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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第1章 鬼殺し誕生
9/39

08 鬼


「あや、後ろだ」


 鬼が出たにも関わらず、宗次は落ち着いた声で注意をうながす。


 叫んだりすれば結界班の集中を乱す可能性があるからだ。


 実際、宗次が配慮したにも関わらず宗次以外の結界班の面々は心が揺らいで結界が少しぶれてしまう。鬼の接近に緊張感が高まったためだ。


 宗次の声にあやが振り返るとそこには灰色の肌をした3メートルほどの生物がアンバランスに長い両手をだらりとぶらさげてあやたちを見下ろしている。


 そのくぼんだ眼窩には目玉はなく、ただ眼窩の闇の中に縦一筋の赤い火が灯り、額にはこの生物の名の由縁となった針金のように細く黒い一本の角が立っている。


 「鬼だわ!逃げて!」


 あやが熱王人をかばうために振り返りながら前にでる。


 鬼たちは基本的に出現予定地域の中心に3~8匹程度の群れで現れるが、中には〔はぐれ鬼〕と呼ばれる、群れから離れて単体で出てくる鬼がたまにいるのだ。


 はぐれ鬼が出る確率は少ないがそのはぐれ鬼対策として結界班には戦闘班から護衛がつけられている。


 しかし、今回の〔はぐれ鬼〕はすでに熱王人たちのグループを襲っているのでもう出ないとあやは思い込んでいたが〔はぐれ鬼〕はもう一匹いたらしい。


 『もう出ない』その油断があやの判断を鈍くした。


 熱王人の前に出たあやだったが、とっさに動いたために満足に戦闘態勢も取れないまま鬼の一撃をまともに受けてしまう。


 なんとか鎌でガードして直撃は防いだものの5メートルほど吹き飛ばされる。


 結界内なので鬼の攻撃による身体的なダメージはないが吹き飛ばされた衝撃ですぐには立ち上がれない。


 (油断した・・・)


 あやは身を起こしながら、自分の不注意を呪うが時すでに遅しだ。


 鬼はもう、熱王人の目の前にきているが熱王人は微動だにしていない。


 動けなかったわけじゃない。


 熱王人は逃げなかったのだ。


 それは、恐怖からではない。


 怒りからだ。


 仲間を傷つけた鬼に対する怒り。


 そしてなにより仲間を見捨てて逃げた自分自身に対する怒り。


 30分前に初めて鬼に会った時は驚いて一人で逃げてしまった。


 無我夢中だったとはいえ、仲間を見捨てて逃げたことに熱王人は自分自身を責めていたのだ。


 だが、不意をつかれなければ熱王人という少年は仲間のために戦う勇気と無謀さを持ち合わせていた。


 そしてもしかしたら自分には秘めた力があるかもしれないという妄想もそれを後押しする。


 背こそ低いが熱王人は運動神経もよく、すぐ手がでる粗暴な性格だったため中学では喧嘩に強かった。


 そしてその生まれつきの強さが鬼という特殊な相手にも通じるのではないか。


 もしかしたら今までわからなかっただけで自分には鬼に対して有効な力が眠っているのではないか。


 現実にはそんな事あるはずもないが、熱王人はそんな妄想をしてしまうほど自分勝手で少し夢見がちなところがある少年だった。


 宗次は鬼に立ち向かおうとする熱王人の姿を見て、三人の部下に手で(結界の出力を一時的に上げろ)とサインを送る。


 (でかいな。そしてあの眼、四種か)


 物理攻撃をしてくる四種の鬼が相手では〔広域結界内でなければ〕死ぬこともありえる。今は結界内なので死ぬことはないだろうが。


 ただ、明確な意思を持たない〔眼〕からもわかるように四種は三種と違って知能は低い。組織な行動はせずに本能のままに暴れまわるだけの存在だ。


 近くの者を攻撃するとも限らず、その行動は読めない。


(さて、どう動くか・・・。彼を傷つけるわけにはいかない。彼は一般人だからな)


 一般人である熱王人の身を一番に宗次は考えている。

次回は 09 鬼殺し です。 

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