ると、ちょうどそこに「登録窓口」と矢印が書かれた看板が。

 

 分けてあるじゃん……。


 私は二人の袖を引っ張り、その看板に指を刺すと、


「「……あ」」


 と声を漏らした。


「そういえばそんなもんもあったな」


「あれできたの二週間前だっけ。使わないものと思って頭から抜けてたわね。告知もされなかったし」


 どうやらどこに行っても傭兵たちは余計なことを頭に入れられないらしい。



 窓口は端っこの見つけにくい場所に小さく存在した……が、そこにいたのは読書しながら茶をしばいている受付嬢だった。


「登録したいのですが」


「……」


「登録……」


「……」


「あの!」


「ふぇっ!?」

 

 やっとこちらを向いた彼女は目をぱちくりとさせて……いや来客に気づかないって受付嬢失格では?


「登録したいです」


「あっはい、ちょっと待ってください」


 するとドタバタと慌ただしく目の前のものを片付け、用紙とペンを用意した。


「えっとそれじゃ……名前と年齢と、戦闘スタイル?を教えて」


「ハンナ、14歳、戦闘スタイルは……オールラウンダー?」


「全部必須項目だから疑問符つけないでほしいな」


 そんなこと言われたって明確に説明できない。

 受付嬢は「はあ」とため息をつき、手元の用紙に書き込む。


「備考で付け加えたいことは?」


 そういえば元組合所属の証明タグとかあった気がする。私は服の隠しポケットに手を突っ込むと予想通りの物が。

 よかったいつも持っていて。


 それを提出すると少し目を見開き「変な子、しかも魔術師じゃない」と呟いた。


「それじゃ、カード作るから六分後くらいにここに来て」


 そう言って彼女は奥へ引っ込んで行った。



 言われた通り六分後に訪れると厚紙のカードがやってきた。


「今までの階級はそのまま引き継がれているわ。無くさないでね……て言っても大丈夫か。これで登録終わりね」


 そう言って再び茶を片手に読書を始めたのだった。



 カードを見ると確かにイーファと書かれている。そういや二人の階級は何だろう。そう思って二人に合流する。


「登録終わりました」


「はやかったわね。組合の説明はなかったの?」


「そういうのはすっ飛ばされたので」


 別に全部知ってるし。


「二人の階級は?」


「「アルセコ」よ」


 あ、てっきりイーファと思ったら違うんだ。なんか嫉妬されそう。早々に言っておくか。


「まあ、頑張りなさい。アルセコは地道にやっていけばそこまで遠くないはずだから」


「私イーファですよ」


そう言ってカードを見せる。


「「……は?」」

傭兵組合

いわゆる冒険者ギルド。各国に必ずあり、そのシステムはほぼ世界共通。しかしあくまでも国のもの。その国が戦争始めて、組合に要請されたら所属している傭兵は戦地に赴くことになる。

階級は下から、サンサー、アルセコ、イーファの三段階。

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