見つかりし謎の少女
「ねえ、やっぱりやめておかない?」
そう言うのは林の中をオドオドと進んでいたリゼだった。彼女は持っている杖をギッと強く握り締め、度々あちこちを見ている。
その前を堂々と歩いているのはロビンだ。彼はまるでなんらかの確信を得ているようにどんどんと奥へ進んでいく。
「はあ? あんたの占いがこっちって示したからここに来たのに何を今更言ってんだ?」
「……あんな運任せを信じるとかありえない(小声)」
リゼがそう呟くとロビンはクルッと振り返る。
「なんか言ったか?」
「いいえ」
その時、近くの深い草むらからガサガサと音がなり、リゼはビクッと体を震わせ一歩引いた。
「な、なに!?」
「どうせ何かの小動物だろ。魔物はこの辺にいねえし」
ガサガサ音は次第に近づく。よほど警戒しているのかリゼは無意識に魔術を打つ体勢を取り、つばを飲む。
ついに草むら現したのは少し大きめの蛇だった。
「ほら蛇じゃん」
「いやいや、毒持ってるかもじゃん。駆除するよ?」
「はあ、火災は起こすなよ」
「起こしません」
そう言ってリゼは蛇を燃やすのだった。
しばらく進むと何かに気づいたのか周囲の匂いを嗅ぐリゼ。
「どうした?」
「……なんか一瞬血生臭い匂いがして」
「さっきの蛇じゃないの?」
するとリゼは呆れたように、
「燃やしたらそんな匂いしないよ」
と言う。
「あっそう、ちなみにどっち方向から匂った?」
「多分こっち……あ」
リゼは指を指して気づく。
その方向は占いで出した方向と一緒だった。
思わず2人は顔を見合わせる。
「……行くぞ」
「え? いやちょっと待ってよ!」
ロビンは突然リゼが指を指した方向へ走り出し、リゼは彼を追いかけるのだった。
「……なんだこれ……?」
リゼを置き去りに走ったロビンは開けた場所に出るなり、そう呟いた。
眼前に広がるのはいくつもの死体が転がっている風景。
確かにこちらに向かっている時は血生臭さと腐敗臭がしたが動物だと思った。
まさかたくさんの人が死んでいるとは思わなかったロビンはしゃがみ込んで今朝食べたものを戻す。
ちょうどその時リゼが追いついてきた。
「はあ、はあ、ちょっと早すぎ……って大丈夫!?」
「……っ大丈夫、ちょっと気持ち悪くなっただけだ」
何故吐いたのか疑問に思いつつリゼは顔を上げてその風景を見ると「……あぁなるほど」と呟く。
「こういうの平気なのか?」
「家畜でグロいのは慣れてる」
そう言ってリゼは草原に踏み込んでいきいくつかの死体見る。
「これ多分3日前に死んでるよ」
「……なんでそんなそことわかるんだよ」
ロビンがそういう時リゼは一つの死体を持ち上げて。
「死後硬直が完全じゃないけど解けてる」
「うわぁあぁあぁ!! 見せなくていいわ、んなもの!」
「あっそう、でもこう言う知識は持っておいた方がいいわよ?」
リゼはそう呟くと死体を元の位置に戻した。
ロビンは勇気を振り絞って草原に踏み込み、何度も吐き気をしながらもいくつかの死体を見て言う。
「なんかこいつらの服装えらく揃ってんな」
「どっかのでかい傭兵団とかじゃない? もしくは騎士団とか」
「なら敵のもう一種類くらいあるだろ」
リゼは辺りを見渡し、他の服装の人を探す。
「……この子だけ違うね」
リゼが見つけたのはまるで寝ているように死んでいる可愛らしい女の子だった。しかし左腕がなかったりお腹がバッサリ切られたような跡があったりと、周りとは比べ物にならないほどの怪我をしている。
すかさずリゼに近づくロビン。彼はその女の子を眺めた。
「ほんとだ。ずいぶん軽装だな、ひっでぇ大怪我してるし……」
そう言って少し顔を赤めつつ、あちこちをガン見するロビン。
「ちょっとロビン? 何そんなに見つめてるの。……まさか惚れたわけじゃないでしょうね?」
するとロビンは図星に当てられたような驚き方で反応した。
「そ、そんなわけねえだろ! ……た、ただあれが光ってるなと思っただけだ!!」
そう言ってロビンが指を刺したのは少女の首にかけられていた青いペンダントだ。外が明るいためわかりにくいが彼の言う通り、淡く光っているようにも見える。
不思議に思ったリゼは注意深く観察すると、あることに気づいた。
「生きてる……?」
「……ん?」
「……この子生きてるかもしれない」
「……どうしてだ?」
「ペンダント……多分魔石だと思うけど、生きてない人に働くこと自体が基本ありえない。あとは体の傷はほとんど治っているし、顔色も良い……ってところかな」
ロビンはへえ……と思いつつ少女を見る。先ほどの話を聞くと少女は死んだように寝たみたいだ。
言葉でこんなに見方が変わるんだなとロビンは思ったがそれは心の奥にしまい、次の質問を投げる。
「そんでこいつどうすんの?」
リゼは少し悩むと、
「少し様子を見てましょ。色々疲れたしここで休憩しない?」
するとリゼは荷物を置き、完全に休憩モードに入ったのだった。
それを見てライタルは
(よくこんな場所で休憩取ろうと思えるな)
と呆れるのだった。