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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第3章 防鬼庁
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037 取材

「広域結界開始!」


 宗次の言葉に合わせて二課結界班の全員が腕につけたアラームのスイッチを入れる。


 これは結界維持時間を音と振動で教えるものだ。


 結界維持時間は最大で四十五分と定められており、このアラームは結界を張ってからの経過時間の十五分、三十分、四十分、四十五分を知らせるようになっている。


 つまり『鬼払い』の任務は四十五分以内でする事になっているのだ。


 しかし、実際の結界班の限界が四十五分なのかと言えばそうではない。戦闘班の法具の使用が通常であればどの課の結界班でも1時間半くらいは持たせることができるだろう。


 ギリギリにならないように余裕を持った設定をしているのだ。


 特に法力が優れている者が集められた2課結界班ならば更にその倍くらいはもつだろう。そのため必要のないアラームのスイッチは入れない事も多い(宗次だけは毎回ちゃんと入れている)が、今回は全員ちゃんとしている。


 それというのも今回の『鬼払い』にはテレビの取材班が入っているからだ。


 さすがにライブ放送ではないが、例え無意味な事でも手順通りにしないとあとあと面倒な事になることがあるのだ。


 熱王人が二課に入る前は何度かメディア対応をしていたが(防鬼庁の広報の一環で各課が持ち回りでしていたが、二課が担当する割合は比較的高かった。防鬼庁内ではモデル並みの容姿を持つ筒井が課長をしているからとまことしやかに言われていた)、熱王人が二課に入ってからは一度もなかった。


 筒井が「ただでさえお荷物がいるのにこれ以上負担を増やされては困ります」と断っていたからだ。


 しかし、熱王人が『法具』を出す事を許可したことにより、丸山対策部長から「『法具』を出せるってことは一人前よね?それなら取材を受けなさい。これは命令よ」と言われたのだ。


 丸山としては一度自分が『鬼殺し』としてメディアにリークしてしまった以上、熱王人の存在をひた隠しにするのは難しくなってきていた。実際、『鬼殺し』として防鬼庁に入庁させたのにどうしてその『鬼殺し』を取材させないのかとせっついてこられている。


 元々メディアに対しては防鬼庁はかなり強い規正をする権限を持っているが、それでもメディアとしては自分たちは『世間』を味方にしているという自負があるので強気に出る事がある。


 今回はその圧力に丸山が負けてしまったのが実情なのだが、二課長の筒井からしたら(また丸山部長が無茶を言ってくる。本当に『鬼殺し』に執着しているのね)としか思えなかった。


 実際には斎藤からの報告で丸山は『鬼殺し』に対する興味はほとんど失っているのだが、その行動は熱王人からしたら「さすがに丸山さんは俺の事をわかってくれてるよなあ!」なのだ。


 そのため『鬼殺し』を撮影しにきたカメラに対して熱王人は自分を撮りやすいように移動している。こんな事だけは素早くするのは実に熱王人らしい行動だ。


 その様子を呆れた顔で見ながら筒井は取材班に静かに、しかしキッパリと言う。


 「時間になります。皆さんはそこから絶対に動かないで下さい」


 取材班は円になったロープの内側に集められている。いくら『広域結界』内なのでケガをしないと言っても、安全は最大限に配慮されているのだ。


 「前衛は私、野村君、三津谷君が担当。七瀬さんと神崎君は取材班の護衛。他の者は全体のバックアップをして」


 いつも以上に端的な指示をする筒井。


 取材が入ると筒井はより愛想が悪くなる。取材班を意識してそう演技しているというよりは、単純に「面倒だわ」と機嫌が悪くなっているのが表に出ているだけなのだ。


 熱王人の担当が取材班の護衛ときいて、取材班はあからさまに残念がるがさすがに文句は言わない。


 『鬼払い』の現場では防鬼庁の指示が絶対なのだ。もし、指示に逆らったらその人物および関係者は二度と防鬼庁の取材に関わることができなくなるのだ。


 (せっかく『鬼殺し』の取材に来たのに今回は『鬼殺し』はお預けか)


 『鬼殺し』の『鬼払い』に同行できた幸運を喜んでいた取材班は肩を落とすが、その必要はないのだ。


 何しろ熱王人はあやとともに取材班の護衛を言い渡されているが、実際はまだ戦闘に参加する事ができないレベルの熱王人(『法具』を出してただ突っ立っているのが限界)なのでそれをごまかすために『戦闘に参加しない護衛』として取材班の側に残しているだけなのだから。



次は 038 消滅 です。

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