038 消滅
今回の鬼払いは四種が3匹、五種が7匹だった。
五種の数が少し多く感じるが、実は五種は存在が鬱陶しいだけで現実には全く脅威にならない。つまり今回の鬼払いの対象なっている鬼はたったの3匹だということだ。
以前、四種が5匹出現した時でも戦闘班長の野村が楽勝と言っていた事からも分かるように、払うべき鬼がたったの3匹しかいないのは実はかなり少ないとケースだと言っていい。
しかし、取材班が同行する時の鬼はだいたいこれくらいの規模だ。
もちろんこれは偶然ではなく取材班が同行する鬼払いは治癒部予見課の鬼出現予測の中でも最小規模の出現予測が意図的に選ばれているのだ。
あくまでもメディア対策の『鬼払い』ということだろう。
メディア側は『危険な鬼払いの真実を報道するために身の危険を顧みずに迫っている』と思い込んでいるが、実際は安全地帯で最小規模の『鬼払いショー』を見せられているだけなのだ。
そんな『鬼払いショー』でも退魔法師ではない一般人には十分刺激的なようで、鬼が現れると一斉にカメラを向けて『ショー』を撮り逃さないようにしている。
(ご苦労な事ね)
筒井は鬼に立ち向かいながらそれを冷ややかな目で見るのだった。
*
「あと、一匹です」
野村の言葉に筒井は黙ってうなずくと、取材班の方をチラリと確認する。
筒井の指示の良さのお陰で『鬼払い』開始から5分で残る鬼は一匹だ。
『ショー』なので5分も撮らせれば十分だろうと筒井は残りはさっさと終わらせることにする。
「もう終わりか…」
せっかくの『鬼殺し』の取材に来たのに見どころがないままで終わってしまう事に取材班は残念がるが、最後にもう一度『鬼殺し』の姿を撮ろうと熱王人にカメラを向けた時、事件は起こった。
「おいっ、何をする!」
筒井が制止するのも聞かずに熱王人は戦闘に参加してはいけないという命令を無視して、鬼に突っ込んでいく。
せっかく取材が来ているのだ。自分をアピールするこのチャンスを逃すわけにはいかない。
発動していた大刀型の法具『ビッグナイフ』をその右手に持って鬼に突っ込んでいく。
(ついに、『鬼殺し』が見れるのか!)
取材班は興奮する。『鬼殺し』が実際に鬼を殺すところを撮影できれば大スクープだ。
熱王人の大刀が鬼に迫る。…だが、その瞬間に大刀が消え失せる。
「なに!?」
突然の出来事に熱王人は驚愕する。ついさっきまであった自分の法具がきれいさっぱり消えてしまったのだ。
「な、なにが…」
法具が消えたことにうろたえて動きを止めている熱王人をしり目に、両手に刀の法具を持った筒井が熱王人をかばう等に前に出ると鬼に連続攻撃を加えてあっという間に『鬼払い』を終了させる。
「以上で『鬼払い』を終了します。お疲れ様でした」
取材班に慇懃に頭を下げて筒井はさっさと引き上げていく。
後に残されたのは呆然とした表情の熱王人だけだ。
「一体何が…」
何がどうなったのかわからないまま立ち尽くす熱王人。
実は熱王人の大刀が力を解放した瞬間、結界班は一時的に『広域結界』を停止していたのだ。
これは筒井のがあらかじめ結界班に指示していた事だ。
『神崎君が勝手な行動をしたら結界を一時的に停止しなさい』
熱王人以外の者は一時的に結界が停止されても、法具を維持できなくなることはない。法具の維持を『広域結界』という補助輪に頼っている熱王人だけが結界が消えた事により法具を維持できなくなったのだ。
そして熱王人の大刀が消えたら、すぐに結界を再開して筒井が『鬼払い』を完成させたのだ。
(全く、承認欲求の固まりなんだから。まさか本当にメディアの前で『鬼殺し』をしようとするなんて…保険をかけておいてよかったわ)
筒井は自分の用意が無駄にならなかった事に安堵するのだった。
作者の力不足で申し訳ありませんが、本作は不定期連載になります。楽しみにして下さっている方すみません。
奇しくも『消滅』のエピソードタイトルですが作品は消滅しません。たぶん。
完結はする予定ですので気長にお待ちください。
まあ、作者も納得な不人気なわけで。確かに愉快なところがない話なので正当な評価かと思います。
そんなわけでローファンタジーは諦めてまたハイファンタジー分野で書いていきます。
八月中旬から『最強を目指していて挫折したおっさんが、生きるために頑張ったり、頑張らなかったり』そんな感じのが始まるとか始まらないとか。




