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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第1章 鬼殺し誕生
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04 J

 少年は一瞬何が起こったのかわからなかったようだが、野村の制服をみて防鬼庁の人間だとわかったのか野村にすがりつくようにして、


 「兄貴達が向こうで鬼に襲われているんだ。助けてくれよ!」


 荒い呼吸で告げる少年が指さす方向は鬼の出現予測地点とは明らかに違う。野村は筒井と顔を見合わせる。


 「鬼は何匹いるんだ」


 「一匹だよ。人間くらいの大きさで身体が透き通っている幽霊みたいなやつだ。早く助けに行ってくれよ!」


 少年が切羽詰った叫びをあげるが、野村は冷静に筒井に確認を取る。


 「予測地点とは違う一匹、はぐれ鬼でしょうか」


 「おそらくそうね。人間サイズで実体がないなら恐らく五種か、六種でしょうね。四課に援軍要請。結界班はここから広域結界をお願い。いつもよりちょっと結界の規模が大きくなるわよ、できる冬月君?」


 「了解」


 筒井の言葉に宗次は一言で答えると、結界班の千葉、桃井、斉藤に合図をおくる。


 慣れた動きで結界を張る準備を始める宗次率いる結界班の面々を筒井は頼もしく見る。


 「七瀬さん。あなたはここで結界班とこの少年の護衛をして。四課が到着したら少年の連れを救助するように伝達してね。野村君は彼の仲間のところへむかって。他の者は予測地点に向うわよ」


 筒井は戦闘班の一人、七瀬あやに指示を出す。


 テキパキと指示を出す筒井に無視されていたようなかっこうになっていた少年だったが、少年達のグループを全員で助けに行かずにたった一人しか向かわせないと知って少年は筒井にくってかかる。


 「俺の仲間を見捨てる気かよ?俺たちが不良だから差別するのかよ。大人はいつもこうだ!兄貴たちはむこうで鬼にやられてんだよ。早く全員でいけよ!」


 少年の身勝手な反応に筒井は二課長になってから何十回と繰り返したセリフを言う。


 「私達がここで足止めを食らえば予測地点の鬼払いに支障が出るの。私達二課の今回の任務は予測地点の鬼を他へ逃がさないように無力化して追い払うこと。私達が遅れる事でそこから鬼が別の場所に行ってしまえばまた新たな被害が出ることになるわ。そうなって欲しいの?あなたの知り合いの事は心配しなくても結界内にいれば少なくとも死ぬ事はないし、あなたたちが出会った鬼はおそらく最下級の鬼で六種と言ってたいした害はないわよ。もし、その上位の五種だとしても人を殺すほどの力はないから大丈夫よ。仮に襲われたとしても少し時間はかかるけど正常に回復させることができるわ。そもそもこの近隣には警報が出ていたのになぜ外出しているの?子供とはいえ非常時に自分勝手な行動をすることにリスクを伴うことがわからないの?」


 筒井にそう言われて少年は黙る。


 確かに警報が出ているのを知っていたにもかかわらず「また警報かよ。うぜー。めんどくせー。ウチに戻るのもだるいしここにいよーぜ。つーか、鬼なんかにびびるかっつーの。もし出てきても反対にやっつけてやるぜ」と高をくくって少年達は遊びに出ていたのだ。


 鬼による被害が出ないように防鬼庁が発生予測地点の住民をあらかじめ避難させているので一般人が鬼に実際に目にすることは実は少ない。それだけにいまいち一般人の中には鬼の怖さがわかっていない者がいる。


 そしてこの少年のように鬼の怖さを知らずに育った世代の者の中には考えなしのバカな行動をする者がいる。


 防鬼庁ではこのようなものたちを『J』(邪魔者)と隠語で呼んでいる。


 鬼の出現地点に向かっている今はこのJのために時間をとられるのは得策ではない。


 筒井はそう判断し、宗次たち結界班とその護衛として戦闘班の七瀬あやを残して発生予測地点に向かう。


 筒井は要救助者に対しては温厚そのものだがJに対しては冷たく当たる事がある。


 それは筒井が特別なのではなく防鬼庁の職員なら誰でもそうだろう。身体を張って鬼を撃退している身からしたらJは腹立たしい存在なのだ。むしろ戦闘班長である野村を少年の仲間たちのもとへ向かわせただけ筒井は良心的といえる。


 何しろ筒井が言うように五種や六種の鬼ではまず命に危険が及ぶような事はないのだから無視しておいて後で救助をしても差し支えはない。


 そんな事情を知らない少年は怒りと不安で呆然としていたが、宗次たち結界班は少年を無視してもくもくと結界を張る準備をすすめていた。

いいねとかブックマーク、評価をして頂けると作者がにんまりします。

しばらく連投していきますのでよろしくお願いいたします。

今日は06まで投稿してその後はしばらく毎日投稿する予定です。

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